【岩上安身のファイト&スポーツ】MMAトップファイター・コナー・マクレガーが49戦全勝のレジェンド・メイウェザーに挑んだ歴史的メガマッチ!ファイトマネーは100億円!亀海喜寛はミゲール・コットに挑戦! 2017.8.28

記事公開日:2017.8.28 テキスト
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(岩上安身)

 ダゾーンでメイウェザー対マクレガーの歴史的なメガマッチを生で見るべく待機中。アンダーカードの発表があるので、もしかしてすぐには始まらない!? となると放送は長引いて、WOWOW放映の亀海対コットの、こちらも歴史的な一戦にバッティングしてしまう! どうする!? パソコンを持ってきて、同時に見るか!?

 WOWOWとダゾーンを同時に見るにはこれしか手がないと、テレビとパソコンを同時視聴のセッティング。

 4年前、UFCにデビューするまで、アイルランドのダブリンの下町の配管工で、それだけでは食えなくて毎週、役場の前に並び、2万4千円の生活保護を受け取っていた若者が、ボクシングの試合経験ゼロで、49戦49勝無敗のレジェンド、メイウェザーに、総合格闘技ではなくボクシングで挑むこの一戦で、100億円強のファイトマネーを手にする。ハイリスクを取り続けてきた男、マクレガーのアメリカン・ドリーム。

 無敗レジェンドを失うかもしれないメイウェザーにとってももちろんこの一戦はハイリスク。新興でありながらビッグスポーツビジネスにのし上がった総合格闘技MMAトップファイターの挑戦を、老舗業界の看板ファイターが受けるボクシング界にとってもハイリスクでもある。

 が、リスクを恐れず戦う姿勢こそが最も重要。新興人気格闘技そのものに怖じけている姿勢が見えたら、それこそチキンに見えてしまう。業界全体の人気に翳りも生じるだろう。

 マクレガーのこの挑戦が突破口となって、MMAファイター(あるいは他の諸々の格闘技選手)でありながら、同時にプロボクシングのリングにも上がり、タイトルにも挑戦できる、というような、業界の垣根が取り払われることがあり得るか。メイウェザーとマクレガーという傑出した選手による例外的な一戦に終わるのか、という点にも興味。

 他の格闘技に対して排他的という点では、日本のボクシング界は尋常ではない壁を築いている。他格闘技との二足のわらじは履かせないし、他の格闘技に転向したら2度とボクシングのリングには戻れない。まるでボクシングの「純潔」を守ろうとするがごとき潔癖性は、ハイブリッドな格闘技の台頭によって守れなくなってきている「キングオブ格闘技」の地位を、自ら危うくしているともいえる。

 日本のボクシング界は、エセバージンのような純潔ぶりっ子はやめて、他の格闘技の経験者をリングに上げたり、ボクサーが、他の格闘技のリングに上がったり、また戻りたければ戻る自由を認めるなどの、リングへの出入りの自由を認めるべきだ。ダメージコントロールやメディカルチェックが必要なのはいうまでもないが、「純潔のための純潔」のような排他性は、他格闘技と比較されるのを嫌がり、リスクを避けているようにしか見られず、業界全体の先行きを暗くしている。グローブをつけて、ルールを守る限り、誰であれ、リングに上がれて、殴り合うことが許され、殴り勝った強い者が勝者となる。そうしたボクシングのシンプルでワイルドな原点を忘れずに立ちもどれるか否か。

 とうとう、WOWOWでは亀海とコットのWBOスーパーウェルター級世界王座決定戦が先に始まってしまった。下、ダゾーンではマイク・タイソンが観客席に登場。

 亀海、1ラウンドは良かったが、2、3ラウンドはコットの接近戦のうまさに有効打をもらって鼻血も。亀海は5センチの身長差があり、リーチも長いので、自分の距離でリードブローを効かせばいいのに、ジャブを全く出さずに工夫なく前へ出て相手の距離での接近戦に挑んでしまう。試合運びが惜し過ぎる。4ラウンドもコットがポイントを取ったと思う。

 8ラウンド。展開は変わらず。やはりコットは老獪。抜くところは抜いて、はっきり緩急をつけ、密着戦の離れぎわでパンチをまとめる。亀海は前へ出るも、相手との距離を潰すそのきわにおいて自分から先に手を出せず、同様に密着戦の際に自分のイニシアティブで離れて距離を作りパンチを打ち込むことができない。引き技がない。理由は引き足がないこと。出入りの自在さがない。この前のネリに敗れた山中慎介もラッシュを食らった時、バックステップがなかった。誰もが井上尚弥のようなバックステップを持ってはいないのだと改めて感じる。コットのパンチも大したことがないだけに、亀海の入り方、離れぎわの単調さがもったいない。突進のみではポイントアウトされる。

 結果は12R戦い抜いてコットの判定勝利。亀海は大きなダメージを負った様子もなく、試合運び、出入りのその際での微妙な攻防の技術不足だけで差をつけられた感があり、実にもったいなかった。

 さて、メイウェザー対マクレガーである。亀海対コットと、重ならずにうまいことずれてくれた。ノンタイトル戦なのに、両国国家斉唱。

 いよいよマクレガー、入場。この熱い感じ、まさしくアイリッシュ。

 コールの際、カメラの正面に立ち続けるマクレガー。

 入場の際、意味不明のマスクをつけ、場内コールの際もカメラを避け続けるメイウェザー。対照的。余裕なのか、笑みも浮かべている。

 1ラウンド、メイウェザーにカウンターのアッパーを当てるマクレガー。このラウンドは攻勢だったのはマクレガー。

 3ラウンド目までとは打って変わって、4ラウンド攻勢に出たメイウェザー。プレスをかけ、正確にヒットさせる。マクレガー、スタミナのロスがはっきり見て取れる。5ラウンドも同じ流れ。

 4ラウンドから6ラウンド、マクレガーが下がり続け、メイウェザーが前へ出る展開が続く。ディフェンシブなはずのメイウェザーが前へ出て行くのは珍しい。ボディもかなり入る。写真はマクレガーのパンチをことごとくかわすメイウェザー。7ラウンド、さらに追い込むメイウェザー。

 結局、下がり始めたマクレガーは、半端なバックステップしかできず、そこを「追い突き」のようなノーモーションの右ストレートを的確にヒットさせるメイウェザー。9ラウンド、ほぼ一方的な滅多打ち。レフェリーストップで、TKO勝ち。ロッキー・マルシアノを抜く50戦50勝無敗。今日が最後の試合とはっきり言い切ったメイウェザー。

 試合が終わってから、讃えあう両者。メイウェザーは、試合後、ボクシングの凄さを誇りつつ、MMAとアイルランド人を讃えた。このあたりがメイウェザーの「成熟」を感じさせる。戦前、毒づき続けたマクレガーも、メイウェザーを讃えるとともにダメージではなくスタミナ切れの疲労だった、と強がりも。リスクを取った自分をもアピール。MMAの王者がボクシングの土俵に上がったのだから、そのアピールだけは認めないわけにはいかない。

※2017年8月27日付けのツイートを並べて掲載しています。

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