世田谷区議会だけじゃない!? 自民公明の発案で少数会派議員の発言権が大幅削減へ――密室・非公開で押し切られ可決 2015.5.12

記事公開日:2015.5.15取材地: テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・ぎぎまき)

 2015年4月の世田谷区議選で4度目の再選を果たした上川あや区議会議員(レインボー世田谷)が5月11日、世田谷区議会の運用に関し重大なルール変更が起きているとTwitterで発言、世田谷区民を中心に大きな反響を呼んだ。

 世田谷区議会の最大会派である自民党と公明党の発案で、少数会派議員の発言権が制限されそうだと訴える上川議員のツイートは、翌日12日の議員協議会でその賛否が問われるとあって、瞬く間に拡散された。

▲2015年5月10日の上川議員のツイート

 12日、上川議員の呼びかけで世田谷区議会の本会議場に駆けつけた市民の数は約50人。議論の場に居合わせたいと、市民らは協議会の傍聴を求めた。しかし、「非公式」な集会として位置づけられている議員協議会は、これまで傍聴の前例がない。それを理由に傍聴は拒否され、密室の中で採決が取られることになった。納得のいかない市民らは傍聴拒否の法的根拠を求めたが、議員事務局は明確な回答を示すことはなく、残った市民20名ほどが本会議場の外で座り込みを始めた。

 世田谷区中町から傍聴に来たという女性はIWJのインタビューに対し、「急にルールを変えるのはひどい」と憤りを隠さなかった。

 「今までできたことを、なぜ変える必要があるのか。その説明もない。どんな議論がされるのか、聞きたくて来ましたが傍聴もできない。やり方が横暴ですよね。少数意見を潰して多数の声で決めてしまおうというのは、国の動きからも見て取れる。それが、自治体にまでじわじわ及んできている感じがします。小さな声は聞かない、弱者のことは知らないよ、というのと同じではないでしょうか」

 自身も区民だという男性は、会派の人数ではなく得票数で時間配分を決めるべきだと提案した。

 「少数意見の発言を5分や3分に狭めていった先には、発言時間をゼロにするという可能性もあるのでは。どうしても(会議)時間がないというなら、その議員の得票数で割り振るとか・・・。それ以前に、少数の意見を聞こうという度量がなければ、民主主義はうまく行かないですよ」

 確かに、上川議員においては、4月の統一地方選で3位当選、4選を果たしたベテラン議員。さらに、トップで当選した、ひうち優子議員も2009年に民主党無所属連合から離脱した1人会派の議員である。1位と3位という、区民からの大きな付託を得て当選した議員らの発言権が1人会派だという理由だけで狭められることに区民は納得するのだろうか。

 また、男性は今回の案を布石に、少数会派の議員の言論が封殺されるのではとも懸念したが、事実、上川議員によれば、議会の運用を話し合う議会運営委員会の出席者をめぐり、自民党議員からは「一人会派を除外する」という案も出たというのだから、男性の危機感もあながち的外れではない。

▲自民党議員から1人会派を除外するという案が出たことを示す上川議員のツイート

「新しいルールに4年間拘束され、がんじがらめになる」

 14時から始まった議員協議会は約2時間続き、散会後、会議から出てきた議員らに市民が詰め寄り説明を求める場面もあった。しかし、ほとんどの議員はその場をそそくさと去り、残った上川議員や世田谷行革110番の大庭正明議員ら7名が市民の要望に応え、別室で報告会を開いた。

▲議員協議会散会後、会議場の外で上川議員に説明を求める市民ら

共産党・中里光夫区議(以下、中里・敬称略)「少数会派の発言を狭める、排除していくという提案が、11日の各派代表者会議の話し合いの中で、自公の代表者から出てきた。その中で、大庭議員(世田谷行革110番・維新)や私は従来通りのやり方を通すべきだと主張したが、その場で合意は作られずに、今日(12日)の会議で決を採りましょうという流れになった。

 (発言の機会が削減されるということは)少数会派にとっては死活問題で、その提案が出た代表者会議に、そもそも少数会派は参加していない。当事者不在の中で大会派を中心に勝手に決めるのはおかしいということで、私たちは少数会派の意見を聞くべきだと主張した。それで、『中里が少数会派の意見を聞いてこい』という話になったので、私がここにいる少数会派のみなさんに連絡し、意見を仰いだというのが土、日の話。区民にも訴えていこうと情報を発信し、みなさんが知るところになりました」

 具体的に少数会派に所属する議員らの発言権がどう狭められるのか、問題は2点あると中里議員は説明した。

中里「議会の基本的な運営を決めていく議会運営委員会はこれまで、全ての会派からオブザーバー参加を認め、参加した議員は自由に発言することができた。これについて、今後は、3会派ある1人会派に限っては、1会派だけの出席にせよと。他の2会派とは、調整を行なえ、という提案だった。これについては、協議会で賛成多数で採決された」

 後に事務局に問い合わせたところ、議会運委員会での一人会派の参加人数を制限するという案に賛成した議員は49名のうち31人で採択されたという。29年前に「元祖1人会派」として誕生した世田谷行革の大庭議員は、事の重大さを鑑み、起立形式ではなく記名形式での採決を提案したという。

世田谷行革110番・大庭正明議員(以下、大庭・敬称略)「重要な決定だから記名投票でやった方が責任も持てるだろうし、勢いで立ったり座わったりする形ではなく、自分の自覚の元、自分の名前を書いた上で賛成・反対をすべきだと思って提案した。

 ここで決まったルールで議員は4年間ずっと拘束され、がんじがらめになる。今日の決定は世田谷区議会の4年間に、重要な影響を及ぼすんです。

 多数決は多数決だが、そこに導くまでのプロセスでも大会派が得をし、少数会派が損をする形のアンフェアな状況が、取り決めの段階で起きるというのは、何年か議員をやっていると分かる。今回の話はとても重要で、こういうことは、今までもずっと行なわれてきたが事後的にしか伝えられなかった。今はTwitterなど連絡する手段が発達している」

▲議員協議会の後、市民からの要望で開かれた報告会の様子

発言時間制限は布石か?! 質問時間や回数も見直される可能性

中里「もう1つの案件が『発言時間』について。

 世田谷区議会は委員会制を取っていて、各委員会でそれぞれの議案について審議する。予算や決算については予算特別委員会を作ってやるし、常任委員会では分野ごとの議論がされる。各委員会で結論が出た後、本会議で委員会の内容を委員長が報告し、それに対して、意見を述べることができる。

 これまでは、どの会派も1人10分以内、すべての議案に対して発言する機会があるという仕組みでしたが、それが今回、1人会派は3分、2人会派は5分という案が採択されてしまいました」

上川あや区議(以下、上川・敬称略)「1つの委員会に付託されている議案はかなりの数がある。条例案が10本くらいあることも。10本もある中で、それぞれの議案に対し意見を言うとなったら、その論拠を説き起こさなければ討論にならない。

 条例案がどれだけあろうと1人会派は3分間で意見討論をしろと。4人以上の会派についてはこれまで通り10分。少数会派については発言時間をぐっと削った」

中里「少数会派の発言の場を奪い取って行った。これを提案、推進してきたのは、自公です。これは、議会の自殺行為なのではないかと思います」

上川「懸念しているのは、自公は今日の協議会で議論にならなかった『質問時間の回数』と『質問時間』についても変えていくべきだという文書を出している。議員の質問権というのは、議員の核心的な活動のベースになるもの。回数と発言時間についても、今後は変更を加えていこうという腹積もりは、自公の文書の中でも見て取れます」

▲市民からの質問に答える中里光夫議員(左)と上川あや議員(右)

発言時間削減の論拠とは?

 発言時間を削減する理由は何なのか。自公議員から論拠は示されたのかを市民らが尋ねると、大庭議員が回答。また、非公式な議員協議会で採択された2案はいつ最終決定するのかなど、市民からの質疑は相次いだ。報告会の後、IWJは上川議員にインタビュー。上川議員は「議会制民主主義の基本が生きている議会だと高く評価してきたのに」と過去12年間の議員経験を振り返り、コメントを寄せた。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページより御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です