「一人区を闘う協力体制を作りたい。政党同志の連携には期待せず、我々がプラットホームを立ち上げ、そこに野党を巻き込んでいく流れを作っていく」―。
2015年12月11日(金)、早稲田大学で立憲デモクラシーの会主催による連続講座「立憲デモクラシー講座」が行われ、政治学者・山口二郎氏が講義を行った。「戦後70年の民主主義」と題された今回の講義では、安倍政権による戦後枠組みの崩壊を、戦後70年の日本政治の流れの中で論じ、安保法案の反対運動で見えた新しい可能性や、今後の闘い方などが語られた。
(取材・記事 安道幹)
※12月15日テキストを追加しました!
「一人区を闘う協力体制を作りたい。政党同志の連携には期待せず、我々がプラットホームを立ち上げ、そこに野党を巻き込んでいく流れを作っていく」―。
2015年12月11日(金)、早稲田大学で立憲デモクラシーの会主催による連続講座「立憲デモクラシー講座」が行われ、政治学者・山口二郎氏が講義を行った。「戦後70年の民主主義」と題された今回の講義では、安倍政権による戦後枠組みの崩壊を、戦後70年の日本政治の流れの中で論じ、安保法案の反対運動で見えた新しい可能性や、今後の闘い方などが語られた。
■ハイライト
山口氏は、共産党が提案した「国民連合政府」について民主党内から反発が出ていることから「現実として期待できる状況ではない」と見通しを述べ、安保法案の廃止や立憲主義を取り戻すために、法案への反対運動を牽引してきた5団体(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安全保障関連法に反対する学者の会、SEALDs、安保関連法に反対するママの会、立憲デモクラシーの会)によって結成される「市民連合」を基点に、野党を巻き込んでいきたいとの考えを示した。
「一人区を闘う協力体制を作りたい。そのために政党同志の連携には期待せず、我々がプラットホームを立ち上げ、そこに野党を巻き込んでいく流れを作っていく。熊本・石川・鹿児島などでは、すでに市民主導で候補を立てる動きが進んでいる。そういうところを後押ししていきたい。4月に予定されている衆院北海道5区の補欠選挙は、参院選の前哨戦でとても大事です。これも市民主導の候補者を立てる目処がついてきた」
すでに上記5団体は、12月9日に民主、維新、共産、社民、生活の野党5党と3回目の意見交換会を国会内で行っている。団体側からは12月20日に「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(仮称)を結成し、安保法案廃止に向けた参院選での野党共闘を求める提案が出された。これに対して民主党・枝野幸男幹事長は「こうした流れをそれぞれの立場でしっかりと前に進めることができれば、安保法制を白紙に戻すことも十分可能ではないか」と語り、団体側の要求に応える姿勢を示している。5団体は、12月20日に「市民連合」結成の記者会見を行う予定だ。
また山口氏は、この20年間にわたるイギリスと日本の政治状況を比較しつつ、日本では政権交代のための小選挙区制度の導入自体が目的化し、2大政党の一方であるべき民主党に思想的基盤がないことを批判した。
「97年に労働党のブレア政権が誕生し、様々な政策の新機軸を打ち出していった。イギリス流の二大政党っていうのは凄いものだと当時は思った。こういう仕組みが日本でできればと思い、民主党に肩入れしてきたが、イギリスと日本はあまりにも違いが大きかった。
イギリスでは労働党の支持基盤として労働組合があり、労働党の議員はある種の方向性を共有している。つまりサッチャリズムのような小さな政府路線はダメ。政府はちゃんと再分配をして、弱者を助ける社会保障、教育をしっかりする。こういう共有された基軸をしっかり持っていた。
日本の場合は、政党を支える社会的基盤というものがない。民主党には連合があるが、これも個別の企業なり産別の利益は主張するけれども、国全体の社会保障や雇用についてものを言うほどの体制でもない。要するに日本の民主党は、小選挙区制が作ったいわば人為的な産物だった。民主党は『自民党じゃない』というだけで、思想的基軸がないということが致命的な欠陥だった」
このように述べ、民主党について、子ども手当や高校無償化など社会民主主義的な政策を埋め込み、政権交代を果たしたが、思想的基軸の欠如が原因で外からの批判に弱く、党自体が分裂してしまったと振り返った。
また山口氏は「小選挙区制でなければ、どのような選挙制度が望ましいか?」との質問に対して、「(小選挙区比例代表)併用制」や「連用制」といわれる選挙制度を紹介した。
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