8月1日から10月14日まで続く、愛知県の名古屋市や豊田市など複数の会場で行われている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展の一つ、「表現の不自由展・その後」が、開催3日目の8月3日限りで中止になった。
「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督を務めるジャーナリストの津田大介氏によると、この企画展は「日本の公立美術館で、一度は展示されたもののその後撤去された、あるいは展示を拒否された作品の現物を展示し、撤去・拒否された経緯とともに来場者が鑑賞することで、表現の自由を巡る状況に思いを馳せ、議論のきっかけにしたい」という趣旨だったということだ。
- 「表現の不自由展・その後」について津田大介芸術監督が会見を行った際に配布したステートメントです(2019年8月2日、お知らせ 情の時代 あいちトリエンナーレ2019)
この「表現の不自由展・その後」は、2015年に美術評論家や編集者ら有志が実行委員会を作り、東京都内のギャラリーで開いた「表現の不自由展」の「その後」として、2015年以降に規制された作品を加えたもので、10月14日の芸術祭終了まで展示される予定だった。
展示には2012年に東京都美術館で展示されながら来館者の指摘により撤去された、韓国の彫刻家キム・ソギョンさんとキム・ウンソンさん制作で、第二次大戦中の韓国人従軍慰安婦問題をモチーフにした「平和の少女像」のほか、政治家の靖国参拝を批判して東京都美術館から撤去か改変を求められた中垣克久さんの作品などが含まれていた。
- <くらしデモクラシー>あいちトリエンナーレ あすから「不自由展」「政治性」で規制の作品(東京新聞、2019年7月31日)
韓国の新聞「ハンギョレ」は、芸術祭の開催直前に津田氏に取材し、「日本ではこの造形物の名前が平和の少女像であり、慰安婦像ではないということすらあまり知られていない」「どのような経緯で製作され、どのような意味があり、なぜ(2012年の提示当時、レプリカが)撤去されたかを、客観的な事実とともに示したいと思っている」「実物を見て判断してほしい」などの津田氏のコメントを伝えながらも、「愛知県は日本の中でも保守的地域の一つとされる。これを受け、日本全国の市民数十人が交代で展示場を訪れ、右翼の妨害に対応する予定だ。日本国内では安倍政府の対韓貿易規制に賛成する世論が高まっている。少女像は最後まで展示されるだろうか」と記事を締めくくっている。
- タブー破り、日本最大の芸術祭で展示される“少女像”(ハンギョレ、2019年7月30日)
「ハンギョレ」の、最後まで展示されないかもしれない、という懸念は的中した。
芸術祭開催直前の7月31日以降、事務局へはテロ予告や脅迫を含む電話が殺到した。
「表現の不自由展・その後」は、表現の自由の尊重を訴える試みであるはずなのに、卑劣な脅迫と激しいバッシングを受けて中止に追い込まれ、日本の現状がまさしく「表現の不自由」状態にあることをまざまざと見せつける結果となってしまった。
これ幸いとばかりに中止を決めたのではないか。
「平和の少女像」展示に「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」と京アニの悲劇を悪用した卑劣な脅迫!脅迫者を責めずに展示関係者に謝罪しろと迫る河村たかし・名古屋市長は脅迫者サイドに立つつもりか!? (link: https://iwj.co.jp/wj/open/archives/454891)
@iwakamiyasumi
https://twitter.com/55kurosuke/status/1158148055591354368
>>「こういう展示をすれば、相当に強烈なリアクションが来ることを想定し、
>>覚悟を決めて対応を準備したうえで決行したんだと思いきや……。甘い見通しで
>>冒険をして、脅しに屈する形で全面撤退して、ますます日本の表現の自由を
>>めぐる状況を後退させるという、最悪の展開」
確かにその通りですね。 一方で例の産経新聞・加藤達也が、当時のパククネ大統領が
不倫していた旨の韓国タブロイド紙・引用記事を掲載したために逮捕された際には、
なぜか国内メディアこぞって「表現の自由に対する侵害(笑)」と喚き散らしたのも
記憶に新しいところです。特にTV・新聞の大手メディアは、表現の自由の
意味を少なくとも100回くらいは自問自答してもらいたいところです。
>>「日本ではこの造形物の名前が平和の少女像であり、慰安婦像ではないということすら
>>あまり知られていない」
重々承知の上で、各メディアともあえて報道も拡散もしていない可能性がありますね。
あの池上彰もTVではっきりと慰安婦像と言ってました。しかも感情に任せて声の大きさや
勢いだけで相手を蹂躙しようとする傾向は、断じて看過してはなりません。