戦争いやだ、憲法守れ!中弘南黒の会 第11回総会・記念講演会 2012.11.13

記事公開日:2012.11.13取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田/澤邉)

 2012年11月13日(火)、青森県弘前市で「戦争いやだ、憲法守れ!中弘南黒の会 第11回総会・記念講演会」が行われた。スピーカーは東奥日報社の斉藤光政氏。「オスプレイの日本配備と青森県の軍事基地」をテーマに展開された議論は、「日本国憲法」と「日米安全保障条約」の弱点に根ざした核心部分に触れる内容となった。

■全編動画

  • 日時 2012年11月13日(火)
  • 場所 青森県弘前市

 斉藤光政氏は最初に、『週刊朝日(朝日新聞出版)』の橋下徹大阪市長(日本維新の会)の記事を巡る騒動を取り上げ、「謝罪しないことで有名な天下の朝日新聞が(橋下氏に)謝罪したことは衝撃的事実」と語った。

 なぜ『週刊朝日』はあのルポを掲載したのか。斉藤氏は「橋下氏は、非核三原則の『持ち込ませず』について考える必要があるとした彼の発言に象徴される通り、自民党や石原慎太郎前東京都知事に近いタイプ。憲法を改正して、集団的自衛権が行使できる『普通の国』へと、日本を変えようとしているのではないか」とし、その上で「朝日新聞側は、すでに大阪ではヒーロー視されている橋下氏の勢いをすぐにでも止めないと、自分たちが嫌う日本の右傾化が一気に進むと見て、佐野眞一氏というベテラン作家にああいう記事を書かせたのだろう」と述べた。

 だが、結果は周知の通り。斉藤氏は「あの朝日新聞を謝罪させたことで、逆に橋下人気は高まった」と苦笑した。

 橋下氏をヒトラーにたとえる、何人かの有識者に会ったという斉藤氏は、「ヒトラー政権が誕生した1930年代のドイツは、長期の景気低迷で閉塞感が漂う今の日本に似ている。ヒトラーは選挙で、当時のドイツ国民によって合法的に選ばれた」と述べた。当時のドイツは大戦の敗北による賠償金の支払義務を背負っており、国民は社会に横たわる貧しさと閉塞感を払拭してくれる、力強いリーダーの登場を切望していたというのである。

また、「(ナチ党の政権獲得で形骸化した)ワイマール憲法は戦争放棄を謳う日本の憲法と同様、先進的なものだったが、当時のドイツ国民はその先進性に目もくれず、社会不安しか見ていなかった」と続け、「不況である上に尖閣諸島や竹島の問題を抱える今の日本には、民意を憲法改正へと流れさせるだけの材料が揃っている」と懸念を表明。その上で「『今の憲法は米国に押しつけられたものだから早く改正すべき』との声があるが、日本人の生命と財産を守ることを主たる目的にしながら戦後約70年間、機能してきた」と語った。

 さらには「特措法の積み重ねで、自衛隊は後方支援と称しながらイラクで米軍の戦争に加担しており、日本はすでに『普通の国』になりつつある。それに対し防波堤の役割を果たしているのが今の憲法なのだが、今の憲法には先進的であるが故の責められやすい部分があり、『普通の国』を目指す勢力は、そこを突いてくる」とも。

 そして話題はオスプレイに至った。まず斉藤氏は「オスプレイは、降りるためにローターの角度を変える際が危ない。だから、その角度の変更は基地の外では行わないでくれという話になるのだが、実際は基地の外で行われている」と指摘した。そして日本にとっての「オスプレイ問題」の根っこは「日米安全保障条約」にあると語った。「オスプレイは敵のレーダーを避ける超低空飛行で戦闘兵員を目的地に運び、逃げてくる輸送機。高度15メートルを飛ぶといっている。非常に危険だ。それでも日本はノーといえない。なぜか。日米安保では、米軍が装備を持ち込むことに対し、その装備が核爆弾などでない限り、一切文句をいえないとされているためだ」と強調した。

 また、最終ポイントを十和田湖にするピンクルートと呼ばれる飛行ルートが存在することを指摘し、「訓練のために激しい飛行でエンジンを酷使すれば、米軍がいっているような長距離飛行は難しいと思う。そうなるとたぶん、(燃料補給のために)三沢基地が頻繁に使われるだろう」と述べた。

 さらに、東日本大震災直後に展開されたトモダチ作戦を「あれは戦後最大の日米合同演習だ」と評し、「仙台空港のがれきを短期間で処理し、使える状態にしたのは米軍の海兵隊の工兵部隊だ。自衛隊にはそういうノウハウはあまりない。ある専門家は、トモダチ作戦は有事において日米が手を組めば何ができるかを世界に向けてアピールしたことになるといっていた。つまり東日本大震災は不幸なことだったが、それをケースにして普段はできない大規模な合同演習を実施することができたのだ。トモダチ作戦にはそういう側面がある。トモダチ作戦で、三沢基地は燃料補給面で最大の拠点として機能した。青森県は日米融合を柱とした米軍再編が最も進んだ場所だ。中国は支援と称して、その三沢基地を視察しようとしたが、日本政府は拒み続けた」と説明した。

 また斉藤氏は「ある憲法学者が、日本国憲法は日米安保より上位にある法規だと語っていた。つまり日米安保がどうだこうだと騒ぐ前に、憲法が戦後の日本で機能してきた事実を重視してほしい。日米安保では、米軍がオスプレイを日本に持ち込めることになっているとしても、日本人の生命と安全を脅かす危険性があるのなら、それは憲法違反に相当する。そういうシンプルな考え方が、今こそ求められている」と参加者に呼びかけた。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です