「社会常識に欠ける」では済まされない。安倍内閣の閣僚が堂々と違法行為を働いたばかりか、国会の場で「何ら問題はない」と開き直っているのである。
2016年10月6日、参院予算委員会で日本共産党・小池晃議員が質問に立ち、稲田朋美防衛相、菅義偉官房長官の「白紙領収書疑惑」を追及した。
「白紙領収書疑惑」は共産党の機関紙「しんぶん赤旗」編集部が開示請求し、スクープで報じたものだ。
赤旗によると、稲田大臣は資金管理団体「ともみ組」の政治資金収支報告書に、政治資金パーティーの会費を支払ったとして添付した領収書のうち、約260枚(約520万円分)の筆跡が同一人物によるものだった。また、菅官房長官の資金管理団体「横浜政経懇話会」が政治資金収支報告書に添付した領収書のうち、約270枚(約1875万円分)の金額欄が同じ筆跡だったとも伝えている。
共産党の小池晃議員に「白紙領収書疑惑」を追及された稲田防衛相と菅官房長官は、ともに自らの事務所で領収書に金額を記入した事実を認めた。
詫びて責任を取るのかと思いきや、驚くべきことに稲田防衛相は「政治資金パーティー主催者側の了解のもとで未記載の部分の日付、金額を正確に記載した」と述べ、「何ら問題はない」と開き直り、菅官房長官も同じく「規制法上、何ら問題はない」と居直った。
こんな開き直りが通ると思っているのだろうか。
政治資金規正法の第11条は、「(政治団体は)一件五万円以上のすべての支出について、当該支出の目的、金額及び年月日を記載した領収書その他の支出を証すべき書面を徴さなければならない」と定めている。当然、「支出を証すべき書面」を自ら用意するのではなく、「支出を証すべき書面を(相手から)徴さなければならない」のである。
小池議員は規制法に則り、稲田防衛相らの領収書は「領収書の要件を呈していない」「本当にその金額払ったのか、誰も証明できない」と指摘。「委託があったら金額をあとで書いていいなんて言ったら、今聞いている中小企業の社長さんたち、みんなびっくりですよ。そんな領収書が通用するわけない」と批判した。
小池議員の主張は、当然過ぎるほど当然の主張である。会社員が白紙の領収書を手に入れて、金額を手書きで書き入れて経費として出したら、クビが飛ぶ。中小企業や自営業者が同じことをしたら、税務署が許さない。
さらに驚くべきは、政治資金規正法を所管する高市早苗総務相の答弁である。
「皆さん近接した時間帯にパーティーにこられるので、その場で封筒を開封し、金額を確認し記入していては、多くの国会議員をお待たせすることになる。パーティーの開始が送れるなど、その運営に支障を来す」
高市大臣はそう前置きし、「領収書の金額等を記載する権限をパーティーの主催団体から了解されていれば、法律上、発行者の領収書作成方法が規定されていないことからも法律上の問題は生じない」と開陳した。
呆れ果てた詭弁である。安倍政権の閣僚は、どこまで性根が腐っているのか。
政治家だけがパーティーを開いているわけではない。「パーティーの運営に支障をきたす」という同じ理屈で、民間企業や民間人が領収書を白紙で出したり、白紙の領収書を求めたりすることが、これからは認められるのか。
そんな理屈が通るはずがないことは明らかだ。すると政治家のパーティーだけは許されるという「特権」の表明なのか。
政治資金規正法の趣旨を説明する「手引」は、領収書について、「法における『領収書等』は、当該支出の『目的』、『金額』、『年月日』の三事項が記載されていなければなりませんので、1つでも欠ければ、法の『領収書等』に該当しません」と明確に断じている。
ちなみに、そんな高市大臣自身にも、「白紙領収書疑惑」があると、小池議員は指摘している。
政治資金問題に詳しい神戸学院大学法学部教授・上脇博之氏はIWJのインタビューに対し、次のように断じている。
「稲田防衛相らは政治資金規正法を明らかに無視しています。『手引』は、『金額』や『年月日』など、ひとつでも漏れがあれば領収書にはならない、と言っているわけです。彼らは、それをわかったうえで白紙領収書をやっているんですよ」と批判した。
選挙や政治資金制度を所管するのが総務省である。その総務省の大臣が、政治資金規正法の法解釈を破っているのである。断じて許される話ではない。
確信犯的に違法行為を働き、発覚したら堂々と開き直る。そんな人物たちが大臣や政権No.2の官房長官を務めていてよいのか。不適格であると言わざるをえない。
以下、当該質疑を文字起こしにして掲載する。
「収支報告書の適正の確保および透明性の向上のため」に改正された政治資金規正法!
日本共産党・小池晃議員(以下、小池議員)「政治資金の問題を聞きます。総務省に。2007年12月に政治資金規正法が改定されました。改訂の中心点を説明してください」
総務省・大泉淳一自治行政局選挙部長(以下、大泉部長)「お答え申し上げます。平成19年の12月に、与野党協議の結果、当時の自民党、公明党、民主党、社民党、国民新党の5党の合意に基づきまして、政治資金規正法の改正案が議員立法として提案されたもので、改正法が成立しております。
その内容としては、総務省に『政治資金適正化委員会』を設置しまして、国会議員、関係政治団体というものを定義づけしまして、この収支報告に関し、すべての支出について、領収書等を徴収する、人件費を除く、一万円を超える支出については収支報告書へ明細の記載、領収書等の写しを添付する、登録政治資金監査人による政治資金監査を義務づける。また、一万円以下の少額領収書等の公開をする、というような制度が創設されたものです」
小池議員「改正の趣旨を説明してください」
大泉部長「法案の趣旨説明などによりますと、政治団体、とりわけ国会議員関係政治団体の支出にかかる収支報告書の適正の確保および透明性の向上のためであると承知しております」
領収書の「要件」は、「支出の目的金額および年月日を記載した領収書、その他支出を証すべき書面」
小池議員「政治資金規正法第11条で、領収書の要件はどうなっていますか?」
大泉部長「政治資金規正法上、領収書等とは、当該支出の目的金額および年月日を記載した領収書、その他支出を証すべき書面というふうに規定されているところでございます。
この旨は総務省の作成しております、収支報告書の手引にも書いてございますが、これは一般的な見解として示している手引などを作っております。特段の事情を反映していないということで説明しているところでございます」
小池議員「領収書には金額が記載されていなければいけないって、あまりにも当然のことですね。だから法律にもそう規定しているわけです。しかし自民党の中では、政治資金パーティーなどで、金額が白紙の領収書が横行しているようであります」
稲田防衛相の呆れた答弁!「委託を受けてこちら側で正確に日付、金額等を書き込んでいるものであって、何ら問題はない」
小池議員「これは稲田防衛大臣の政治資金団体の収支報告書に添付されていた領収書のうち、ここに今、座っておられる閣僚の事務所が発行した領収書だけパネルにさせていただきました。ずらりと並んでおります。
▲同じ筆跡で金額等が記載された稲田防衛相の領収書のコピー
筆跡鑑定も行いました。しんぶん赤旗で筆跡鑑定を依頼して、金額すべて同じ筆跡で、同じ人物が書いたものだとわかりました。
稲田大臣、これは各大臣から白紙の領収書を受け取って、金額も稲田事務所で書き込んだ。間違いないですね?」
▲稲田朋美防衛相
稲田朋美防衛相(以下、稲田防衛相)「今、小池委員がご指摘になったように、私が代表を務めております、政治団体『ともみ組』が提出した、政治資金収支報告書について、同報告書の中で、会費として計上している政治資金パーティー会費の領収書の中に、稲田側で日付、宛名、および金額を記述したものが存在しており、今ご指摘になったとおりであります。
それらは、政治資金パーティー主催者側の都合により、主催者側の権限において発行された領収書に対し、主催者側の了解のもとで、稲田側において未記載の部分の日付、日付、金額を正確に記載したものであります。
国会議員は、しばしば同僚の国会議員の関係政治団体が主催する政治資金パーティーに参加をいたします。
その際、主催者側としては、数百人規模が参加するパーティーの受付で、特に政治家の先生方は、会費をお祝儀袋、水引の付いたお祝儀袋に持ってこられますので、参加会費の入れられた封筒を開封し、金額を確認したうえで、宛名とともに金額を記載するとすると、まぁ受付に、長時間を要してしまう、受付が混乱すると、パーティーの円滑な運営大きな支障が生じてしまうことから、その都合上、金額が空欄の領収書を発行することがあります。
(議場、ざわつく)
そのため、互いに面識のある主催者と参加者の間においては、領収書の日付、宛先、金額について、主催者側の了解のもと、いわば委託を受けて参加者側が記載することがしばしば行われております。その際、当然のことながら、参加者側、特にその(パネルで)お示しいただいている場合ですと、私ですけれども、私の側ですけれども、実際に支払った日付、宛先、金額を領収書に記載することとしております」
小池議員「あのね、架空の支払いでないことを証明するために領収書ってあるんですよ。で、金額をね、(金を支払った側が)書いていたら、領収書にならないじゃないですか。『みんながやっているんだからいいでしょ』って、子どもの言い訳みたいなことしないでくださいよ。これ、領収書の要件を満たしていないこと認めるでしょ?」
稲田防衛相「今ご説明いたしましたように、領収書を発行した方、作成名義人が、その方の権限でもって発行をされておる、正式な領収書でございます。そして、その了解のもと、いわば、委託を受けてこちら側で正確に日付、金額等を書き込んでいるものであって、何ら問題はないと思います」
稲田防衛相の白紙領収書は2012年から2014年までの3年間で「約260枚、520万円分」!?
小池議員「だって今ね、さっき稲田さんが説明したときに、『いちいち封筒を空けている時間がないからこうしているんだ』と。じゃあ2万円かどうかわからないじゃないですか。そんなの、稲田さんが書いているだけってことになりますよ。まったくこれ、領収書の要件を呈していないじゃないですか」
稲田防衛相「ただいま、重複になりますけども、作成名義人であるところの主催者側が正式に発行をした領収書でございます。そしてその了解のもとで、例えばそこ(パネル)でお示しいただいているものであれば、主催者側が設定した会費と同額でございますけれども、こちらで正確に支出したものを了解のもとで、委託を受けて、いわば委託を受けて書き入れているものであって、私は政治資金規正法のもとの領収書として取り扱うことについては、問題がないというふうに思っております」
小池議員「だって政治資金規正法の第11条には、金額が書いていなきゃいけないって書いてあるんだから、これどう考えたってね、政治資金規正法の要件満たしていないじゃないですか。
でね、委託があったら金額をあとで書いていいなんて言ったら、今聞いている中小企業の社長さんたち、みんなびっくりですよ。そんな領収書が通用するわけないじゃないですか。こんな馬鹿な話はない。
で、こうした領収書がんね、これは一例挙げただけですけれども、稲田さんはね、2012年から2014年までの3年間で、約260枚、520万円分あるわけですよ。
(議場から「えぇー!?」の声)
で、稲田大臣自身も、2009年11月の衆議院の法務委員会でこう言っています。
『政治家は誰でも、政治資金規正法については、きちんと認識しておかなければいけない。その趣旨を理解していただかないで、何が民主主義ですか。何が議会制民主主義ですか』
こうね、大臣おっしゃっている。こんな領収書出しておいて、何が民主主義ですか、ということになるんじゃないですか? これはね、まったく政治資金規正法の要件を満たしていないということを認めていただきたい」
稲田防衛相「繰り返しになりますけども、発行された主催者側が正式に発行したものであり、その、そちらの都合によって発行されたものでもございます。そしてただ、ただですね、私は今、小池委員のご指摘、さらには赤旗でこの点指摘をされたことを受けまして、私の事務所では、例えば一般にきていただいている方には、2万円の印字をしている領収書を発行しております。
そして政治家の方については、先ほど申しましたように、ほとんどお祝儀袋の水引のついたものに入れておられます関係から、こういったかたちで処理しているものも、これからはしっかりとどういったかたちができるか、検討してまいりたいと思っております」
稲田防衛相だけじゃない!菅官房長官は「270枚、1875万円分」が白紙領収書!
小池議員「これからはやらない、ってことは、『まずい』ということを認めているじゃないですか。やっぱね、語るに落ちたという感じがしますよ。でね、しかもこれ稲田大臣だけじゃないわけですね。菅官房長官。
菅さんの政治資金団体の収支報告書に添付されていた領収書のうち、安倍内閣の閣僚の事務所が発行した領収書を今日これ、持ってまいりました。
これ、一部です。3年間で菅さんのところは、270枚、1875万円分。まぁ稲田さんのはすべて2万円なんですけれども、菅さんのは10万円、20万円というのが100枚以上ある。これも筆跡鑑定の結果、数字はすべて、金額はすべて同一人物の記載であることがわかりました。
で、官房長官も稲田さんが今おっしゃったのと同じことをやっていたと、認めますね?」
▲菅義偉官房長官
菅義偉官房長官(以下、菅官房長官)「今、稲田大臣から答弁ありましたけども、私自身も、私自身が代表を務めております政治団体において、政治パーティー会費の領収書の中に、菅事務所で日付、宛名、金額を記載したものが存在をいたしております。
先ほど、稲田大臣から答弁がありましたように、私自身、官房長官に就任して以来、数多くの同僚議員からパーティーの案内を受けるようになりました。その際、やはり数百人規模の参加するパーティーの受付で、出席者の全員に宛先とともに金額を頂戴することになると、受付が混乱する。そしてパーティーの円滑な運営に大きな支障をきたす。そういう中でですね、互いに面識のある主催者と参加者の間、これ事務所同士でありますけども、そこにおいては主催者が領収書を発行し、主催者の了解のもとに参加者側が内容を記載するということがあります。
私の事務所でも、政治資金パーティーの主催者側が発行した領収書に、主催者側の了解をもとに、実際の日付、宛先、および金額を正確に記載して、収支報告書として提出いたしています。このことはインターネット上でも開示をされているところだと思います。
私はこのような処理をいたしておりますので、そこは規制法上、問題ないと思っております」
菅官房長官の呆れた言い分!「主催者側と私ども参加者側はお互いに面識がある事務所同士であります」
小池議員「あのねぇー…驚くべき答弁だと、私思いますよ。宛名は政治資金規正法では義務ではないんです。だからそこはね、たしかに大変なのかもしれませんよ。(それに対して)金額が白紙のものは領収書とは言わないんです、世間では。
しかも数百人がくるから大変だって言うけど、大臣じゃないですか。翌日閣議で配ればいいじゃないですか。(議場で野党側から笑いと拍手が起きる)できるじゃないですか。全国から集っている(一般の)参加者にいちいち出すのと違いますよ? 議員会館回ればいいじゃないですか、翌日に。数百人くるから出せませんというのは、何の説明にもなりませんよ。
こんなことやってる、白紙の領収書配って書いてね、それを出す。こういうことを、国民の皆さんは、やっぱりデタラメな税金、お金の使い方やっているんだというふうに見るのは当然じゃないかと思いますが。どうですか?
このくらいのことは処理できるじゃないですか。今私が言ったやり方で十分対応できると思いますけども。金額だけ書いて、ちゃんと渡せばいいじゃないですか、議員会館回って。それで済むじゃないですか」
菅官房長官「今申し上げましたけども、その主催者側と私ども参加者側の間にですね、面識がある、お互いに事務所同士でありますから、そこの了解のもとにですね、その、参加者側が記載しているわけでありますし、政治資金規正法上、政治団体が徴収する領収書に際して、発行者側の作成法についての規定はなくですね、こうした領収書を政治資金規正法上のもとで、領収書として取り扱うことに問題ないというふうに思っております」
(議場から「ええー!?」の声)
小池議員「あのねぇ、面識あったら、お金あとで書いていいっていうのが成り立つんだったら、中小企業の社長さん、みんな面識ありますよ、取引先と。こんなデタラメな話あるかって。国税庁だってこんなのね、認められないですよ。こんな領収書。
だから結局ね、本当にその金額払ったのか、って誰も証明できないじゃないですか。そういう重大な問題なんですよ、これは。ただ単にね、便宜上の問題っていうじゃなくて、実際にやりとりされていないお金のやりとりがあった可能性が否定できないでしょう。
『相手との信頼関係があるから、相手が面識あるから、だから大丈夫です、私を信じてください』。そういう話じゃないですか、2人の話は。稲田さんもそうでしょう、『私を信じてください』。菅さんだってそうでしょう。『私の言うことを信じてください』。それだけじゃないですか、この説明は。
じゃあこの数字が正しいということ、どうやって証明するんですか。どう証明するのか、説明してください。…後ろからそんなことでいちいち(官僚の)紙回すなよ〜(失笑)」