【国会ハイライト】今国会の目玉「働き方改革」の土台が崩壊!「裁量労働制のほうが一般労働者よりも労働時間が短いというデータもある」〜安倍総理が発言を謝罪・撤回!野党が追及、データ「捏造」疑惑も! 2018.2.22

記事公開日:2018.2.22 テキスト
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(取材・文:IWJ編集部)

 安倍総理自らが「働き方改革国会」と位置づけた今通常国会。その土台が早くも崩れ去ろうとしている。

 安倍総理は1月29日の衆院予算委員会で、安倍政権の「働き方改革」に疑義を呈する立憲民主党・長妻昭議員の質問に対し、次のように反論した。

 「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」

 安倍政権の「働き方改革」は、実際の労働時間に関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間だけ働いたとみなす「裁量労働制」の対象拡大がひとつの柱で、過労死の誘発や長時間労働のさらなる蔓延を招くと危惧されている。29日の答弁では、こうした懸念に対して安倍総理なりに反論を試みたのだろう。

 しかし、のちに「裁量労働制の労働時間は一般労働者よりも短いというデータ」が判断材料として不適切だったことが発覚。安倍総理は2月14日、発言の撤回・謝罪に追い込まれた。そもそもこのデータは「働き方改革」をスムーズに進めるため、つまりは国民を欺くために捏造されたものだった可能性も拭いきれず、野党は連日、厳しく追及している。

「厚生労働省の調査では、裁量労働制のほうが一般労働者よりも労働時間が短いというデータもある」〜安倍総理が発言を謝罪・撤回

 「大手印刷会社の男性は、27歳で過労死された。みなしは1日8.5時間で、裁量労働制だった。1時過ぎに帰宅して、3時に就寝して、6時半に起床して、7時過ぎには出社し、過労死された。出版社のグラビア担当の編集者は、入社2年目で、裁量労働制で過労死された。機械の大手の34歳で過労死された方も裁量労働制で、1日の労働時間は8時間とみなされたけれども、月に残業100時間以上が多かった」

▲立憲民主党・長妻昭議員

 立憲民主・長妻氏は1月29日の衆院予算委員会で裁量労働制の過酷な実態を個別の事例を挙げて紹介し、「働き方改革」を掲げる安倍総理に対し、「(労働法制について)岩盤規制、ドリルで穴を空けるという考え方はぜひ改めていただきたい」と迫った。

 安倍総理は「岩盤規制に穴を空けるには、やはり内閣総理大臣が先頭に立たなければ穴は空かないわけで、その考え方を変えるつもりはない」と主張。そのうえで、「それと、厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということはご紹介させていただきたいと思う」と言い放った。

▲答弁する安倍総理

 一体、どんなデータにもとづいてこのような答弁に至ったのか。野党や専門家からは、一方的なデータだけでものを言っているといった批判が噴出。長妻議員は2月13日の予算委員会で、「整合性が取れない」と指摘し、発言の撤回を要求。翌14日の予算委員会で安倍総理は「(発言を)撤回をするとともに、お詫びを申し上げたい」と謝罪した。

 長妻氏は昨年の衆院選でも安倍政権の「働き方改革」を強く批判し、選挙戦を勝ち抜いてきた。ぜひIWJの記事をご覧いただきたい。

▲中目黒駅前で街頭演説する長妻昭候補(2017年10月15日)

裁量労働者は「1日の労働時間」、一般労働者は「1カ月間でもっとも長く働いた日の残業時間」?比較できないデータを一緒くたにして「裁量労働制の労働時間は一般労働者よりも短い」と主張!? 捏造されたデータのカラクリ

 そもそも安倍総理が「裁量労働制の労働時間は一般労働者よりも短い」とした根拠となるデータは、一体、どこから出てきたのか。

<ここから特別公開中>

 問題となっているデータは厚労省の「2013年度 労働時間等総合実態調査」で、裁量労働制における労働者の労働時間は1日平均9時間16分、一般労働者は9時間37分で、裁量労働制のほうが、平均的な労働時間が短いと報告していた。

 しかし厚労省がデータを精査すると、一般労働者と裁量労働制で働く者の平均労働時間をまったく異なる方法で算出していたことが判明。なんと、裁量労働制で働く者に対しては、単に「1日の労働時間」を尋ねていたのに対し、一般労働者には「1カ月間でもっとも長く働いた日の残業時間」を聞き取り、そこに法定労働時間の8時間を足していたのだという。

 あまりに杜撰な計算方法で、これでは、一般労働者のほうが長く働いているようにみえるデータを意図的に作り出していたとしか受け取れない。

 長妻氏は2月13日の予算委員会で、平均的な労働者の残業時間は1日あたり1時間37分であるのに対し、1週間の残業時間合計が2時間47分と、まるで計算が合わないことになっているとも指摘。しかも、一般労働者のほうには「15時間の残業」(=1日23時間労働)などといった不自然なサンプルも含まれており、資料として著しく信頼性に欠けている点を指摘した。

2015年から繰り返し使用されてきた「誤データ」で、労働法制の議論のミスリードは続けられてきた!

 厚労省によると、今回の問題となったデータが初めて示されたのは2015年3月。裁量労働制の拡大に危機感を抱いていた民主党(当時)が党内で開催した、厚生労働部会の場だったという。厚労省は当時、一般労働者に関しては「残業時間」のデータしか手元になかったが、それでも裁量労働制の労働者の労働時間とできる限り比較をしようと、当時の担当者が法定労働時間の8時間と残業時間を足し合わせて暫定的に一般労働者の「労働時間」を算出したのだという。

 この数字が固定化し、例えば2015年7月31日の衆院厚労委員会では、民主党(当時)の山井和則議員の「裁量労働制は長時間労働になりがちだ」という指摘に対し、塩崎恭久厚労相(当時)は次のように答弁していた。

 「例えば平均時間でいきますと、専門業務型の裁量労働制だと9時間20分、企画業務型の裁量労働制だと9時間16分、むしろちょっと専門業務型よりも少ない。一般労働者でいきますと9時間37分ということで、若干、むしろ一般労働者の方が平均でいくと長い」

 塩崎元厚労相は2017年2月17日の衆院予算委員会でも、長妻氏に対し、同様の答弁をしている。つまり、表面化しなかっただけで、これまでも信頼性に欠ける暫定的なデータが国会でも繰り返し使用され、労働法制に関する議論がミスリードされていたのである。

IWJが直接取材! 厚労省の担当者も「裁量労働制のほうが一般労働者よりも労働時間が短い」というデータは「存在しない」と回答! なのに安倍政権はまったく反省の色なく、「今国会で成立の方針はまったく変わりない」!

 加藤勝信厚生労働相は19日の衆院予算委員会で、この不可解なデータについて、「不適切であり、深くおわびする」と陳謝。野党は「捏造だ」と強く批判し、国会でも追及の手を強めている。

 なぜこのようなデータの捏造が行われたのか。IWJは厚労省に直接、取材を試みた。厚労省の担当者は、IWJの取材に対し、「対応に追われており、これといった原因究明はまだできていない」と回答。「捏造」を指摘する声については、「捏造ということはまったくないが、比較対象として誤りであったことは否定できない」と話した。

 また、厚労省の担当者は、「裁量労働制のほうが一般労働者よりも労働時間が短い」というデータは「存在しない」とIWJの問いに答える形で認め、むしろ、厚労省所管の独立行政法人、労働政策研究・研修機構の調査では、裁量労働制のほうが「労働時間(在社時間)が長い」、「業務量が過大」、「給与が低い」という事実が発見できたと認めた。

 誤ったデータで長年、議論を混乱させてきた安倍政権。発言は撤回し、謝罪したものの、では法案の提出は撤回するのか、といえばそうではない、という。菅義偉官房長官は2月19日の記者会見で「今国会での法案提出と成立の方針はまったく変わりない」と述べ、依然として「働き方改革国会」を断行する姿勢を示した。

 厚労省もIWJの取材に対し、「労働政策審議会で議論し、どういう法案にするかを検討してきたが、議論では、裁量労働制の実労働時間と一般の実労働時間を比較してどうこうという議論はしていないので、過去の議論が否定されるわけではない」と述べ、菅官房長官に同調した。

 しかし、これは誰がどう考えてもおかしい。「裁量労働制の労働時間は一般労働者よりも短い」などと考えていた内閣が、労働者に寄り添った「働き方改革」など実現できるのか。前提が間違っていた以上、従来の法案を修正、もしくは撤廃も視野に、ゼロから労働法制を検証し直すのが筋ではないか。

 この問題で、国会では連日野党による厳しい追及が続いているが、昨日2月21日、厚労省は裁量労働制の対象業務拡大について、施行時期の1年延期を検討していることがわかった。高収入の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」も2019年4月から1年遅らせ、ともに2020年4月施行となる見込みである。

 安倍政権の「働き方改革」は、実際の労働時間に関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間だけ働いたとみなす「裁量労働制」の対象拡大がひとつの柱で、過労死の誘発や長時間労働のさらなる蔓延を招くと危惧され、「残業代ゼロ法案」、「定額働かせ放題」などと揶揄されている。

 そもそも、厚労省のこのデータは「働き方改革」をスムーズに進めるため、つまりは国民を欺くために捏造されたものだった可能性も拭いきれない。厚労省は、施行を遅らせて新たな制度の内容について周知徹底を図り国民の理解を得たい考えだが、野党側は法案の提出を断念すべきだと主張している。

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    今国会の目玉「働き方改革」の土台が崩壊!「裁量労働制のほうが一般労働者よりも労働時間が短いというデータもある」〜安倍総理が発言を謝罪・撤回!野党が追及、データ「捏造」疑惑も! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/412856 … @iwakamiyasumi
    もう疑惑ではない、明らかに安倍政権と経団連の意向を忖度している。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/966609393209901056

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