国会の頭ごしに米軍に忠誠を誓う自衛隊。その「暴走」は、今に始まったわけではなかったようだ。
雨が降る東京・有楽町駅前で2月15日、第二東京弁護士会が「安全保障法廃止に向けた街頭宣伝行動」を開催した。
ゲスト弁士として招かれた学習院大学法科大学院・青井未帆教授は、安倍政権は「あまりにも憲法を『コケ』にしている」と非難。さらに、民主党政権下の統合幕僚監部で、すでに「日米同盟のために集団的自衛権行使すべし」という、憲法を無視した報告書がまとめられていたという衝撃の「新事実」を明かした。
国会の頭ごしに米軍に忠誠を誓う自衛隊。その「暴走」は、今に始まったわけではなかったようだ。
雨が降る東京・有楽町駅前で2月15日、第二東京弁護士会が「安全保障法廃止に向けた街頭宣伝行動」を開催した。
ゲスト弁士として招かれた学習院大学法科大学院・青井未帆教授は、安倍政権は「あまりにも憲法を『コケ』にしている」と非難。さらに、民主党政権下の統合幕僚監部で、すでに「日米同盟のために集団的自衛権行使すべし」という、憲法を無視した報告書がまとめられていたという衝撃の「新事実」を明かした。
記事目次
■ハイライト
「9割の憲法学者を前に、7割の憲法学者を持ち出すというのは、あまりにも憲法を『コケ』にしているのではないか」――。
マイクを握った青井氏は、自民党による憲法や憲法学者の「政治利用」に憤った。
自民党の稲田朋美政調会長は2月3日の衆院予算委員会で、「憲法学者の約7割が自衛隊は憲法違反と解釈している」と述べ、憲法9条の改正を安倍総理に訴えた。あまりに虫がいい主張ではないか。安保法案が国会で審議されている最中に、「憲法解釈の最高権威は最高裁。憲法学者でも内閣法制局でもない」と述べ、学者や「法の番人」をあからさまに軽視していたのが、稲田氏である。憲法を自らが都合よく解釈するため、憲法学者の権威をその時々で使い分けているのである。
これは稲田氏に限った話ではない。東京新聞などの調査では、憲法学者の9割が「安保法案は違憲である」との見方を示していたが、同党の高村正彦副総裁は、「たいていの憲法学者より私の方が考えてきた」などと放言し、学者らの指摘を一顧だにしなかった。こうした姿勢は安倍政権全体の体質だといえる。
青井氏は「憲法学者は、コツコツと研究を重ねてきた。それを7割だ、9割だと政治的に使うこと自体が、『憲法とは何なんだろうか』という話しになる」と指摘。「日本で『憲法を守る』ということは、そんなに政治的なことなのだろうか。これは、かなり危険な状態にあるといえる」と危機感を示した。
青井氏は続けて、防衛省の内部資料から発覚した、驚愕の「新事実」を紹介した。
「実は本日、民主党政権下で、すでに防衛省・統合幕僚学校が、研究のひとつとして『集団的自衛権を行使すべし』という部内報告書を作り、統幕長に上げていたことが情報公開請求で明らかになった」
安保法案を審議する参院特別委員会で2015年8月11日、共産党の小池晃議員が、「安保法案成立時期の見通し」などが書かれた防衛省・統合幕僚監部の内部文書の存在を暴露した。さらに9月2日には、同党の仁比聡平議員が、やはり自衛隊トップの河野克俊幕僚長が2014年末に訪米した際の内部文書を公開。米軍幹部と会談した河野統幕長が、「2015年夏までには安保法制が整備できる」などと語っていたことが発覚した。
統幕監部は「制服組(自衛官)」中心の組織である。自衛隊のトップが国会や国民の存在を無視し、米軍上層部に対し、単独で、まだ安保法案の中身も定まっていない時期に「2015年夏に安保法案が成立する」との見通しを先行して示していたのだ。
自衛隊上層部は、国民によって選ばれた国権の最高機関である国会よりも、米軍の方に「忠誠」を誓っているようだ。「同盟国」とはいえ、他国の軍隊である米軍に「忠誠」を尽くしているとすれば、自衛隊は独立主権国家の実力組織とはいえない。「集団的自衛権の行使容認」の真の狙いが、自衛隊による米国の戦争の「下請け化」であることを示す事実である。
「シビリアン・コントロール(文民統制)」が強く問われる問題だが、青井氏の話が事実であれば、自衛隊が米軍の「下請け」と化す動きは、集団的自衛権行使容認を推進する安倍政権の暴走と純粋に連動していたわけではなく、民主党政権下ですでに「日米同盟のために集団的自衛権行使すべし」という、憲法を無視した「軍の暴走」が始まっていたことになる。
「統合幕僚監部というのは、自衛隊の情報を一元的に扱っているところだが、そこが『日米同盟の観点からすると、集団的自衛権を行使すべきである』という報告書をまとめていた。政治が自衛隊や軍隊の実力をどうコントロールするか、という話が軽く扱われているように思われてならない」
青井氏はさらに、「政治家は、本当に自衛隊を運用できる力を持っているのか。これだけ憲法を軽んじているというところからも、不安に思わなければいけない」と述べ、「軍の暴走」に懸念を示した。
「民主党政権下で『集団的自衛権行使を容認せよ』と言っていた制服組中心の統幕組。本当に(集団的自衛権の行使を)日本政府に決定する力なんかあるのだろうか。このあたりを真剣にみないと、また同じ間違いをするのではないか。軍隊のコントロールが問われているのに、そのコントロールに無自覚ではないか」
青井氏は昨年7月8日、IWJ代表・岩上安身のインタビューに応じ、「日米調整メカニズム」によって、自衛隊の行動が米軍に委ねられてしまう可能性を指摘していた。自衛隊の主体性が失われ、「日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になる懸念がある」という青井氏の指摘が杞憂でないことは、次々と明らかになる防衛省の内部資料からも明らかではないか。
今回情報開示で明らかになった「新事実」について、IWJは引き続き、事実関係の取材を進めてゆく。