2012年10月28日(日)13時40分から、東京都東村山市の市民ステーション「サンパルネ」において、講演会「松井英介さん&おしどりマコさん・ケンさんの放射線内部被曝と福島」が行われた。松井英介氏は、低線量内部被曝をキーワードに講演を行い、郡山の集団疎開、集団移住の権利についても言及した。原発事故直後から東電会見に参加し、内部被曝の問題も追っている、おしどりマコ氏・ケン氏は、自身の体験を基にマスコミの問題や情報操作が行われている点を指摘。また、ベルラド放射能安全研究所の所長、ネステレンコ氏による福島視察に同行した模様も紹介した。
- 講演 第1部 松井英介氏(岐阜環境医学研究所、元岐阜大附属病院医師 放射線医学・呼吸器病学)/第2部 おしどりマコ氏・ケン氏
- 日時 2012年10月28日(日)13:40~
- 場所 市民ステーション「サンパルネ」(東京都東村山市)
- 主催 こどものごはん委員会
最初に講演を行った松井氏は、低線量被曝について、身体の中に入った放射性物質から出る放射線量が少ない場合であっても、周りの細胞には大きな影響を及ぼす点を説明した。続けて、20数種類存在する放射性物質(核種)の中から、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム、プルトニウム239の特徴、人体への影響、半減期をスライドで示し、そもそも放射線とは何か、について解説を加えた。
内部被曝の恐ろしさを訴える松井氏は、「人間の体内の半分以上は水である。胎児では体重の約90%、成人では約60%が水で占められている。我々の祖先は、海で生まれ、1つの細胞から始まった。やがて移動手段として、足を持ち、陸上に上がり、それまでの環境が激変した結果、体内に海を閉じ込めた。内部環境をいかに保つかが、大事である」と述べ、同時に福島の原発事故後、人体の内部環境を乱すものが増えてしまった点を懸念した。
また、1950年代にICRPの内部被曝委員会の委員長を、わずか2年で辞めたカール・モーガンの話を挙げ、当時、内部被曝についての調査が進むにつれて、原発で働く作業員の健康維持が難しいことが判明した経緯を説明した。松井氏は「本来は、そこで運転を止める方向に向かうべきであるが、経済的な要因が重視されていった」と、原子力産業が経済性を最優先し、人命をないがしろにしている点を指摘した。
最後に、「ふくしま集団疎開裁判」に取り組む松井氏は、「福島の原発事故は、未だ収束していない」と強調し、「今、大事なことは日本に住む人々が、ベラルーシ、ウクライナの市民の取り組みから学んで、集団移住の権利を保障する法律を作らせ、新しい街作りを進めていくことである」と述べた。
第2部では、おしどりマコ氏・ケン氏が講演を行った。原発事故の直後、テレビの報道に疑問を持ったというマコ氏は、「政府や東電から、恐ろしい内容が発表されているにもかかわらず、マスコミではまったく報道されていなかった。そこで、実際に会見に行くことにした」と、東電の記者会見に参加した経緯を説明し、「何度も質問を重ねないと、重要な情報は出してこないなど、本当に驚くことが多い」と話した。
続けて、マコ氏は、10月中旬に来日したベラルーシのベルラド研究所所長、ネステレンコ氏の福島視察の様子を語った。福島県の放射能汚染を、「ひどくても、毎時1マイクロシーベルトだろう」と予想していたネステレンコ氏は、実際に福島の小学校付近で測定した際、毎時27.6マイクロシーベルトの数値を検出して大変ショックを受け、「ここに子ども達がいるのか?」と何度も尋ねたという。
また、各市町村の学校の線量管理課に電話をし、ガラスバッジ(個人線量計)の運用について調べているマコ氏は、「被災地の子ども達は、ガラスバッジを持って線量を管理している、と県外の人は思いがちだが実態は違う。文科省の予算がついただけで、自治体によっては配ってない所が多々ある。また、ガラスバッジの数値は自然放射線が加算されていない。自然放射線も身体に影響を及ぼす」と指摘し、原発事故による放射線被曝と自然放射線からの被曝を合算するべきである、と述べた。
会場からの「何を信じたらいいのか」という質問に、マコ氏は「何も信じない方がいいかもしれない」と答え、ネステレンコ氏が福島の母親たちに伝えた「誰かの言う『安全』には乗っかるな。自分の責任で子どもを守れ」というメッセージを紹介した。その上で「気になるニュースがあったら、会見の記録や官公庁の資料など、なるべく一次情報にあたり、自分の責任で判断することが大切だ」と述べた。