【IWJ検証レポート】千葉県内の電力不足による熱中症の疑いで3人死亡! 救急搬送された人数は計193名! 現在も入院している人は33人! 東電は177台も電源車を保有しながら16日まで86台しか稼働していなかった!? IWJは千葉県に直撃取材! 2019.9.18

記事公開日:2019.9.18 テキスト
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(IWJ編集部)

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 台風15号の影響で停電が続く千葉県だが、17日の段階で、電力不足による冷房不稼働が原因の熱中症で死亡した人が3名にのぼる。

 9月10日に市原市の65歳の男性と南房総市の93歳女性が熱中症の疑いで死亡、13日には君津市の特養に入居中の82歳の女性が熱中症の疑いで死亡している。

台風15号通過以降、熱中症で救急搬送された総数は193名!

 県の高齢者福祉課によれば、9月15日の段階で、熱中症等で入院している人の数は、高齢者関係施設で26名、障害者関連施設で7名の計33名ということである。ただし、高齢者福祉課の把握している人数は、あくまで施設から病院へ救急搬送された人数でしかなく、しかも、熱中症等という原因は、高齢者福祉課が、施設から聞き取って判断した原因で、搬入先の病院の初診とは異なっている可能性もある。

 では、熱中症で自宅から病院へ救急搬送された人数はどのくらいなのだろうか。千葉県防災危機管理部消防課によると、9日から16日までで、搬送された人数の総数は160名である。そのうち、3週間以上の入院の必要な重症患者は2名、3週間未満の入院の必要な中等症患者は63名にのぼる。

 台風15号通過以降、熱中症で救急搬送された総数は193名にものぼるのである。

▲千葉県庁(Wikipediaより)

 停電により、冷房が使用できない状況がいかに深刻な事態を生じさせたかがよくわかる。これらの重症・中等症の入院患者の中から新たな死者が出ないという保証はない。

9月16日まで稼働した電源車は177台中86台、稼働率48.6%!

 一方、君津市で亡くなった女性の入居していた特養の理事長が「もっと早く電源車が来ていれば」と語ったと報道されている。

 この理事長の言うように、なぜ、電源車は必要な施設に配置されなかったのだろうか。電源車がもっと早く配置されていれば、この3人の死亡は防げた可能性はあるのではないか。

 千葉県災害対策本部にIWJが直撃取材したところ、県の保有する電源車の総数は、驚いたことに0台ということだった。現在稼働中の電源車は、ほとんど東電からの電源車で、一部、NTTの電源車も含まれるという。さらに、9月15日現在、東電の電源車の総数は177台で稼働中の電源車は86台、稼働率は半分にも満たない48.6%にとどまっている。

▲北陸電力の電源車(Wikipediaより)

 台風が去ってから1週間以上も経つというのに、なぜ、こんな事態に陥っているのだろうか。千葉県災害対策本部によると、電源車は現場に配置すればそれで終わりというものではなく、現地監視員や保守整備員が同時に必要で、そのマンパワーが足りていないせいで、稼働率が下がっているというのである。

 ようやく9月16日に東電が監視ルールを変更して他の電力会社や工事会社からもマンパワーとして送れるようになったという。なぜもっと、迅速に柔軟に東電は対応ができなかったのだろうか。せっかく電源車を持っていても、その稼働率が1/2以下では、宝の持ち腐れである。

災害時の電力供給は危機管理の基本中の基本!

 ここで、根本的な疑問が湧いてくる。電力の供給は現代の生活にとって命にも直結する重要な問題である。台風や地震などの大規模災害で、電力供給が止まる事態は十分にありえる。こうしたシナリオに備えて、県として電源車を確保するという発想はなかったのだろうか。現代において電力供給は危機管理の基本中の基本とも言えるものだろう。

▲森田健作千葉県知事(千葉県HPより)

 この点を千葉県の災害対策本部に確認すると、「今後の課題です。隣県の電源車保有状況も調べながら、現在の災害が一段落したあとの検証課題になります」とのことだった。災害対策に関して、これまでの備えは想像力の欠如したものだったと言わざるを得ない。

 さらに、限られた台数と稼働率の東電の電源車を配備するに際して、どういう優先順位で電源車を配備したのか、と災害対策本部に尋ねたところ次のような回答があった。

 「高齢者施設や障害者施設、病院などの社会福祉施設を優先しました。その社会福祉施設の中の優先順位は各市町村で判断していただきました」

 しかし、現に9月13日には、君津市の特別擁護老人ホームという社会福祉施設で82歳の女性が熱中症の疑いで死亡している。しかも、高齢者施設や障害者施設という社会福祉施設から、熱中症の疑いで救急搬送された人数は実に33名にものぼるのである。この優先順位に混乱がなかったかどうか、現場サイドで検証する必要があるだろう。

▲特別養護老人ホーム「夢の郷」(同施設のHPより)

 これまでにIWJが報じてきた台風15号による千葉での被害については、以下の記事をご覧ください。

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