「安倍さんのおかげで日本中が知りました。『戦後100年』はただ座って、時が過ぎるのを待っているだけでは来ないことを。平和は、僕たち国民がしっかりと握って守らないと、見張らないと、関心がなければ、時の政権のたった一言によって、知らない間に若者が戦争に行かないといけなくなるかもしれないということを」
安全保障関連法案に反対する学生たちからなる「SEALDs」の呼びかけに、多くの国民が立ち上がった。2015年8月23日、安保法制と法案の成立を急ぐ安倍政権に反対するデモや抗議集会が、北海道から沖縄まで全国64ヶ所で一斉に行われたのだ。
東京では、青山や渋谷周辺を練り歩いたデモに飛び入り参加する市民の姿も見られ、最終的には6500人が「戦争反対」の声をあげた。
▲メガホンを持参してコールする若者たち
- デモコース 青山公園 → 外苑西通り → 青山通り → 表参道 → 明治通り → 神宮通公園
福島原発事故を体験した中学生「9条は平和を望んだ先人たちの遺言書」
サウンドカーの上では、若い世代が次々にスピーチし、安保法制廃案や安倍総理の退陣を求めた。
2011年3月に発災した福島原発事故で、ホットスポットと化した故郷を追われ、転校を余儀なくされたというそらさん。大好きなサッカーができなくなり、友達と別れ、これまでの日常を失った。そらさんはスピーチで、70年前の戦争に思いを馳せた。
「原発は、日常や未来、夢を奪うものだと僕たちは知りました。そしてもっと前の70年前、尊い命が奪われ、また奪った第二次世界大戦。この戦争の底知れない悲しみ、苦しみを絶対に忘れないために、この惨劇が二度と起こることのないように、リアルな戦争の恐ろしさを知っている人たちは、あるものを僕たちに残してくれました。
憲法9条。これは、ただただ平和を望んだ先人の遺言書であり、世界に向けた平和へのメッセージ。絶対に破ってはいけない約束です。今、その約束が勝手な解釈によって安倍政権に破られようとしています」
▲そらさんが福島原発事故を経験したのは小学4年生の頃
そらさんは、法案を通したら、「先人にも未来の子どもにも顔向けができない」と話し、続けて安倍総理の退陣を求めた。
「安倍さんのおかげで日本中が知りました。戦後100年をただ座って、時がすぎるのを待っているだけでは来ないことを。安倍さん、残念ですけど、あなたの言う『積極的平和主義』では平和は作れません。あなたには無理です。だけど安心して退陣してください。これからの平和は僕たちが作ります。そして、守ります。しっかり見て、聞いて下さい」
欧米諸国による中東への武力干渉は平和をもたらさない
1時間半ほど続いたデモは、沿道から多くの注目を集めた。「戦争したがる総理はいらない」「民主主義って何だ」などのシュプレヒコールを挟みながら、若い世代のスピーチが続いた。
高校生のちるちるさんはサウンドカーの上から、安保法案に反対する理由を説明した。
▲高校生のちるちるさん、武力による安全保障から抜け出す必要性を訴えた
「まず、この法案は何のための法案なのか、安倍政権は平和のための法案だと言いますが、私はそれは違うと思います。
なぜなら、安保法案が目指しているものは、強いものが弱いものを武力によって押さえつけることによって生まれる安全であり、そんな安全を私は平和だとは思わないからです。現に、アメリカやヨーロッパ諸国による中東の武力干渉は沢山の民間人を傷つけ、残虐なテロ組織を生み、到底、平和をもたらしているとは思えません。
今、私たちは旧来の武力による安全保障から抜け出し、新しい、武力によらない安全保障を作らなければならないと思います。そして、武力を行使しないこと、武力を保持しないことを誓った憲法9条は、世界から見てその先駆けとなっていると思います」
ちるちるさんはさらに続け、若者たちを「利己的」だと批判した、自民党・武藤貴也議員に反論した。
「私はまるで世界の平和のためにここに立って抗議をしているようですが、そんな理由だけで私はここに立つことはできません。
私には自衛官を目指す友達がいて、友達を戦地へ送りたくない、そういう理由があって初めてここに立つことができます。私は自分自身の利益を追求するためにここに立って安保法案に反対しているんです。
それをもし利己的だと言われたら、私は、利己的で何が悪いんだと反論します。私は紛れも無く自分自身のために、そして、未来のために安保法案に反対します」
「安倍政権は自衛隊をチェスの駒のように扱っている」