【国会ハイライト】「『野党対策』で比較データが作られたのではないか」〜「働き方改革」目指す安倍政権を厚労省が「忖度」!? 法政大・上西充子(みつこ)教授が意見陳述!「裁量労働制」めぐる政府のトリックを解説! 2018.2.21

記事公開日:2018.2.23 テキスト
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(文:IWJ編集部)

 やはり「働き方改革」は、ゼロから議論し直さなければならないようだ。

 安倍政権が今国会での成立を目指す「働き方改革法案」。同法案は「時間外労働の上限規制」と「同一労働同一賃金」を前面に掲げているが、その本質は「裁量労働制の対象拡大」にある。野党や市民からは「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」だと批判する声も絶えない。

 安倍総理は2018年1月29日の国会で、「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは一般労働者よりも短いというデータもある」などと発言したが、この比較データが誤りであったことが発覚し、謝罪・撤回に追い込まれた。詳しい経緯はIWJの記事をご覧いただきたい。

 衆議院予算委員会は2018年2月21日、中央公聴会を開催し、「働き方改革」をめぐり、鋭い批判を続けてきた法政大学キャリアデザイン学部教授・上西充子(みつこ)氏らが公述人として意見陳述をおこなった。

▲法政大学キャリアデザイン学部・上西充子教授

 「『裁量労働制が長時間労働を助長する』という指摘を野党側がしにくくなるように、また、政府の反論をデータにもとづく信頼できるものだと誤認させるように、野党対策としてこの比較データが作られたのではないかと考えている」

 比較データは厚労省が作り出したものだ。上西教授の指摘が正しければ、ここでも「働き方改革」を進めたい安倍政権への「忖度」が働いたことになる。また、「裁量労働制のほうが労働時間が長い」ことを示す調査結果がありながらも、法案について議論する労働政策審議会に示されなかったことについて、上西教授は「あえて実態調査の結果を審議会に出すことを控えたのではないか」との見方を示した。

 上西教授は比較データがいかに不適切だったか、具体的な論拠を示したうえで、政府の答弁が「いたずらに質疑を長引かせるものであり、虚偽答弁に相当する」ものだと批判。「働き方改革」について、「違法状態の合法化につながる」と訴え、「今はサービス残業を違法に労働者に強いている企業が、同じことを合法的にできるようになる」と懸念を示した。

 以下、上西教授の意見陳述を文字起こしし、リライトしたものを「国会ハイライト」としてお届けする。

上西教授「政府の対応に強い疑問を抱く」〜不適切なデータを提示しながらも法案は予定通り提出!?

上西教授「よろしくお願いします。法政大学の上西と申します。今日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、現在の国会質疑の中でも大きな論点となっております、裁量労働制の労働時間の実態把握をめぐる問題を取り上げさせていただきます。

 予算委員会の参考人意見陳述のテーマとしては、このテーマは狭過ぎるというふうにお感じの方もいらっしゃるかもしれません。けれども、この問題は、単にデータの不備という問題ではなくて、政府の審議会における政策立案プロセスの問題、あるいは政府の国会対応の問題を凝縮して示してみせた事例というふうに考えています。

 つまり、氷山の一角のように問題が顕在化した例であり、そういうふうに考えられます。単にデータをめぐる問題としてではなく、そういった広がりを持った問題として、国会議員の皆さんに、あるいは国会審議を見守ってくださっている国民の皆さんにもとらえていただきたいと思っています。

 一般の労働者に比べて企画業務型の裁量労働制の労働者の方が、平均的に見れば労働時間が短いかのような安倍首相の1月29日の答弁は、2月の14日に撤回をされました。19日には厚生労働省から報告が上がり、明らかに比較すべきではないデータが比較されていたということが判明しました。

 しかしながら、昨日20日の国会審議の中で、安倍首相と加藤大臣は、撤回した答弁で言及したデータについては、撤回するのかどうかわかりにくい答弁をしています。そして、調査結果は労政審に示されたものの、比較データは労政審には示されていたものではないとして、予定どおりの一括法案を国会に提出する姿勢を示しています。

 私は、そのような一連の政府の対応に強い疑問を抱くものです。政府の政策立案と政策の実行が適正なものであってほしい、そして、国会も正常に機能するものであってほしい、そういう気持ちで私は今ここに立っています」

政府が主張する裁量労働制のメリットは「印象操作の域を出ない」

上西教授「そもそも裁量労働制とは、あらかじめ決められたみなし労働時間について賃金を支払うものです。そのみなし労働時間を超えて働いたとしても、残業代の支払いの必要性はありません。そのような働き方を大幅に拡大しようとしているのが、今回の働き方改革の一括法案の中に含まれている裁量労働制の拡大です。

 このように裁量労働制を拡大することは、実は、違法状態の合法化につながります。サービス残業というものは、現在は違法ですが、みなし労働時間を超える残業に対して残業代を支払わないことは合法です。

 つまり、今はサービス残業を違法に労働者に強いている企業が、同じことを合法的にできるようになります。経営者にとってはおいしい話ですが、労働者にとっては長時間労働の歯止めがなくなります。『定額働かせ放題』というふうに言われている所以です。

 にもかかわらず、政府は、長時間労働が助長される、あるいは過労死が増える、そういった野党の指摘に対して、誠実に向き合おうとしていません。健康確保措置は、医師の面接指導でもよいとされています。みなし労働時間と実労働時間が大きく乖離する場合には、労働基準監督官が厳しく是正指導を行うかのような答弁もされていますが、その乖離だけをもって是正指導を行う根拠規定は、法改正の内容には盛り込まれておりません。

 監督官の増員も計画されておらず、厳しい指導に期待することはできないのが現実と思います。政府答弁では、メリハリをつけて働くことができるとか、あるいは(勤務中に)病院に行けるようになるとか、育児との両立がしやすい、そういったイメージが広げられていますが、印象操作の域を出ないものと考えます」

「裁量労働制の拡大」を隠して「時間外労働の上限規制」「同一労働同一賃金」を掲げてきた政府の欺瞞

上西教授「現行の労働時間法制のもとでも柔軟に働くことは可能です。有給休暇もより有効に活用されるべきものです。このように、労働者にとってはメリットが見えにくく、一方で経営者にとってはおいしい制度である裁量労働制は、1987年に初めて導入され、1998年の改正によって、企業の中枢部門のホワイトカラー労働者に拡大されました。

 現在拡大が提案されているものは、提案型の法人営業職です。高度プロフェッショナル制度とは異なり、年収要件もなく、有期契約労働者にも適用が可能な制度であるため、かなりの範囲の労働者に適用される可能性があります。

 にもかかわらず、これまで『働き方改革』の中では、裁量労働制の拡大については、政府は積極的に語ってきませんでした。あえて注目が集まらないように、時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金という二枚看板を表に掲げてきたと考えます。

 この企画業務型の裁量労働制を広げようというのであれば、まずは、実態として長時間労働になっていないのか、なっているとすればそれはなぜであり、どう対処すべきなのかが、法改正に先立ってしっかりと検討されなければなりません。その意味で、裁量労働制のもとで働く労働者の労働時間の実態を把握することは極めて大切です。

 にもかかわらず、その労働時間をめぐって政府が答弁で使い続けたデータの比較が極めて不適切なものであったことが判明したというのが現在の状況です」

厚労省所轄の研究機関のデータは「裁量労働制の方が、労働時間が長くなっている」

上西教授「裁量労働制のもとで働く労働者の労働時間を把握した調査結果は、他により適切なものが存在します。

 野党がしばしば言及している労働政策研究・研修機構『JILPT』と略称で呼ばれますが、その調査研究機関が2014年に実施した調査であり、労働者と事業場それぞれに対して調査を行っています。調査結果は、調査票や基本クロス集計表とともに、このように冊子で公開されています。資料シリーズの124と125です(※)。冊子の内容は、ホームページで全文をPDFで読むことができます。

 このJILPTは厚生労働省の所轄の調査研究機関であり、これらの調査はまさに厚生労働省の要請にもとづいて行われたものです。この中の労働者調査の結果によれば、お手元の配付資料の二ページ目のグラフにあるように、企画業務型裁量労働制のもとで働いている労働者の一カ月の実労働時間は、通常の労働時間制のもとで働いている労働者の実労働時間よりも長い傾向が見てとれます。

▲裁量労働制の労働者のほうが長時間労働していることを示す図(上西教授提供)

 平均で見ても、同様に、企画業務型裁量労働制の場合は194.4時間であるのに対し、通常の労働時間制の場合は186.7時間と、企画業務型裁量労働制の方が、労働時間が長くなっています。政府答弁の内容とは反対の傾向を示しています。

 では他方で、政府がこれまで答弁に用いてきた比較データの方はどのようなデータであったでしょうか。安倍首相が1月29日の本予算委員会で言及し、2月14日に答弁撤回に至ったデータは、3ページの表の平均の欄にある9時間16分と9時間37分を比較して、企画業務型裁量労働制の方が、労働時間は、平均的な方と比べれば短いとするものでした。

▲厚労省が2013年に実施した労働時間などの実態調査

 この比較データにもとづいて、1月29日に安倍首相は次のように答弁をしています。『厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということは御紹介させていただきたいと思います』と。

 この比較データは、実は、2015年に山井(和則)議員に対して、また、2017年に長妻(昭)議員に対して、当時の塩崎(恭久)厚生労働大臣が示したものです。また、その答弁に先立って、この比較データは、2015年3月26日に、厚生労働省が民主党の厚生労働部門会議に初めて提供したものであったことが、最近になって厚労省から明らかにされています。

 つまり、この比較データは、2015年の労基法改正、いわゆる『残業代ゼロ法案』と呼ばれたものですが、これの審議に向けて、野党に議論の前提になるものとして共通認識を持ってもらうために、厚生労働省から示されたデータであったというふうに私は考えています」

データは「裁量労働制が長時間労働を助長する」という野党の指摘を避けるために作られた?

上西教授「裁量労働制が長時間労働を助長する、という指摘を野党側がしにくくなるように、また、政府の反論をデータにもとづく信頼できるものだと誤認させるように、野党対策としてこの比較データが作られたのではないかと考えております。

<ここから特別公開中>

 このあたりはぜひ検証作業を進めていただきたいですが、2015年の塩崎大臣の答弁の中で、『実は』とか『むしろ』という形でこのデータに言及があること、また、2017年の塩崎大臣の答弁の中で、ほかの調査を『いろいろな調査』と位置づけて、こちらの方は『厚生労働省自身の調査によりますと』と、より信頼性が高いもののように位置づけていたことも、やはり野党の指摘に対する反証データとしての使い道があったものと考えています。

 1月29日の安倍首相の答弁と、1月31日の加藤大臣の答弁も、まさに長時間労働や過労死の観点から裁量労働制の拡大に反対する長妻議員や森本議員に対して、それぞれ反証として示された比較のデータでした。それぞれのファクトによって見方は異なってくるという加藤大臣の答弁は、まさにそのような狙いを示しているものととらえることができます。

 この比較データについて、2月5日以降、野党から次々に問題の指摘が上がり、2月14日の安倍首相による答弁撤回に至ります。19日には、厚労省より、根本的に比較に適さないデータだったことがようやく明らかにされました」

安倍総理が示した「比較データ」が不適切だった3つの理由!

上西教授「ここで、この比較データは何が問題なのか、簡単に紹介をさせてください。

 まず、この比較データは、『厚労省の調査によれば』と答弁されましたが、調査結果そのものではありません。一般労働者についての9時間37分というデータは、公表冊子である『平成25年度 労働時間等総合実態調査』には収録がされておりません。

 第2に、答弁では、あたかも平均を比べたものであるかのように紹介されましたが、これは『平均的な者』についてのデータでした。加藤大臣は、2月8日になってから、『平均的な者』と言及の仕方を変えています。本来であれば、特別な定義がある『平均的な者』については、2015年の答弁の当初から、そのようなものとして紹介がされるべきでした。民主党に対しても同様です。にもかかわらず、いずれの場合も定義は紹介されませんでした。

 第3に、一般労働者の『平均的な者』の労働時間9時間37分とは、実労働時間ではありません。加藤大臣は1月31日に、これを『1日の実労働時間ですが』と答弁していましたが、2月9日に山井議員に対して加藤大臣が答弁したように、これは調査結果そのものではなく、1日の時間外労働の平均に法定労働時間の8時間を足し合わせた計算式によって求めた値でした。

 しかし、計算式によるものであるということは、民主党へのデータにも記載はなく、答弁でも言及はありませんでした。また、この計算式は、労働時間をとらえる上では不適切なものでした。法定時間外労働の平均に8時間を足すという計算式では、例えば7時間30分の実労働時間である者も8時間働いたものと過大にみなされてしまいます。そのような過大評価は、個票データを見直しても修正することはできません。法内残業の値を調べていないからです。

 したがって、この計算式によって算出した9時間37分という数値は、1万件のデータを精査するまでもなく、不適切なものとして撤回されるべきでした。さらに、19日になって厚労省から明らかにされたところによれば、法定時間外労働の1時間37分という平均値は、1日の法定時間外労働の平均値と説明されていましたが、実は、最長の1日の法定時間外労働の時間を尋ねて、その平均値をとったものでした」

加藤厚労相の答弁は「いたずらに質疑を長引かせるものであり、虚偽答弁に相当する」!

上西教授「2月9日に山井議員に対して加藤大臣が計算式を説明した際には、すでに7日に厚労省担当者から最長であることの説明を受けていたはずですが、加藤大臣は、最長の1日のデータを使っているということを説明していませんでした。これは、いたずらに質疑を長引かせるものであり、また、虚偽答弁に相当すると私は考えます。

 さらに、この1日のデータは公表冊子に収録をされていないものでした。不自然な数値がそこに含まれていることも指摘がされています。

 第4として示したものは、先ほど言及したとおりです。一般労働者の平均的な者の9時間37分という労働時間を算出するために使われた計算式では、最長の1日のデータが使われていました。

 企画業務型裁量労働制の方は、最長の1日について尋ねているわけではありません。このことは配付資料に掲載した厚労省提供の調査票を見れば一目瞭然ですが、野党の追及に対して、厚労省は、この調査が臨検監督の一環であるという理由で、調査票の開示を拒んでいました。

 このように、さまざまな理由で、一般労働者の9時間37分という数値は実態よりも過大なものでした。それと比べて企画業務型の裁量労働制が9時間16分で20分ほど短いからといって、実は短いという判断を下せるものではないことは、これまでの説明で明らかでしょう。

 さらに、第5に示したように、企画業務型の裁量労働制については、把握したものは労働時間ではなく、労働時間の状況と調査結果に示されているものであり、出退勤時刻などによって把握されていた時間です。

 このように違うものをはかっているのですから、そもそも比較ができない不適切なものです。これも、1万件の個票データを精査するまでもなく、明らかなことでした」

データは「法案審議には影響を及ぼさなかった」は嘘!? 実はデータは政府の「労働法制の議論の出発点」だった!

上西教授「さて、このように比較データの不適切さが明らかになる中で、政府は、『この比較データは労働政策審議会に示したわけではない』と答弁をし、『法案審議には影響を及ぼさなかった』と強調しています。

 しかしながら、この比較データが労政審に示されなかったからといって、労政審で適切な審議が行われたと判断することはできません。そう考える理由を2点述べさせてください。

 第1に、この平成25年度調査の結果は、2013年9月27日の第103回労政審の労働条件分科会で、裁量労働制の見直しのための実態把握を行うものとして委員に示されており、今後の労働時間法制の検討の際に必要となる実態把握を行ったものというふうに位置づけられています。『議論の出発点にしていただければ』とも紹介されています。

 実態把握調査を踏まえて裁量労働制の見直しを図ることは、同年の6月14日の日本再興戦略の閣議決定に定められていることです。にもかかわらず、労働条件分科会では、比較データは示されなかったものの、一般労働者の平均的な者の一週の法定時間外労働のデータが最長の週のデータであることの説明がないまま、普通の週のデータであると受け取られる形で104回の労働条件分科会に紹介されています。

 それはつまり、実際には過大な数値であったものが、通常の数値であるかのように紹介されたということです。その分、裁量労働制の労働時間との比較において、一般労働者の労働時間の実態に関し、不適切な情報を労政審の委員に与えたことになります」

「裁量労働制のほうが労働時間が長い」というデータは封印された?〜「あえて実態調査の結果を審議会に出すことを控えたのでは」

上西教授「第2に、これは質疑の中で明らかになっていることですが、この労働条件分科会には、より詳細で、より調査設計がきちんと行われているJILPTの調査結果、こちらのうち、労働者の労働時間の実態に関する部分が紹介されていません。

 加藤大臣は、坂議員との昨日の質疑の中で、当初に厚生労働省から平成25年度調査のデータを議論に資するものとして出しており、その後、委員の御議論の中で追加的な資料が必要であれば、できるだけお応えする形で運用されていたという理解を示しています。

 しかしながら、この平成25年度調査が紹介された104回の分科会では、すでに、使用者代表委員より、企業が裁量労働制を取り入れる前と取り入れた後で働き方や労働時間の実態がどのように変化していったのか、という切り口の調査が必要という指摘が行われており、事務局の村山労働条件政策課長は『承りました』と発言していることが議事録に残っています。

 JILPTのこちらの調査はそのような変化をとらえる調査ではありませんが、平成25年度調査よりは詳細に、裁量労働制による働き方の労働実態を通常の労働時間制のもとで働く労働者の労働実態と比較した調査であり、その結果は、先の使用者代表委員の求めに応える上でも、当然に提示がされるべきものでした。

 建議までのプロセスで、すでに冊子はでき上がっており、配付できる状態にありました。冊子ができ上がっていることへの言及も106回の議事録に残っています。

 しかし、この冊子の内容を改めて精査した上で御報告したいと村山課長がそこで説明をしていたものの、結局、冊子は配付されず、委員に提供されるべき労働時間の実態に関する調査結果は、存在はしていたものの、本委員に提供されませんでした。私は、そのような経過に不自然なものを感じざるを得ません。

 『裁量労働制のもとで働く労働者の労働時間は、通常の労働時間制のもとで働く労働時間よりも長い』という実態を審議会に示してしまえば、これを拡大するという建議を出せなくなる。だから、あえて実態調査の結果を審議会に出すことを控えた、そのように思えてなりません」

政府は法案成立を曲げぬ姿勢!〜「法の制定プロセスとしての正統性を失ったまま法の制定を強行しようとするものだ」

上西教授「ですので、不適切な比較データが労政審に示されなかったからといって、法案提出に問題がないとは私は考えません。裁量労働制の拡大の是非については、労政審の議論まで差し戻して、まずはこのJILPTの調査結果をそこできちんと検討し、必要があれば追加の調査を行い、そして実際に長時間労働になっているのであれば、どう実効的な歯止めがかけられるのか、そこから議論をやり直すべきです。

 現在、政府は一括法案を提出する方針を変えていないようですが、そのような姿勢は、法の制定プロセスとしての正統性を失ったまま法の制定を強行しようとするものです。また、国会審議に誠実に向き合った態度とも、姿勢とも言えません。

 もし、何も聞かずに、とにかく数の力で法案成立を強行しようとしているならば、実態調査にもとづく政策立案も、政労使三者構成による政策形成プロセスも、真剣な国会審議も、全ての土台を損なうことになります。

 政策立案プロセスを正常化するためにも、また、国会審議を正常化するためにも、今、政府には立ちどまって、裁量労働制の拡大と、さらに同種の趣旨である高度プロフェッショナル制度の創設、この2つは一括法案から外すという決断をまず行い、その上で、改めてそれらについては検討プロセスをやり直すことを求めます。また、今回の事態に至った原因究明と再発防止を求めます。ありがとうございました」

 この日の公聴会では、全国過労死を考える家族の会・代表世話人で、自身も夫を過労自殺で亡くした寺西笑子(えみこ)さんも裁量労働制の実態を数々紹介した。IWJは「国会ハイライト」で記事化している。政府が強行する「働き方改革」がどのような結果を招くか、ぜひ参考にしていただきたい。

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  1. 田口宗勝 より:

    厚労省のデータ偽装が問題になっていますが、国交省でも偽装しています。

    住宅の中古と新築を比較する数字です。

    下記サイトをご参照ください。
    http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n2511c00.html

    国交書が言う既存住宅は中古住宅のことです。
    既存住宅シェアは、14.7%で、国際的に低くなっています。
    この数字を根拠に、中古住宅活性化政策を進めています。

    しかし、このデータは偽装です。
    新築住宅の戸数は、居住用と貸家の合計
    既存住宅の戸数は、居住用のみ

    中古住宅シェアを低くするために、意図的に貸家を除いています。

    国際比較をするなら、海外の中古シェアも同じ条件にしなければなりません。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「『野党対策』で比較データが作られたのではないか」〜「働き方改革」目指す安倍政権を厚労省が「忖度」!? 法政大・上西充子教授が意見陳述!「裁量労働制」めぐる政府のトリックを解説! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/412973 … @iwakamiyasumi
    政府が主張する裁量労働制のメリットは『印象操作』の域を出ない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/966806358782701568

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