シンポジウム「どうなる食の安全?」 築地市場移転を考える 石原都知事が辞意表明、再検証のとき 2012.12.1

記事公開日:2012.12.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2012年12月10日(月)9時から、東京都中央区の築地市場で、小児科医の小坂和輝先生と梓澤和幸弁護士を交えて「築地を守る朝食会」が行われた。発案は、築地市場移転問題シンポジウムに参加していた満岡しょうご氏。小坂和輝先生、梓沢和幸弁護士らとともに、築地でマグロ定食に舌鼓を打ちながら、豊洲への移転問題について話し合った。

 築地移転の問題点について、小坂氏は「土壌汚染対策法では、汚染対策をして2年間は監察期間を置いて農水省の認可を受けなければならないが、その2年を待たず工事着工。ハコが完成するまでに2年経つという理屈」と、その実施プロセスにそもそも問題があることを指摘した。

 梓澤氏が「築地の仲卸の人に聞くと、本音では皆豊洲に行きたくない、しかし公の場では反対を口にしないのはなぜなのか?」と問うと、小坂氏は「みな東京都に場を借りている立場。もし豊洲に移転した場合、一軒だけ反対していたら立場が悪くなる。すべては東京都に握られている」と、仲卸の厳しい現状について語った。

 朝食会の後。小坂氏らは、築地の場内の仲卸一軒一軒に挨拶し、移転問題についての意見を聞いてまわった。(IWJ・佐々木隼也)

 2012年12月1日(土)の14時から、東京都千代田区の弘済会館で、築地市場移転問題研究会実行委員会が主催する「シンポジウム『どうなる食の安全?』 築地市場移転を考える 石原都知事が辞意表明、再検証のとき」が行われた。パネリストは、野末誠氏(築地市場仲卸)、水野かほる氏(プランナー)、岩上安身の3人、司会は梓澤和幸弁護士が務めた。なお、パネリストとして出席が予定されていた佐藤克春氏(一橋大学経済学研究科特任講師)はビデオメッセージでの参加となった。パネルディスカッションでは、築地市場の移転先である東京江東区の豊洲地区の土壌リスクなどについて議論され、当時の石原都政の姿勢を批判する発言も聞かれた。一般参加者も加わっての討議では、「そもそもなぜ、上手く機能している築地市場を移転しなければいけないのか」との疑問の声が相次いだ。

■ハイライト

 パネルディスカッションに先立ち、築地市場移転問題の論点整理が行われた。担当した、築地市場移転問題弁護団事務局長の大城聡弁護士は、「(新市場の今年度内着工が語られているが)東京都の独断では移転できない。農水大臣の認可が必要で、まだ認可されるまでには至っていない」と、民意の力で移転を阻止できる余地が残されていることを強調した。

 大城弁護士は「移転先は、東京ガス工場の跡地。深刻な土壌汚染が生じている。すでに検出されているものとしては、ベンゼンは環境基準の4万3000倍。また、検出されること自体に問題があるシアン化合物が、検出基準の860倍」と述べ、東京都の「汚染された土壌をきれいにすることが可能だから、豊洲に市場を作っても大丈夫」との説明に対し、「根本的な難点がある」との批判を浴びせた。東京都は、液体を非常に通しにくい不透水層よりも上部の土壌で汚染処理を行う予定だが、その不透水層の位置が正しく把握されているのかなど、大いに不安が残るという。大城弁護士は「仮に東京都が除去の完了を宣言したとしても、第三者による再検証が不可欠」と力説した。

 パネルディスカッションで、司会の梓澤弁護士から「報道メディアの立場から、この移転問題をどう見ているのか」と水を向けられた岩上は、石原慎太郎前東京都知事が披露した「古い、狭い、危険」との築地市場観を引きながら、「私もかつては、大きな地震に見舞われたら古い築地市場は危ないのかもしれない、と思っていた。だが、あの3.11でも築地市場はびくともしなかった」と語り、少なくとも石原氏がいう「危険」は見当違いとの認識を示した。その上で「皮肉にも、築地とは好対照だったのが豊洲。あのエリアでは、震災後の液状化現象が顕著だった」と訴えた。

 岩上は、豊洲の液状化を自分の目で確かめた上で、「2011年3月22日の記者会見で、石原東京都知事に『豊洲の、あの状況は一体どういうことなのか』と質問をぶつけた。石原氏は『あたりまえ』との言葉で反論してきた。彼の主張は、土地の上に建築物を建てれば、液状化が押さえ込めるというものだったが、その、あまりに非科学的な議論にあ然とした」と、当時を振り返った。

 築地市場の移転には原発同様、利権がからんでいると見る岩上は、「石原氏が始動させた築地市場移転の政策を、今度の都知事選に出馬するどの候補が受け継ごうとしているのか。あるいは、どの候補が見直そうとしているのか、その辺をぜひチェックしてほしい」と呼びかけた。

 続いて、佐藤氏のビデオメッセージが紹介された。佐藤氏は、東京都が提示する土壌汚染の処理方法が変更されている点に不信を示し、民間企業(東京ガス)による汚染を、なぜ、多額の費用を投じて行政が行う必要があるのか、との問題提起を行った。そして「自分のあずかり知らぬリスクは、一方的に押しつけられるものではない」と主張した。

 水野氏は「街の活性化を考える仕事に従事している」と自己紹介し、「新聞やテレビや行政はまったく信じられないものであることが、昨年の大震災を機によくわかった」と、時折涙ぐみながら話した。そして、「3.11であれだけ辛い思いをしたのに、築地市場を危険性のある豊洲へ移す動きが進行中だとインターネットを通じて知り、驚いた」と述べて、東京都と、この問題を積極的に報道しない大手マスコミの姿勢も糾弾した。さらに「築地の移転はもう決まったこと、という声をよく聞く」とし、認識不足で思考停止に陥っている東京都民が大勢いることに懸念を表明した。

 築地市場で仲卸業を営んでいる野末氏は、「予定地である豊洲は地盤が軟弱だ。あそこに行ってもらえばわかることで、良質の土は見当たらない。雨が降るとすぐに水がたまってしまうため『お茶漬け土壌』と揶揄されるほどだ。土壌汚染もさることながら、そんなにも悪い場所に、わざわざ市場を移すというからには、映画の題材になるほどの衝撃的な事情が隠されているに違いない」と熱弁をふるった。

 さらに野末氏は、2002年に施行された、土壌汚染対策法の不可解な点を挙げた。件の東京ガス工場のように、同法律の施行前に使用が終了した施設には適用しないとの附則第3条(経過措置)の存在を指摘し、「だから、調査が甘くなる」と断じた。

 一般参加者も加わった討議では、「築地市場を移転する必要が、どこにあるのか」との、そもそも論が響いた。ある男性は「すでに大勢の人が集まっており、文化が息づいている築地から、なぜ今さら出ていかなければならばいのか。老朽したのであれば、東京駅のようにリニューアルすればいい。高いカネを使って豊洲に引っ越す理由はない」と主張した。また、ある女性は「主婦の立場でいえば、なぜ市場を汚い場所に移そうとしているのか、まったく理解できない。今、築地市場で働いている人たちは、石原氏がいう狭さや汚さを本当に実感しているのだろうか。これから人口減社会が本格化する以上、(規模拡大を狙う)移転は時代錯誤ではないのか」と、落ち着いた口調で訴えた。

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