防衛省による日報隠し、厚労省によるデータ捏造、財務省による文書改竄……。「一強」政権に対する忖度のせいか、このところ行政官僚の不始末が相次いでいる。一般にはあまり知られていないだろうが、外務省でも日米合同委員会の議事録公開をめぐって、「非開示にする必要のないものを非開示にした」ことから失態が続いている。

　情報公開クリアリングハウスが2015年4月、議事録公開を求めて東京地裁に提訴したことに端を発した、外務官僚の劣化を感じさせる事態の経緯をお伝えするとともに、同法人理事長の三木由希子氏に裁判の現状と「役人の劣化」について、お話をうかがった。

▲NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長・三木由希子氏(撮影・IWJ)

日米合同委の議事録、情報公開クリアリングハウスは「公開できない理由を公開せよ」と迫った！

　森友学園への国有地払い下げをめぐる財務省の決裁文書改竄問題では安倍晋三総理の退陣に焦点が移ってきたが、これまではそもそも行政機関に情報公開を求めても「のり弁」と揶揄されるような、ほぼ全面を黒く塗りつぶされた文書ばかりが公開されてきた。

　それがさらに在日米軍幹部と日本政府の中枢を担う行政官僚が密議を交わす日米合同委員会の議事録ともなれば、「日米双方の合意がない限り公表しない」と定められているとして、何度となく申し立てられた公開請求に対して常に「非開示」とされてきた。

▲日米合同委員会が開催されるニュー山王ホテル（東京都港区）

　市民のための情報公開に取り組むNPO法人 情報公開クリアリングハウスもまた2015年4月、議事録公開を求めて、東京地裁に提訴した。

　このとき注目を集めたのは、議事録全体ではなく、それまで国が非開示の根拠としてきた「日米双方の合意がない限り公表しない」と記されている部分のみに限定して公開を求めたことだった。「公開できない理由を公開せよ」ということだ。これに対しても、外務省は全面非開示という決定を下した。 

• 日米合同委員会情報公開訴訟　国が文書提出命令回避のため主張を撤回する異例の展開（情報公開クリアリングハウス、2018年3月3日）

外務省はすでに公開された文書を、米側のメールなどによる要請で「非開示」に！それなら、「メールを開示せよ！」

　ところが、沖縄県による日米合同委関係文書の公開決定の取消しを求めて、2015年3月に国が県を訴えた裁判で、情報公開クリアリングハウスが公開を求めて拒否された同じ文書を、国は「公開できない理由」の根拠として那覇地裁に提出（公開）していたことがわかった。

　情報公開クリアリングハウスの提訴は同じ年の4月だから、外務省はすでに公開されている文書を「非開示」にするという失態を演じたことになる。情報公開クリアリングハウスはこれを注意義務違反だとして2016年11月、訴えを国家賠償請求に切り換えた（現在も係争中）。

　これに対し、外務省は注意義務違反に当たらない根拠として、米側からメールや電話での要請などがあったからだと主張した。米側の指示で「非開示」としたのであって、沖縄での訴訟とは無関係だということだ。

　それならと、情報公開クリアリングハウスは「そのメールを公開せよ」と要求した。外務省は、米側がメールの公開に同意していないことなどをもって、公開には応じられないと拒否してきた。

外務省は突然、それまでの主張を撤回した！日米地位協定と日本国憲法との間で板挟みか!?

　ところが驚くべきことに、2018年2月28日になって、外務省は突然それまでの主張を撤回するという、さらなる醜態をさらす。