【スピーチ全文掲載】「今日がダメなら明日、明日がダメなら明後日、明後日がダメなら明々後日。民主主義を存在させるのは私たち一人ひとり」――SEALDsかりんさんが参院での「凶行」直後に国会前スピーチ 2015.9.24

記事公開日:2015.9.24取材地: テキスト動画
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特集 安保法制

 「安倍さん、強行採決しても国民はすぐ忘れると思っているようですが、私たちをナメないでください」――。

 2015年9月17日、平日の深夜にもかかわらず多くの人が国会前に集まった。特別委員会において委員外の自民党議員も乱入しての鴻池委員長の包囲、議事録に明確な記載もないまま採決の強行が押し通された日である。

 この日、国民の怒りを代弁するように日本女子大学に通うかりんさんは、国会前で声を上げた。かりんさんは、今までどれだけ日本がアメリカの始めた戦争に加担し続けてきたかをあげ、「火をつけておいて火事だ、助けなきゃと消しに行って(注1)、それを復興活動だとか人道支援などと言っています。それが日本の国際貢献の姿です。こんなこと、イカサマ師のすることです」と強く非難した。

 また、安倍総理をナチス・ドイツのヒトラーにたとえて、「ワイマール憲法に拘束されない無制限の立法権を授けた、全権委任法を思い出します。第三帝国の始まりですか? 選挙で自民・公明が過半数をとったから、憲法違反をして勝手に法律を作る。ナチスと同じ独裁国家です。これは民主主義ではありません。ただの多数決主義です」と指摘した。

 そのうえで、怒りと不安が渦巻く国会前を勇気づけるように、「主体的に自由意志で動く私たちは思い立ったらいつだって行動します。決していなくなりません」と力強く宣言した。

 以下、かりんさんのスピーチ全文と動画を記載する。

■かりんさんのスピーチ動画

かりんさんスピーチ文字おこし

 「こんにちは。日本女子大学のかりんです。

 あまりスピーチは得意ではないし人前に立つのは好きではないのですが、どうしても、どうしても、言いたいことがあるのでここに立ちます。

 『戦争に備えていれば、憂いなし』と、安保法案を作りたい政治家は言います。しかしそれは、私たちがずっと戦争の中に居続けるということです。戦争に備えて毎日見えない軍服を着て動くということです。

 戦争には必ず必要なものがあります。それは、敵です。自分を脅かす敵がいる、という物語を持たないと戦争の準備はできません。自国が攻撃されてもいないのに敵を持つ。そして何としてでも兵隊を集め、税金をばかみたいに軍事に注ぎ込む。資源を浪費して、環境を破壊して、人を殺すために国を作り変えていくのです。それをおかしいという人がいると、『非国民』といって口をふさぐ。最悪な社会です。

 同盟国アメリカの敵は、日本の敵でしょうか。アメリカという国はずっと戦争をしてきました。そして、日本はそれに付き合ってきました。

 例えば50年前、自作自演のトンキン湾事件(注2)で始まったベトナム戦争。沖縄の基地から武器を積んだ戦闘機が飛び立ちました。沖縄の高江にベトナム村(注3)がつくられ、対ゲリラ訓練のモルモットにされました。日本は兵士達の軍服を作り、死んだ兵士たちを入れる死体袋を縫い、戦争に協力しました。(注4)未だにベトナムやアメリカ兵の子供たちは枯葉剤による障害に苦しんでいます。

 イラク戦争では、大量破壊兵器があるとか、テロ支援国家だとか、アルカイダとつながりがあるとか、いろいろ言いがかりをつけてアメリカは先制攻撃をしました。嘘から始まった戦争(注5)で10万人もの市民が殺されてきました。13年経っても戦乱は終わっていません。その混乱がISを生み出す一因となり、人々を大量の難民にしています。

 このアメリカの仕掛けた戦争に日本は自衛隊を出しました。なぜ、嘘つきが始めた戦争に賛成してしまったのか。どうしたら同じ過ちを繰り返さないで済むのか。未だに検証すらしていません。(注6)火をつけておいて火事だ、助けなきゃと消しに行って、それを復興活動だとか人道支援などと言っています。それが日本の国際貢献の姿です。こんなこと、イカサマ師のすることです。

 日本国憲法は世界大戦を経た人類の知恵と願い(注7)が反映されています。自衛のための最小限の軍備で戦争という手段を否定し平和を希求する、と宣言しました。小さな極東の島国は世界の端っこで慎ましく、各国に攻め入らない平和国家として国際社会に名誉ある地位を築く。それでいいじゃないですか。

 憲法違反の法律なんて要りません。仮想敵も要りません。安倍さんの積極的平和主義(注8)、平和安全法制は言葉が完璧に中身を裏切っています。国民を騙そうとしていることはもう、バレています。政府はあくまで限定的な集団的自衛権だと言っています。でも緊急時と判断したら、国会の承認もなく海外派遣ができます。(注9)これまでの安保法案の審議の仕方と強行採決の仕方を見れば、国会は機能していません。政府の好き勝手です。国民は白紙で政府にお任せくださいということです。

 まるであのヒトラー首相です。ワイマール憲法に拘束されない無制限の立法権を授けた、全権委任法(注10)を思い出します。第三帝国の始まりですか? 選挙で自民・公明が過半数をとったから、憲法違反をして勝手に法律を作る。ナチスと同じ独裁国家です。これは民主主義ではありません。ただの多数決主義です。

 これからも情報操作や教育への介入、格差で人を分断し、国民を自由に操作できると考えているのでしょう。政府を批判する、考える声を潰してしまえると。そんなことは不可能です。

 ヒトラーの最期はみんな知っています。敵を作るとは、相手の言う中身はどうでもよくて人を敵・味方の二分に分類します。そして自分がどこに属するのかだけを気にして、上位に立つことだけを問題にします。これはいじめと同じ構造です。

 しかし、自民・公明の皆さんはどんなに頑張っていじめ社会を作り、敵をひねり出し、戦争のために生きる社会を作っても、そんな国はやがて、皆に嫌われて必ず破綻するでしょう。迷惑を被るのは私たちです。

 安倍さん、強行採決しても国民はすぐ忘れると思っているようですが、私たちをナメないでください。学生だけでなく、学者たちも、弁護士さんも、ラッパーも、デザイナーも、お煎餅屋さんも、いろんな人がいます。ですからずっと、あらゆる手段でおかしいと伝え続けます。

 私は、反対の声を上げるこの場でいろんな人とつながりを作りました。ここにいるのは、誰に頼まれたわけでも、お金を得るためでもなく、ただ、この国を守りたくて、これ以上最悪にしたくなくて、少しでもマシにしたくて、集まってきた人達です。

 暴力や利害で仕方なく従う人達は『金の切れ目は縁の切れ目』です。ですが、主体的に自由意志で動く私たちは思い立ったらいつだって行動します。決していなくなりません。

 今日がダメなら明日、明日がダメなら明後日、明後日がダメなら明々後日。民主主義を存在させるのは私たちひとりひとりです。2015年9月17日、私は安保法案に反対します」

(注1)安倍首相がテレビ番組で安保法制を説明する際に用いたたとえ。
(注2)1964年に北ベトナム沖トンキン湾にて、アメリカ海軍駆逐艦が北ベトナム魚雷艇から攻撃を受けたとされる事件。この事件をきっかけとしてアメリカはベトナム戦争介入を開始した。後年アメリカ側の捏造が発覚した。
(注3)ベトナム戦争当時、沖縄県国頭郡東村高江にかつて存在したアメリカ軍管轄のゲリラ襲撃訓練用施設。対ベトナム戦のためにベトナムの農村を模して作られていた。アメリカ軍は高江地区の住民を連行し、南ベトナム人の標的として軍事訓練をした。連行された住民の中には女性や乳幼児もいた。
(注4)ベトナム戦争の際に日本が行った後方支援のこと。日本は主要武器以外の相当部分をアメリカに提供した。
(注5)イラクのサダム・フセイン政権(当時)が大量破壊兵器を隠し持ち、国連の査察に非協力的であることを開戦の主な理由としたが、国連の事前査察で大量破壊兵器は見つかることはなかった。国連安保理の明確な決議が無いまま、アメリカとイギリスはイラク戦争を強行した。その後も大量破壊兵器は見つかっていない。
(注6)日本政府は、アメリカとイギリスの武力行使を支持したことに関しては検証を行っていない。
(注7)第二次世界大戦だけではなく、第一次世界大戦、パリ不戦条約からの戦争違法化の潮流が、日本国憲法の平和主義の平和主義の源流となっている。
(注8)ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥング博士が1969年に提唱した積極的平和主義の概念は、「非暴力的な手段によって戦争や経済的搾取などあらゆる暴力を世界からなくしていくこと」であり、安倍首相の用いる積極的平和主義の意味とは全く異なる。
(注9)「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保する法律」(旧「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」)などにおいて、自衛隊の後方支援活動は原則事前の国会承認が必要だとされているが、緊急の場合などは事後承認でも可とされている。
(注10)1933年ドイツで制定された特別法の通称。この法律によりナチス政権は議会や大統領の承認なしに立法権を行使できるようになった。授権法。

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