浅野健一ゼミ企画 2日連続シンポジウム「福島原発事故後を生きる~どう向き合うか」 2012.7.29

記事公開日:2012.7.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・長尾/澤邉/奥松)

 2012年7月28日(土)と29日(日)の2日間にわたり、京都府京都市の同志社大学寒梅館で、浅野健一ゼミ企画 2日連続シンポジウム「国策とメディア―沖縄と福島から」が開催された。浅野ゼミでは「人権と報道」をテーマに調査・研究などのゼミ活動を行っている。

■全編動画
*動画は小出氏講演のみとなります。

  • 日時 2012年7月28日(土),29日(日)
  • 場所 同志社大学寒梅館(京都府京都市)

 今回の企画の初日は、ジャーナリストの西山太吉氏が「戦後日本のなかの沖縄―日米安保・密約とメディア―」という講演を行ない、2日目は「福島原発事故後を生きる~どう向き合うか」というテーマで、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏、元京都大学原子炉実験所助教の海老沢徹氏、MBSラジオ「たね蒔きジャーナル」制作スタッフの亘佐和子氏が講演を行った。2日目の第一部に登壇した小出氏は「思いのたけをすべて聞いていただきたい」と前置きし、「福島原発が映すこの国」という講演を行った。

 小出氏は冒頭で、米国が日本に落とした広島・長崎の原子力爆弾に関して触れ、「米国がウランを加熱させるための濃縮作業につぎ込んだエネルギーは、少なく見積っても50キロトン。広島に落とした原爆の爆発エネルギーは16キロトンしかなく、エネルギー収支でいえば、圧倒的に馬鹿げたことをやった」と批判した。「もともと原子炉は発電のためではなく、プルトニウムを作るための装置。核分裂や再処理の過程でできた劣化ウランや減損ウランは、劣化ウラン弾として中東などで使用される」と語り、「米国は始末に困る厄介なゴミを敵国に捨てた」と表現した。また「原子力発電は約33%の熱効率」と述べて、その非効率性を指摘した。

 福島第一原発事故による大気中のセシウム137の量を政府が発表したことに触れ「広島原爆の168発分になるが、政府の数字は過小評価だ」と批判、「海洋放出した分も合わせると、その何倍にもなるだろう」という考えを示した。さらに、政府の事故後の対応も、「普通の人が1年間に1ミリシーベルトを超えて被曝してもいいと言い出し、放射線管理区域外でも1㎡当たり4万ベクレルを超えてもいいと決めた」と厳しい口調で批判した。また、「今回の事故を引き起こした張本人は東京電力。経済界に君臨し、金をばらまいて政治とマスコミを支配し、原発は絶対に安全だと言い続けて今日まで来た」と語り、東京電力は倒産させるべきと主張した。

 小出氏が講演の中で強調したのは、子供たちのことだった。「子供には原子力を選んだ責任はない。こんな事態を許した大人として、私たちがどう原子力に向き合うのか問われている」と、子供たちを被曝から守るよう訴えた。そして、「旗は振らなかったが、私も原子力の場にいる人間として、皆さんとは違う責任がある」と、忸怩たる思いをにじませた。

 次に、原子力発電に関する電力不足の嘘について、各発電設備容量と最大需要電力量の推移などのデータを示しつつ解説した。日本は高速増殖炉に関して何度も失敗を繰り返し、これまでに1kWも発電していないという。世界の高速増殖炉も、ほとんどの国で中止、もしくは停止状態にある。「すでに高速増殖炉の計画は破綻している。にもかかわらず、計画は5年毎に改定され、いまだに延長している」として、「10年経つと20年先に逃げる夢」と揶揄した。また、こうした計画策定に携わった原子力専門家たちに対し、「皆、刑務所に入れなければいけないと思う」と厳しい口調で批判した。

 なぜ、日本がここまで原子力を諦めないのか、という疑問に対し、小出氏は、核の平和利用の技術がいつでも軍事転用できる点を指摘した。軍事転用への野心は、「核兵器か通常兵器かを問わず、これを保持することは禁ずるところではない」とする政府の公式見解に表れていると言う。そして「原子力技術に平和利用も軍事利用もない」と指摘し、日本が核兵器を保有する危険性について「つい最近も動きがあった」と、具体的な事例を示した。今年の6月20日、政府によって原子力基本法が改定され「我が国の安全保障に資することを目的として」という一文が加筆された。小出氏は「この一文が入ることにより、軍事目的のために原子力を進めることを、正式に政府が表明したことになる」として警鐘を鳴らした。

 最後に「国民には、今後の日本の原子力政策の動向に留意してほしい」と述べ、「日本のマスコミには、事実をきちんと報道するように、まともになってほしい」と求めて、2時間30分を超える講演を終えた。

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