国際的な芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止を受け、芸術祭に参加している海外の作家たち11組が中止に抗議するため、自身の作品の出展辞退を芸術祭実行委員会(会長・大村秀章愛知県知事)に申し出ていることがわかった。
トリエンナーレでは既に3組が出展を中止しており、今回新たに9組が出展辞退を申し入れた。
この9組の中には芸術祭のメインビジュアルとして、公式ガイドマップの表紙になっているウーゴ・ロンディノーネさんの「孤独のボキャブラリー」や、開幕セレモニーに使われたピア・カミルさんの「ステージの幕」も含まれている。また、ペドロ・レイエスさんとモニカ・メイヤーさんの作品は、トリエンナーレのメインテーマであるジェンダーを題材にしたもので、二人は今回のトリエンナーレのキーパーソンだということだ。
9組の作家は8月12日付で米国の有力な美術誌『ARTNEWS』に公開書簡を送り、「表現の不自由展・その後」の中止を強く非難し、安全管理が徹底されたうえでの会期終了までの展示再開を主張するとともに、『表現の不自由展・その後』が一般公開されていない間、トリエンナーレでの自分たちの作品の展示を中止することを要求している。
- ウーゴ・ロンディノーネら新たに9作家が展示中止を要求。あいちトリエンナーレ2019で混乱続く(美術手帖、2019年8月14日)
「表現の不自由展・その後」の中止をめぐっては、県に脅迫のファックスを送った容疑者が威力業務妨害で8月7日に逮捕されたが、その後も「県有施設や学校にガソリンをまいて着火する」「職員を射殺する」などの脅迫メールが県に届いているという。愛知県は8月14日、犯行予告などのメール計770件について、威力業務妨害容疑で被害届を県警に提出し、受理された。
- 表現の不自由展で脅迫770件、愛知県が被害届(中日新聞、2019年8月14日)
卑劣な脅迫者らを非難することなく、逆に脅迫者に同調して慰安婦問題をテーマにした少女像の撤去を公文書で要求した河村たかし・名古屋市長や、展示を認めた大村知事を「辞職相当だ」と非難した吉村洋文大阪府知事の責任はきわめて重大だ。謝罪、撤回、そして自らの進退について答えを出す必要があるのではないだろうか。
IWJがこれまでに報じた「表現の不自由展・その後」中止事件は、以下の記事をご覧いただきたい。
- 「平和の少女像」展示に「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」と京アニの悲劇を悪用した卑劣な脅迫!企画展は8月3日で中止に! 脅迫者を責めずに展示関係者に謝罪しろと迫る河村たかし・名古屋市長は脅迫者サイドに立つつもりか!? 2019.8.4
- 大村秀章・愛知県知事が「表現の不自由展・その後」の中止について河村たかし・名古屋市長を「憲法違反の検閲」と批判! 河村市長はテロ予告を受けて警察のガードをつけながら、脅迫者に対する批判は一切なし!? 2019.8.5
- 「表現の不自由展・その後」実行委員・永田浩三氏(武蔵大学教授)の目に涙も「作家に一言もないことは尋常ならざる事態」 ~展示会の再開~緊急集会&記者会見 あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」中止事件 2019.8.7
- 大村秀章 愛知県知事 定例会見(愛知県庁) 2019.8.13