安倍晋三政権は「一億総活躍社会」を作るのだという。「国民すべて」という意味で「一億総」なのであり、そこには、女性、老人、子どもも含むだろう。政府は、2016年6月をメドに「一億総活躍」政策によって成長率と税収などの経済効果がどの程度出るかを試算する新しい経済モデルを作成するというが、成長と財政再建につながるのか、はなはだ疑問である。
「一億」という形容は、戦前、戦中にしばしば用いられた。
「進め一億火の玉だ」は、大政翼賛会が掲げたスローガンであり、軍歌をともなった。国民精神総動員という政策、運動もまた、国民が国家のために自己を犠牲にして尽くす、滅私奉公を鼓吹するもので、数々のスローガンを掲げた。この「精神」は大政翼賛会に明記されていたが、この政策運動が第一近衛内閣によって掲げられたのは1937(昭和12年)のことだった。
まさに、その1937年に一億の国民の一人として「少年」たちが駆り出されていった。
昭和の高度成長時代を象徴する「一億総中流社会」になぞらえた経済政策重視の強調。安倍政権が国民へのポジティブな効果を、「一億総……」との言い回しで創出しようとしていることは間違いない。しかしこれは、戦争期の日本でたびたび使われた、今となっては負のイメージだけが残る表現でもある。
第一次近衛文麿内閣が1937(昭和12)年に始めた政策「国民精神総動員」は、日中戦争の拡大を受け、国民が国家のために自己を犠牲にして尽くす滅私奉公の精神を広めることにあり、その折に、「進め一億火の玉だ」とのスローガンが掲げられている。これは軍歌にもなった。
そして当時は、その「一億火の玉」の一集団として、10代半ばの男子らが戦争に駆り出されているのだが、今の日本で、この事実はさほど知られていない。
中国東北部(旧満州)に、全国から約8万6000人もの少年を送り出した「満蒙開拓青少年義勇軍」は、1937年11月に「同軍編成に関する建白書」が出たのを機に本格化した制度である。そのうち約2万人が若くして命を落とすことになった。
この制度は、国を挙げて国策として推進されたものだった。ことに長野県の場合は、教員団体(教育会)が若者らの送り出しに熱心に取り組んだ。
満蒙開拓団などへの参加から引き上げの苦労については、『平和の礎』(海外引揚者が語り継ぐ労苦)という一連の単行本が参考になります。発行は平和祈念財団です。引き上げ途中に多くの人が亡くなりました。亡くなったのは幼い子供が多く、子供を生きさせるためにあえて子供を現地の中国人に託した人も沢山居た。それが残留孤児となった方々です。
引き上げした中には赤塚不二夫さんや五木寛之さん、中西礼さん、赤木春江さんなどの芸能関係の方も多くおられます。坂東英二さんも引揚者ですが、引き上げの話が当局の逆燐に触れたようです。事実が嫌いなのがデマで票を獲得し政策を実行する安倍政権だ。