2012年11月18日(日)18時30分から、さいたま市の浦和コミュニティセンターで「緊急集会『原発ゼロ』へのロードマップを考える~国民の生活が第一の脱原発政策の責任者 松崎哲久さんに聞く~」が行われた。国民の生活が第一の、脱原発政策の責任者である松崎哲久氏が、ドイツ視察の報告や、脱原発政策の説明を行い、「2022年に原発ゼロ」実現へ向けての具体的なロードマップを示した。
(IWJテキストスタッフ・宮里/澤邉)
2012年11月18日(日)18時30分から、さいたま市の浦和コミュニティセンターで「緊急集会『原発ゼロ』へのロードマップを考える~国民の生活が第一の脱原発政策の責任者 松崎哲久さんに聞く~」が行われた。国民の生活が第一の、脱原発政策の責任者である松崎哲久氏が、ドイツ視察の報告や、脱原発政策の説明を行い、「2022年に原発ゼロ」実現へ向けての具体的なロードマップを示した。
■全編動画
冒頭で、10月16日~20日に、国民の生活が第一が、ドイツの脱原発政策を視察した際のビデオが紹介された。視察には、党の所属議員5人のほかに、脱原発法制定全国ネットワークの河合弘之氏も同行。スクリーンには、ドイツ環境省でのアルトマイヤー環境・原子力安全大臣との会談の模様、太陽光発電施設の視察、連邦消費者保護連合および再生可能エネルギー協会への訪問、連邦議会での緑の党・左派党・自民党の環境委員との意見交換会、原発2基のうち1基を止めたエッセンバッハ町や、エネルギー自給率247%のメルケンドルフ村への視察の様子が映し出された。
松崎氏は「ドイツは、スリーマイルとチェルノブイリの事故にショックを受けて、原発に懐疑的になった。2002年に、原発を2022年までに全廃する計画を立てて、日本の10倍の勢いで再生可能エネルギーを増やしてきた。メルケル氏が首相になり、温暖化対策などのために、原発の全廃を2036年まで延長する法律を成立させたが、3.11の事故が起こったことを受けて、わずか3カ月で、2022年という当初の目標に戻すように改正した」と述べた。
また、「何事にもやる気と根気が必要。ドイツの場合は、本気で再生可能エネルギーを伸ばしていこうということで、実際に伸びていった。日本では、再生可能エネルギーが大切だという掛け声はあったが、原発に依存するほうがよいと考える政党、電力会社、経済界があったため、結果として増やさない政策を取ってきた。これを根本的に変えなければ、原発依存から脱却することはできない」と述べた。
質疑応答では、「ドイツの使用済み核燃料に関する政策は、視察の内容に含まれていたか」という質問に対して、「最終処分場の候補地は決まったが、最終決定はできていない。環境省に聞いたところ、『反対があるため決められないのではないか』と話していた」という答えを述べた。
続いて、国民の生活が第一の脱原発政策について、解説が行われた。
まず、松崎氏は、ドイツと日本の発電量を比較して、「経済規模が日本の6割であるドイツが、再生可能エネルギーを年間70億キロワットアワー増やせるのだから、日本が年間100億キロワットアワー(総電力量の1%)を増やすのは、実現可能な数字である。このことが、国民の生活が第一の基本的な考え方である」と述べて、10項目に及ぶ方針をひとつずつ説明した。
まず、「(1)2022年に原発をゼロとする」ということを挙げ、「(2)原発の再稼働は容認しない」の項目では、「即時原発ゼロでなければだめだ」という批判があることについて、「稼働ゼロと廃止は実は違う。即時ゼロはできても、即時廃止はできない。民主党政府が、9月に、エネルギー環境戦略を発表した夜、青森県、経済界、アメリカから抗議がきて、閣議決定を見送った。廃止をすると、青森県が中間貯蔵施設に預かっている核燃料は、元の原発に戻すことになる法律がある。再処理をせずに、プルトニウムを置くことになれば、日米原子力協定に違反することになる。私たちは、稼動ゼロと廃止は違う概念だということを知った上で、エネルギー大転換政策を作っていることを理解してほしい」と述べた。
また、「再生可能エネルギーを普及させていくにあたり、一番の問題は法整備や規制緩和である。例えば、太陽光、風力発電を、日本の至るところにある有休農地に作ることは、現行法ではできない。農地転用をしなくても設置できるように、規制緩和をするのが当然であって、今までしなかったのは行政の怠慢である。電力会社などにその気がなかった」と述べた。
天然ガス・コンバインドサイクル発電について、「(5)CO2排出が抑制される最新型火力を即戦力として使う」の項目では、「熱効率が良く、CO2排出も少ないため、是非とも伸ばしていきたい。ジェットエンジンのように、天然ガスを高温燃焼させることによって、タービンを回す。昔は1100度までしか上がらなかったが、今は1600度まで高温燃焼ができるようになった。また、回し終わったあとの余熱が1300度あり、2度以上回すことができる。3度目に800度、4度目に400度と繰り返すことで、2倍以上の熱効率となる、非常に優れた技術である」と述べた。また、「計画から商用運転まで3年で完成できる。その前の環境アセスについては、火力発電所を、天然ガス・コンバインドサイクル発電にリプレイスすることで、3年から1年に短縮することができる」と述べた。「(6)地産地消」の項目では、「火力発電所は、川崎、横浜、名古屋などにすでにある。大消費地のすぐそばにあっても何の問題もない」と述べた。
「(8)資源調達を多様化し適正価格を確保する」の項目では、「固定価格買取制は、どこかでやめる必要がある。ドイツの場合は、1年ごとに減らしていくと決まっている。日本の場合は、決まっていない。最初に契約した価格が続くため、価格が高いから再生可能エネルギーはだめだという議論になってしまう。原発か、安い再生可能エネルギーか、という選択になるよう努力しなければならない」と述べた上で、その方法として、「天然ガス価格が、原油価格に連動する仕組みを変える」「調達先を多様化し、価格交渉で価格を下げる」「総括原価方式をやめて、コストカットの努力をする仕組みに切り替える」などを挙げたあと、「これらを総合的に行って、初めて本当の廃止が確定できるため、2022年という年限を切らざるを得ない」と述べた。
質疑応答では、「再生可能エネルギーを扱う企業を育成していくために、できることは」という質問に対して、「日本の技術力の高さは確信しているが、なぜ再生可能エネルギーが低水準であったかというと、導入を妨げる規制や法整備が要因にあった。今の太陽光発電の買取価格は42円だが、蓄電技術を入れると、半分の21円に下がってしまう。自然エネルギーは、気象や気候や昼夜に左右されるので、蓄電技術を併せ持っていないと有効ではないのに、今の固定価格買取制度では、その有効性を妨げている。問題点をひとつひとつ解決して、よい制度を作ることによって、育成は十分できる」という答えを述べた。