「中国・北朝鮮への備えは現体制で十分」 ~小林節氏、国民の不安につけ込む安倍政権の妄想を指弾「日本は米国に毅然と対応すればいい」 2015.8.1

記事公開日:2015.8.7取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田)

※8月7日テキストを追加しました!

 台頭する中国は大きな脅威、核兵器を保有する北朝鮮には暴発の恐れがある──。安倍晋三首相が、集団的自衛権の行使を核にした、新たな安保法制の整備を急ぐ理由として挙げるこれらの緊張は、明らかに過剰に見積もられているとの議論が、憲法学者で慶応大学名誉教授の小林節氏によってなされた。

 2015年8月1日、新潟市で行われた市民勉強会「安保法制に反対する緊急市民集会 ~安保法案にダメ出し食らわす!~」。伊藤真弁護士と対談した小林氏は、自衛隊による専守防衛体制と日米安全保障条約を車の両輪とした現行の防衛体制で、中国・北朝鮮の脅威は十分封じ込められると力説。にもかかわらず、米国の要請に従って、自衛隊を米軍の下部組織にしてしまえば、日本国内および渡航中の日本人は国際テロ集団に狙われやすくなる、と警鐘を鳴らした。

 一般社会にも聞かれる、「有事の際、米軍は本当に日本を守ってくれるの?」との不安の声に、小林氏は、日米安保条約は今でも双務的だと主張。「日本は米政府に対し、『安保の契約内容をきちんと守れ』という毅然とした態度を示していれば、それでいい」と強い調子で言った。

 また、安保法案をめぐる反対世論の高まりを受けて、この先、安倍政権がどう出るかについては、「世論の反対が勢いを増しても、思い込みの強い安倍首相は、60日ルールを活用してでも法案を通すのではないか」との見方を示した。

 その上で小林氏は、「そうなっても、今の国民の怒りを持続し、政権交代へ」と訴え、それには野党が団結することが大前提だと強調。「新たな政権を国民の手で誕生させ、今度はその政権が閣議決定で、安保法制を元に戻せばいい」と明言した。

■ハイライト

3分〜 開会/4分〜 平氏挨拶/11分〜 藤田氏挨拶/19分〜 小林氏×伊藤氏対談/1時間42分〜 質疑応答/2時間12分〜 閉会挨拶
  • 主催者挨拶 平哲也氏(新潟県弁護士会会長)/共催者挨拶 藤田善六氏(関東弁護士会連絡会理事長)
  • 対談 伊藤真氏(弁護士、日弁連憲法問題対策本部副本部長、伊藤塾塾長)/小林節氏(慶応義塾大学名誉教授、憲法学)

2014年衆院選での自民党の闘い方を問題視

 「安保法案の審議は舞台を参議院に移したが、これまで誠実な議論が行われてきたとは言い難い」と、冒頭であいさつに立った新潟弁護士会会長の平哲也氏は指摘する。「時の指導者は、いったん権力を握ると横暴になる恐れがある。したがって、国会での法律づくりは、憲法の枠内で行われなくてはならない」と説き、安倍首相には立憲主義を尊重する姿勢が著しく欠けていると非難した。

 そして、国会審議での、安倍首相による安保法案の憲法適合性に関する答弁は、聞けば聞くほど意味不明だとも述べ、「60日ルールを使って法案を成立させたら、それは数の力による現政権の横暴でしかない」と訴えた。さらには、昨年末の衆院選での自民党の戦略にも批判の矛先を向け、「選挙戦では経済政策(アベノミクス)を前面に出し、安保法制は、公約パンフレットでもほんの少ししか扱っていない。新潟弁護士会は、これに大きな疑問を感じている」と口調を強めた。

中国にとって日米は「大切な市場」

 その後に行われた小林氏と伊藤氏の対論は、安倍政権が重ねて強調する安保環境の変化というものが、本当に生じているかに力点が置かれた。

 伊藤氏が「(安倍政権は)今や、集団的自衛権を行使しないと国民の生命と安全を守ることは不可能、の一点張りだが」と水を向けると、小林氏は、まず、北朝鮮について論じた。

 自民党の国会議員らは、折に触れて北朝鮮が持つ核兵器のことを口にするが、北朝鮮は日本を脅しているだけ──。このように、小林氏は言い切る。

 「要するに、『俺に文句を言ってきたら、ただでは済まないぞ』と強がっていられるうちが、あの国にとっては花なのだ」

 米国のシミュレーションでは、北朝鮮が米軍と戦った場合、長くても2週間程度しかもたないという結果が出ている、と小林氏。そのことを北朝鮮自身も、十分にわかっているはずだと言い重ねた。

 いわゆる「中国脅威論」についても、懐疑的な立場に立つ小林氏は、「中国人の価値観が、日本人とはだいぶ異なることは、かつて北京大学で教えていた時に十分感じた」としながらも、中国も米国と戦ってケガをすることを恐れていると指摘。「自衛隊による専守防衛体制と、日米安保条約が後ろ盾になっている日本に、中国は手を出せない」と言明し、尖閣諸島をめぐる中国の動きに、自衛隊がわざわざ武器を構える必要はないとした。

 伊藤氏からは、「中国の軍事力は確かに拡大中だが、『あの国にとって、武力行使が本当に得なのか』という見方が大切だ」との発言があった。今や、中国経済にとって日米が非常に重要な市場である以上、それを失うことになる戦争を、中国が仕掛けるはずがない、との見立てである。

「米軍は本当に日本を助けてくれる?」国民の不安を利用する安倍政権

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「中国・北朝鮮への備えは現体制で十分」 ~小林節氏、国民の不安につけ込む安倍政権の妄想を指弾「日本は米国に毅然と対応すればいい」」への2件のフィードバック

  1. hara toshiko より:

    日本全国での連動を願っています。
    広島の弁護士会は動いてらっしゃいますか?(私は広島なので)
    一般市民はデモに行くぐらいしか反対を表明できません。
    広島の弁護士の方が立っていただけたら、何か一緒にできるのではないかと
    希望がもてるのですが・・・。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「中国・北朝鮮への備えは現体制で十分」 ~小林節氏、国民の不安につけ込む安倍政権の妄想を指弾「日本は米国に毅然と対応すればいい」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/255944 … @iwakamiyasumi
    目覚めた日本人の怒りと知識がこの国を自主独立へと導く。「安倍はいらない!」
    https://twitter.com/55kurosuke/status/629771902362386432

hara toshiko にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です