10月16日に投開票が行われた新潟県知事選は、当初の「劣勢」との予想を跳ね返し、野党3党(社民、共産、自由)が推薦した米山隆一氏が見事当選をはたした。米山氏が新潟県民の支持を幅広く集めた背景として、「柏崎刈羽原発の再稼働反対」を主要な争点として掲げ「原子力ムラvs市民」の構図を作り出したこと、そして民進党執行部から公認を得られなかったにも関わらず、現場レベルでの「野党共闘」を実現させたことがあげられるだろう。
しかし民進党は、この新潟県知事選の勝利を「教訓」とすることはなかった。10月23日に投開票が行われた東京10区と福岡6区での衆議院補欠選挙では、最大の支持母体である連合に「配慮」して共産党との間に距離を取り続け、その結果、いずれの選挙区でも「惨敗」を喫してしまったのである。
それでも民進党執行部、特に野田佳彦幹事長に反省の色はない。本来ならば、民進党は最大野党として安倍政権打倒の先頭に立たなければならないはずである。にも関わらず、その民進党が「野党共闘」の流れに水を差し、その結果として自民党をアシストしてしまっているのだから、まったくもってお話にならない。
きたるべき衆議院解散総選挙に向けて、野党は新潟県知事選と衆院補選からどのような「教訓」を得て、安倍政権打倒のための共闘の枠組みを作るべきか。以下、新潟現地で取材を重ねたジャーナリストの横田一氏からのレポートを掲載する。(IWJ編集部)
「原発即時ゼロ」を訴える小泉純一郎元総理が新潟入り!新しく県知事に就任したばかりの米山隆一氏に「意欲を持って頑張って欲しい」とエール
原発即時ゼロを訴えて全国講演行脚を続ける小泉純一郎元総理が11月4日、新潟市内で講演を行った。再生可能エネルギー拡大に取組む「おらってにいがた市民エネルギー協議会」(代表理事は佐々木寛・新潟国際情報大学教授)の主催で、米山隆一新知事も挨拶。壇上で小泉元総理と手をつないで高らかに掲げる場面もあった。
講演の冒頭で小泉氏は、「新潟県知事選(10月16日投開票)の影響は大きい。(野党候補を)一本化して原発ゼロを争点にしたら与党は負ける」と切り出し、米山知事に対しては「『新潟県から日本のエネルギー政策を変えるのだ』という意欲を持って頑張って欲しい」とエールを送った。
▲講演する小泉純一郎元総理――11月4日、新潟市内
▲小泉元総理と米山隆一新潟県知事
囲み取材でも“小泉節”は全開。「『連合を気にせずに野党統一候補が原発ゼロを訴えれば自民党に勝てる』ことを証明したのが新潟県知事選だったと思うが」と聞くと、小泉氏は「野党が一本化して原発ゼロを争点にしたら野党は勝つでしょう」と答えた。
さらに、「民進党も連合を気にせずに原発ゼロを訴えるといいのでは」と確認すると、次のように答えた。
「連合の票はどれぐらい? 500万人ぐらいいるのかもしれないが、原発を推し進めている電力関係の労組の人たちは50万人もいないでしょう。50万人よりも500万人、5000万人の票をどうして獲得しようと思わないのか。分からないね」
また、民進党の野田佳彦幹事長と自由党の小沢一郎共同代表が2回面談をして野党候補の一本化に合意したことについては、「(候補者の)一本化をして何を進めていくのか、です。そこに、原発(問題)が入らないと意味がない」と強調した。
さらに民進党の原発政策(2030年代原発ゼロ)に対しても、小泉氏は次のように一刀両断にした。
「公約は分かりやすく作らないとダメなんだ。『2030年代に原発ゼロ』は分かりにくいじゃない。今でも原発ゼロでやっていけるのだから。どうして分からないのか。いま原発ゼロを宣言した方が、原発ゼロに向かって国民も企業も準備しやすい。将来はゼロというよりも、早く決めた方がいいじゃない」
▲報道陣の取材に答える小泉氏
小泉氏が自ら仕掛けた郵政選挙は国民に「郵政民営化イエスかノーか」を問うたものだったが、今回の新潟県知事選では「柏崎刈羽原発の再稼働イエスかノーか」が最大の争点となった。「小泉流郵政選挙」と「米山流原発選挙」はたしかに重なり合う。小泉氏は首相時代の実体験を元に「対立軸の明確化(争点化)」の重要性を指摘したのだといえる。