以下、飯田氏の発言部分の文字起こし
飯田能生氏「NHKで、一応肩書きはチーフプロデューサーという肩書きになっていますが、飯田と申します。
私が何をやっているかというと、もともとNHKには記者で入っていまして、まあ、今も記者畑の人間です。
チーフプロデューサーというのは記者じゃないような肩書きに聞こえるんですけど、要は冷静に考えれば当たり前で、記者って管理職になったり、出世したら、なんて言った呼称があるのって言ったら、記者は記者でしかないんで。
まあ、それを管理職と一般職の記者と区別するために、うちの会社の場合、そこにチーフプロデューサーとか、チーフディレクターという肩書きだけ与えて、この人は一般職じゃないのよ、という区別をするためのもので。プロデューサー的な何かを特別やっているわけではありません。
で、私はこの会社に入って、一番最初に入った任地は福島でして、実は福島原発をライフワークのようにして取材していました。今から27、8年前になりますが。その頃は、まさしくNHKの中では、皇室と原発はタブーだと。
これ、滅多なことで取材するなと、ましてや批判的な番組は作るなと言うことを、新人時代さんざん言われました。もし、取り上げて、扱うならば、きちんとした客観的な証拠を集めて、理論武装をして、どこからどういう圧力がかかってもですね、きちっと答えられるだけの反論できる材料を集めてからかかれということで。実は、私が行った当時、長年福島放送局って、原発を取材、原発の番組を作ったことがなかったんです。
それを、一番最初に、実は、番組を作るのに携わったのは私でして。で、その時はさすがに組織的な抵抗も大きいので、被曝問題とか、原発の安全性という大上段に振りかぶったテーマじゃはなくて、「地域経済と原発」っていう切り口で接近して行ってまあ、「ばら色の夢」と称してやってきた原発が、この20年、30年の間に、豊かさをもたらしたのかという観点から、実は45分番組を2本くらい作りまして。で、その後30分を作ったということで。
実はそれを皮切りにですね、被曝労働の実態まで行っちゃうんですけど。何本か私が在任中に作りました。
事程左様にですね、皆さんNHKというと、ややもすると、国営放送という揶揄をしたりですね、される方もいて。
ネットワークから見ていても、まあ、どっちかというと革新的な立場の方なのかなと思うような人なんかでも、「もう、あれはいらないから、偏っているから潰してしまえ」、という声が大きいんですが。
実は、中で地道に努力をすれば、理屈が通っていれば、きちんとした番組を作れるシステムが、まだかろうじてあるです。で、そこは確かに、狭き門なんですけど、きちっとした取材の積み重ねによって、まだ番組が作れる。
だから、実は震災直後も、結構、皆さんご覧になったか分からないですけど、震災に関する番組ですとか、原発事故に関する番組ですとか、NHKは実は良い番組を作ったり、あるいは、海外から取り寄せて放送しているんですよ。
で、ぜひそういう部分を是非見て頂きたいと思うんですが、そうじゃない、国の政治の部分の動きが最近、クローズアップされて。で、あの低俗な会長がトップに据えられて。
いや、僕もね、そんな公費でカラオケに行けるんだったら、何ぼでも行きたい。そんなこと、できるわけがない。そういうことをする人がトップにいる一方で、今、いろんな、政府、自民党からの締め付け、圧力というのが、僕は実は中にいると見えていないんです。
これ新聞報道やテレビ報道で、外部のメディを通じて、「えっ、そんなことがあったの」と、知ることが多くてですね。そういうものを通じて、どんどん、どおりで、自分の身の回りが、生活しづらいな、仕事しづらいな、という部分がじわじわ出てきているのを感じておりまして。
で、このままではいけないだろうと。ですから、今回の署名も、そう言う意味では、NHKの人間というよりは、NHKの良い部分を残したい一視聴者として署名しなければいけないじゃないか、という部分も実は半分あってですね。そういう思いで署名した次第です」
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(昨年末衆議院選挙前に安倍総理がTBSに生出演した際に、アベノミクスに対する街声VTRに対して、「これは番組が意図を持って作った不公平な内容だ」と不快感を示した件について話を振られて)
飯田氏「さっき出たテレビの中の公平という話をちょとだけさせてもらうと、やっぱり街頭インタビューというのは、すごく作っていて苦労するところなんですね。
て言うのは、自分の皮膚感覚で、当然、問題がTPPのこともあれば、消費税のこともあるし、年金問題のこともあるし、まあ色んなテーマで街頭インタビューをすることがあるんですけどまあ、そのときの皮膚感覚で、世論はこう言う意見のほうが多いだろうと、まあ、これは反対する人が多いだろうって、取材する本人もわかっているんですね。
で、街頭出てみると、まず街頭インタビューって言うのは、答えないっていう人が圧倒的に多いですね。まず、これでどんどん逃げていっちゃう。これ、今、半ば強制的に行われている、選挙の後の出口調査ってやつに比べてもですね、街頭インタビューのほうが気軽に拒否されるんですね。
こっちが気軽に聞いている分、むこうも気軽に拒否できちゃうんですけど。でも、そうは言っても、なんとか昼のニュースに入れなきゃいけないと思って、渋谷駅前に出てった記者は、一生懸命、駅前歩いている人に聞いて回るわけですよ。
そうすると、このテープ40分回ってたら、これ、聞くだけで40分かかって、編集できないだろう、っていう時間があるので、やっぱり一番最後、けつかっちんのところで、生放送、ニュースに間に合わせるために、編集時間も加味すると、会社に戻らなければいけない時間というのも、おのずと決まってきてしまう。そうすると、いつまでも粘れない。
そうなると何が起こるかというと、本当にあんなにあの記者、朝から行っていたのに、片手で数えられるくらいしか、実際はインタビュー撮れないと。それに、せっかく捕まえた人には、なんとか放送で使えそうなことを喋ってもらいたいもんだから、長々聞いちゃうんですよ。
長々聞いちゃうんだけど、でも、何人か並べると、どうせ使うのは10数秒とか、せいぜい長くて20何秒。一人で30秒っていうと、街声としては長いということになってしまう。そんなことをやって編集をしているとですね、実は、反対意見と賛成意見、平等に並べると、その同じ数を並べるということは、そもそも不可能だし。
同じ数を並べるということが、平等なのかということもあるし。編集現場の人たち、まあ、これは編集マンというのは外部スタッフですので、自分達が言われた通りに切るしか、なくなって来るんですね。最後に。で、彼等凄く悩むわけですよ。で、そうすると、ぼくなんかがしゃしゃり出てって、「これと、これと、これ使って、こういうふうに並べれば、3人でいいよ」って。「反対、反対、賛成って。だってそれ以上いないんだから。だって、しょうがないじゃん」って、僕はもうOKを出しちゃう。
でも、まあ、反対の人が2人いて喋っている分、尺はなるべくコンパクトにして、最後一人、賛成の人は長めに喋ってもしょうがないかなあ、くらいの匙加減で、いいじゃない、っていう感じでGOサインをだそうとすると、そこに政治部のデスクがやってきて、「俺にも見せろ」と。
それから、社会部のデスクもやってきて、一応社会部のデスクの了解も欲しいと。そんなことをやって、ああでもない、こうでもないとうことをやって、「もうすこし違う言い方しているところないか」なんて言って、また編集しなおして、結局放送ぎりぎりになっていくという。
だから、何が言いたいかっていうと、僕等非常に平等にやりたい、公平にやりたい、という現場の意識はあるんだけど、最後時間に追われている中で、だんだん何が公平なのか、数の問題なのか、時間配分の問題なのか、じゃあ男女は、年齢層は、どこをどう散らばすのが平等なんだよっていうと、テレビの限られた時間のなかで、街声なんていうのは、本当の意味で平等なんてないんじゃないかという。
そんなこと厳密に考え出したら、何が公平なのかなんて答えはないわけで、実態として、反対の人が多かった、反対の人多く使う。賛成の人少ないんだから少ない。これが、一番公平なんじゃないかと、僕は思うんですけど、なかなかそれはそうも言えない。
「いや、反対意見もう一人くらいないの?」っていうのは、まあ、いろんなとっから始まっちゃうんでね。そんなところで、街の声を巡って喧嘩してもしょうがないので、こっちも押し込むだけ押し込んで、適当な落としどころを探るというのが、現場の実態なんですけれども。そういうものがテレビにはありますよって話しなんですけれど。
あと、もともと今井さんがおっしゃってた、何か発言したときに問題になった方の救済をどうするのかという部分なんですけど。僕ね、残念ながらテレビ局って、テレビで働いている人間はジャーナリストなのかっていうと、みんなが皆ジャーナリストな訳ではないんですね。
たとえば、受信料を集めている人は、ジャーナリストなのかと。スタジオで、スタジオカメラをやっている技術の方ですね、これはジャーナリストなのかと。音効さんはジャーナリストなのかと。いろんなことを考えていくと、実はジャーナリストっていう概念、表現者っていう概念自体も非常にあいまいなところがあって。
そういう会社で働いているからということで、この声明に加わってくださる方がいらっしゃれば、それはそれで、大いに結構なことなんですが。でも、その実態として、彼等が、ジャーナリストとしての使命を感じて、日々生きているのかというと、それはそうでもない訳ですよ。
でも、「それはそうでもない訳ですよ」と、言いつつですね、じゃあ、記者だったらそういう使命感持っているのっていうと、記者もだんだんサラリーマン化してきているところが、多分あるんだろうと。若手の人がなかなか響かないとか、若者がこれ(メディアが自粛・萎縮している現状)が当たり前と思っているという懸念がでていましたけれど。
まさに、戦後70年とは言いませんけど、おそらくここ2、30年をかけてですね、徐々にテレビ局の記者のサラリーマン化が僕は進んでいるんじゃないのかなっていう気がします。それと言うのも、何で俺達だけがそんなリスク追うのという部分と、そこまでつっぱねなくても生きていけるじゃん、給料もらえればいいんだからっていう奴が増えているのかな、と。
すぱっと、クビになれば、喧嘩もできるけど、クビにならないで、地方に飛ばされて、でも、それも左遷ではなく人事異動だと言われた時に、「この野郎」と思いながらも、「異動だから、あまり楯突いてもなあ」ていう気分で流されちゃう。
そういうところから、恐らくテレビ局でこの署名に参加する人が少ないというのは、僕なんとなくわかる気がするんですね。そういう人が多いんじゃないのかなと。ただ、一方で、問題意識を持っている人は、あくまで問題意識を持っているはずですし、署名する、しないというのは自由ですから。これをわかっていて署名していない人も大勢いらっしゃると思いますし。署名する僕なんかのことを、冷ややかに見てないかもしれないけど、『危なっかしい奴』と思って見ている人間もかなりいるかもしれない。
でも、、今、時代はそんな状況じゃなくて、今ここでモノ言わなかったら、どうするのか。会社の中で圧力受けて、会社クビになるよりも、はるかに恐ろしいものが僕には見えているから、だから、僕は署名もするし、発言もするし。
この場に出てきたことを、例えば後日なんか言われても、申し開きをしますよ。『だって、あなたは、なにも言わずに、このまま通り過ぎると思っているの?』って。それは、報道局長だろうが、会長だろうが、言ってやります。今、そのぐらい危機的な状況になって来ていると思うんで。
問題は、そういう職員が、『沈黙の職員』が大勢いるんで、そういう人達と、どうやって、まずは社内で連帯していけるのか、というところを本当に早急に模索していかなければいけな、ということを感じています。
今井一氏「NHKの労組は今、どんなふうな動きがあるんですか?」
飯田氏「NHKのユニオンショップの日放労というところは、今のところ、僕は色んな紙切れを見ているですが、表立って、これっていう動きは、はっきり言ってしてないですね。勉強会と称して、外部の講師っていってもNHKのOB、池上さんですけど、なんかを呼んで来て、話をさせる。
でも、それって言うのは池上さんに話をさせているのであって、自分達で主体にモノは言っていない。で、読んでいると、「おっ池上さん、なかなか詳しいな、いいこと言ってるのかな」っと思いきや、実は彼も非常にうまいところで逃げていて、決してそこはうまくやりなさいよ、という話で終わって、かく闘うべきだという話はあまりされないですね。
盛田隆二氏「私もね、NHKの労組が今回どういう動きをしているかと思って、調べたくて、ホームページみたんだけれど、すんごい大変だよねどんどん、リンク先たどって、最後にPDFファイル開いて、そうすると池上さんとのインタビューがやっとでてくるという。隠しているとしか思えない。労組はあれは公開してるって、言っているよね?」
飯田氏「でも、もう、こっそりおいている。人の目に触れない様にしているようですよね あれはね、後悔(公開)しているのかもしれないですね(笑)」
古賀茂明氏「NHKとの方とも労組の池上彰さんのやつ(※)をですね、随分時間をかけて、散々中で議論をして、どうやってだそうかと悩みに悩んで、絶対見つからないところに置くっていうことになったという話しを聞きました。
私は最後のところのURLをもらったので、ぱっと行けたんですけど、もう一回ホームページの最初にいったら、絶対わからないですよ。絶対わからない。だって、要するに色んなところにクリックするところがあるんだけど、おそよそれが載っているのかなって言うところがないんですよ。だから、全部見ないと出てこないですね」
参考:上記で話題になっている池上彰氏のNHK職員に対する講演
勇気あるこの方も!!!
続々とスタンディング!!!
依存心から抜けだして
自分の意識で立つことを
《スタンディング》という