山形市長選が証明した「安保法制反対」「野党共闘」の可能性 〜与党候補に猛烈な逆風が吹いた! 2015.9.18

記事公開日:2015.9.18取材地: テキスト
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(ジャーナリスト 横田一)

 安保法案の参院審議が山場を迎える中、与野党推薦候補が激突した山形市長選(2015年9月13日投開票)で、元経産省職員の佐藤孝弘氏(自民・公明・次世代・改革推薦)が、元防衛省職員の梅津庸成氏(民主・共産・社民・生活推薦)と飲食店経営の五十嵐右二氏を破って初当選をした。しかし法案反対を訴えた梅津氏は5万4596票を獲得、佐藤氏との得票差は僅か1773票だった。「梅津氏の大善戦で安保法案反対の民意がはっきりと示された」(県政ウォッチャー)ということを物語る結果となっていた。

 山形県は全小選挙区(一区から三区)を自民が独占し、山形市が有権者の約3分の2の「山形一区」でも去年12月、遠藤利明五輪担当大臣が次点の民主党候補をダブルスコアで破っていた。ところが9カ月後の今回の山形市長選では、与野党系候補の得票がほぼ拮抗。与党候補に対して安保法案反対の逆風が吹いたことを示すもので、自民党が強い地域でも野党共闘で安保法案反対を訴えれば、互角の戦いができることを山形市長選は証明したといえるのだ。

 しかも安保法案反対の逆風(民意)は、いくつもあった梅津氏不利の要素を挽回するほど強烈なものだったと考えられる。佐藤氏が前回市長選で惜敗した後に4年間かけて市内を回っていたのに比べ、梅津氏の出馬表明は5月末。準備期間は「48カ月対3カ月半」と大きく出遅れていた。

▲野党共闘が実現した梅津陣営

 政党支持率でも大差をつけられていた。投開票日に放送されたNHKの出口調査によると、自民支持は43で公明支持は2(自公合計で45)に対し、野党合計は23(民主支持は18、共産と社民が2、維新が1)。政党の基礎票でも2倍の違いがあったのだ。

 しかも五輪担当大臣となった遠藤利明氏(自民党県連会長)が連日のように佐藤氏と一緒に回り、中央とのパイプの太さを強調しながら企業・団体への締め付けも徹底。選挙戦最終日の12日には石破茂地方創生大臣が現地入りし、佐藤氏への支持を訴えた。基礎票で大きくリードしている政権与党が”全力投球”したが、安保法案反対の逆風が直撃、安保法案反対派の梅津氏に猛烈に追い上げられた本命・佐藤氏は、ようやく僅差で逃げ切った——これが山形市長選の実態といえるのだ。

▲佐藤氏の応援演説をする遠藤大臣

 与党系候補苦戦の理由もNHKの出口調査から読み取れた。自民支持者の2 割強が梅津氏に流れていた。個人演説会で佐藤氏支持を訴えた大内理加県議は、「支持者から『今回は安保法案があるので佐藤さんに入れられない』と言われた。自民支持者を固めきれていない」と嘆き、現地入りした石破氏に対しても「相手陣営が争点化しているのだから、安保法案に触れて欲しかった」と直後の演説会で不満をぶちまけたほどだった。佐藤氏本人も含め同陣営は「山形市長選と安保法制は関係がない」と一貫して訴えたが、関係は「大あり」だった。実際には安保法制問題は、自民支持者が切り崩される要因となっていたのだ。

▲安保法制には一切触れなかった石破氏

 2番目は、民主党と共産党ら四党が手を結ぶ野党共闘が実現、各党の基礎票をほぼ固めきったことだ。前回の総選挙では、山形一区に民主党と共産党が候補者を立て4万6029票と1万6577票に分散、遠藤氏(9万8508票)に大差をつけられたが、今回は両党の票が合算されて基礎票でかなり追いつくことになった。

 3番目は、公明党支持者(創価学会員)の動きも鈍かったようにみえることだ。先の出口調査では「自民支持者43」に対して「公明支持者は2」と20分の1以下で、数千票程度に留まったとみられる。「梅津陣は創価学会関係者に『動かないで欲しい』と働きかけていた。これが安保法案に反対する学会員のサボタージュを招いたのでしょう」(地元事情通)。

 最後は「支持政党なし」の無党派層において、梅津氏への支持が佐藤氏を上回ったことだ。これも安保法案強行の安倍政権への反発の現われといえる。国会審議の潮目を変えた憲法学者の一人、小林節慶応大学名誉教は約一週間現地に滞在、教え子の梅津氏支持を呼びかけていた。

 今回の山形市長選は、来年夏の参院選や次期総選挙のモデルケースになる。安保法制反対を旗印に野党共闘体制を作り、「自民支持者の切り崩し」や「公明党支持者の呼びかけ」や「無党派層への浸透」をしていけば、自公と互角の勝負ができることを実証した。小林氏提唱の「野党共闘(選挙協力)による”護憲連立政権”誕生」の現実味が一気に増したといえるのだ。

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「山形市長選が証明した「安保法制反対」「野党共闘」の可能性 〜与党候補に猛烈な逆風が吹いた!」への1件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     候補者が二人だったら与党が推す候補は負けたでしょう。それが全てで、国政と市政が云々と云う話をする人が居るとしたらそれは気休めに過ぎない。

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