トランプ氏、大統領に就任。直後の演説で、かねてからの公約通り、TPPからの離脱を正式に表明。これでTPPは完全に雲散霧消。さらにはTPPの原型とも言えるNAFTA(米、カナダ、メキシコの3カ国による北米自由貿易協定)の見直し、再交渉、そして離脱もありうるとまで明言。
日本政府は、トランプ氏が第45代米国大統領に就任した当日の1月20日、TPPの国内手続きを完了したと通知した。参加12か国で初めて。しかし米国が参加しない以上、発効しない。際立つ愚かさ。
トランプ新大統領はまた、選挙期間中から訴えてきた「アメリカ・ファースト(米国が第一)」とともに、「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」「ハイヤー・アメリカン(米国民を雇用せよ)」の2つを強調した。グローバリズムから距離を置く姿勢鮮明に。
トランプ新大統領はまた、ISを壊滅させると就任演説で明言。そのためにロシアのプーチン、シリアのアサド政権と協力する、とまではさすがに言わなかった。イスラエルのエルサレムへの遷都の意思表明(イスラム教徒が大反発)にも、言及せず。
トランプ新大統領の演説で、他に注目すべき点は、「保護主義は繁栄と強さに結びつく」と、はっきりと「保護主義」という言葉を用いたこと。米国の国是とも言うべき「自由貿易至上主義」は、遠のいた。黒船で開国を迫って以来の国是の転換と言ってもいい。
「我々の軍事力が衰退するのを許してしまう一方で他国の軍隊を補助してきた。我々は他国を守ってきたが自国を守らなかった」というくだりも、確実に日米同盟に影響を与える。日本政府は否定とごまかしに躍起になるだろうが、米国はもう日本を守らない。
トランプと国会での安倍施政方針演説、TPP離脱宣言と国内手続き完了通知など、あまりにもコントラストが鮮やかな一日。
安倍総理、同盟は神聖不可侵、戦後国体護持と言わんばかりに。他方、同日に帝国の新皇帝は保護国のことを知らん、と明言。
- 安倍首相、衆院で施政方針演説-日米同盟「不変の原則」(共同通信 2017/1/20)
- 安倍晋三首相の施政方針演説全文(河北新報 2017/1/20)