2020年9月4日(金)、午前11時10分より、東京都新宿区市谷の防衛省庁舎第一省議室にて、河野太郎防衛大臣の定例記者会見が開催された。
会見冒頭、河野大臣より、以下のとおり、新型コロナウイルス感染症の自衛隊における感染状況についての報告があった。
「9月1日の前回の会見以降、新たに6名の隊員の新型コロナウイルス感染が確認された。合計で、本日までに118名になる。今回の6名はいずれも、沖縄県における、コロナウイルス感染症対策の災害派遣には従事しておりません。市中から拾ってきたのではないかと思う」
次に、「イージス・アショアの配備プロセスの停止」について、「イージス・アショアの配備断念にいたった経緯について、確認の作業をさせていたが、今般、そのとりまとめが終了し、結果を公表する運びとなった」とし、「配備断念にいたるまでの、事実関係を整理した上で、今回の問題について、防衛省として、整理・評価した。
まず北朝鮮がミサイル発射を繰り返している状況の中で、我が国の安全を守るために、イージス・アショアの配備を急ぐ必要があると考えていた。そのためにブースターの落下に関して、米側との協議、安全措置の検討と地元への説明が並列的に行われるということになり、結果的に、地元に約束をしていたことが、できない、守られないということになった。慎重さ、誠実さを欠く対応であったと言わざるを得ないと思う」と述べた。
また、河野大臣は、「防衛省内における体制が不十分であった。当初からもう少し、しっかりとした体制を構築して、この配備のプロセスに臨むべきであったのではないかと思う」と述べ、「省内での風通し、意思疎通、情報の共有・伝達、こういったことを含め、仕事の進め方を含めて、風通しのいい勤務環境を作っていく必要があると思う」と語った。
その上で、「イージス・アショアが迎撃を行うという状況は、我が国に対して、ミサイル、あるいは、場合によっては、核ミサイルが発射されているという、『極限状況』であるから、こうした『極限状況』で迎撃ミサイルというのが発射されるということをご説明し、ご理解をいただきながら、当初から、周辺の住民のみなさんを含め、国民保護措置というものを、安全対策を含め、しっかりと行うという、考え方を丁寧に説明していく。そうしたことをしっかり検討して、地元に説明をする。そういうことを検討すべきだったと思う」と報告を結んだ。
大臣からの報告に続いて、各社記者と河野大臣との質疑応答となった。IWJからは、配備プロセス停止となったイージス・アショアの代替策ともいわれる「敵基地攻撃能力の保有」について、以下のとおりの質問した。
「自民党は、自民党総裁選前の9月前半に国家安全保障会議(NSC)を開き、『敵基地攻撃能力の保有』などを含む安全保障政策の新方針に向けた協議推進を確認する見通しとのことです。敵基地攻撃能力の保有は、日本国憲法第9条の規定にもとづく『専守防衛』の理念を逸脱するものです。
このような拙速な流れではなく、国民が納得できるより丁寧な説明をする必要があると考えますが、大臣のお考えをお聞かせ下さい」
これに対し、河野大臣は、「『敵基地攻撃能力』の議論など、今どこでもしていない」と返答した。これに対し、IWJ記者が「それは、『敵基地攻撃能力』という呼び名が違うということか?」と再質問をすると、河野大臣は「呼び方というか、そういう議論はどこもしていないと思う」と述べた。
IWJ記者が「安倍首相も、その辞任会見のときに、『ミサイル措置に関する安全保障政策の新たな方針』について、『速やかに与党調整に入り、その具体化を進めます』というふうにお話をされていますけども、また、菅官房長官も、9月2日の出馬表明会見で、『与党としっかり協議しながら、敵基地攻撃能力について進めていく』と述べているんですけども、どうでしょうか?」と重ねて質問すると、河野大臣は「申し上げたとおりです」とだけ、回答した。
安倍総理と菅官房長官がすでに公の場で言及し、メディアでも「敵基地攻撃能力の保有」について大きく扱われているこの段階で、「『敵基地攻撃能力』の議論など、今どこでもしていない」という回答は、担当大臣としてあまりにも無責任ではないだろうか?