元朝日新聞記者・林美子氏「私たち自身が、声なき声の当事者だったのです」~5.15「メディアで働く女性ネットワーク」設立と財務省セクシュアル・ハラスメント問題についての申し入れ記者会見 2018.5.15

記事公開日:2018.5.18取材地: テキスト動画
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(取材:八重樫拓也 文:花山格章)

※2018年6月20日、テキストを追加しました

 2018年4月12日、森友学園との土地取引に関する財務省の決裁文書の改竄が発覚し、国会が大揺れの中で、財務省の福田淳一事務次官(当時)が、取材に来た女性記者に度重なるセクシャル・ハラスメント(以下、セクハラ)をしていたと、週刊新潮が報じた。福田事務次官とされる男性が、「胸、触っていい?」などと話している音声データもネット上で公開され、大騒ぎになった。

 当初、財務省は報道を疑問視し、財務省の記者クラブ所属の女性記者たちに「セクハラ被害調査に協力を」と呼びかけた。しかし、被害者に名乗り出ることを要求したこの対応に、批判の声が集中。福田事務次官はセクハラ行為を否定しつつ、報道による混乱で職務を遂行できないとして、4月18日に辞任を表明した。

 4月19日、テレビ朝日が福田氏からセクハラを受けたのは自社の女性社員であると発表、財務省に抗議した。財務省は、福田氏がテレビ朝日の主張に反論していないことから、セクハラ行為があったと判断。辞任した福田氏を減給処分にして、この問題に幕引きをはかっている。

 この一件によって、ジャーナリズムの世界で働く女性たちがセクハラを含む人権侵害を受けていること、取材先との人間関係が重視される仕事であるがゆえに、被害を訴えにくい実情などが改めて浮き彫りにされた。

 そんな中、2018年5月15日、東京都千代田区の厚生労働省にて、「メディアで働く女性ネットワーク」の設立と財務省セクシュアル・ハラスメント問題についての申し入れ記者会見が行われた。会見したのは元朝日新聞記者でフリーランス・ジャーナリストの林美子氏と、同じくフリーランス・ジャーナリストの松元千枝氏である。

 林氏は、「これまで、ジャーナリズムに携わる多くの女性たちは『取材先との関係が壊れる』と思い、(セクハラを受けても)声を上げてこなかった。私たち自身が、声なき声の当事者だった」と振り返った。その上で、今回の告発に勇気づけられ、今こそセクハラを含むすべての人権侵害をなくす時だと考えて、「メディアで働く女性ネットワーク」を設立したと表明した。

▲フリーランス・ジャーナリスト 林美子 氏

 また、セクハラに対する法整備にも言及。「これだけ被害があるのに、政府は、男女雇用機会均等法あるいはその指導指針で十分だと言っている。今年の秋からは、男女雇用機会均等法改正の議論が始まる。性差別禁止法を作ってほしいという運動もある。女性が働きやすく、性的な暴力を受けないですむ社会を目指すため、法整備を訴えていきたい」とした。

 松元氏は、「自治体幹部に無理矢理キスをされた。警察署長との懇談会を断ったら会見に呼ばないと脅された。地方議員に口説かれ、断ると翌日から取材拒否された」などの、女性ジャーナリストから寄せられた被害の実態を紹介。「福田事務次官の事件以降、セクハラを受けた経験は『女性記者あるある』になった。けれど、この職業に希望を持つ後輩たちに同じ経験をしてほしくない」と口調を強め、このように続けた。

 「この会を設立した目的は、これまで職場で分断され、マイノリティだった女性がひとつに集まって支え合い、エンパワーメント(注)していくこと。まずは、安心安全の中でお互いに率直に語り合える場を作り、問題意識を共有していくことが大事だと思う」

注:エンパワーメント
 力をつけること。また,女性が力をつけ,連帯して行動することによって自分たちの置かれた不利な状況を変えていこうとする考え方。

記事目次

■ハイライト

  • 会見者 代表世話人2名:林美子氏(フリーランス、元朝日新聞記者)、松元千枝氏(フリーランス)
  • 2018年5月15日(火)15:00~
  • 厚生労働省(東京都千代田区)

テレビ朝日女性記者による告発があっても「セクハラ撲滅」への動きが鈍い社会に大きな危機感!

 はじめに林氏が、「メディアで働く女性ネットワーク」の設立について説明した。

 「4月12日の週刊誌報道で、財務省事務次官による女性記者へのセクハラが明らかになった。これは、多くの現場で働く女性記者たちに大きな衝撃を与えた。ほとんどの女性記者が、取材の中でセクハラを受けてきたからだ。私も記者をしていたが、そういうことはあった。今回、テレビ朝日の記者が勇気を持って告発したことが、多くの報道につながった」

 しかし、これでセクハラをなくす方向に世の中が動くかと思ったら、そうはならなかった、と林氏は言う。「これに大きな危機感を持った。そこで、危機感を共有した仲間が集まって話し合いを重ね、『メディアで働く女性ネットワーク』を設立して、5月1日に総会を開いた」と述べた。

 「メディアで働く女性ネットワーク」には、現在、新聞通信社、テレビ局、出版社、ネットメディアの4分野・31社から、フリーランスも含めて86人が集まっているという。

女性が少ないジャーナリズムの現場。取材先との人間関係を気にしてセクハラ被害を訴えられない状況を変えたい

 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、日本は144ヵ国中114位だ(注)。林氏は、「恥ずかしい結果。日本は法律や制度は男女平等のようでも、実際は男性中心の考え方や差別的な権力構造が根強い国なのだ」と指摘する。

 特に、ジャーナリズム業界では現場に女性が少なく、その尊厳は守られず、セクハラにさらされているという。そういう状況では、本来、社会に向かって働きかけていくべき報道人としての役割は十分に果たせないし、女性に対する差別や人権侵害をなくしていくことは望めない、とした。

(…会員ページにつづく)

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