「これだけでは、国が立証を十分尽くしているとは言えない」 黒塗りの証拠に裁判官も苦言──鮫川村の焼却炉「爆発」「同意書偽造」問題 第4回審尋後の記者会見 2015.2.13

記事公開日:2015.3.13取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

※3月13日テキストを追加しました!

 「国は、焼却炉建設地の賃貸者12名の同意があるとして、契約書を提出したが、12人の名前はすべて黒塗りになっていた」──。坂本博之弁護士は、今回は裁判官もそれに不服な様子を見せた、と話した。

 鮫川村の指定廃棄物焼却炉とは、環境省が福島県鮫川村青生野地区に建設した実証実験炉である。8000ベクレル/キロ以上の指定廃棄物28トンを含む、総量600トンの放射性廃棄物を焼却するものだが、近隣住民への十分な事前説明がなく、地権者の同意書が偽造されており、さらに稼働した焼却炉がトラブルを起こして爆発、その事故の検証もされていないなど、多くの問題が指摘されている。

 2015年2月13日、福島県鮫川村の指定廃棄物の仮設焼却炉をめぐって、地権者の1人である堀川宗則氏が、操業差し止めを求めた仮処分手続きの4回目の審尋(しんじん)が、福島県郡山市の福島地裁郡山支部で行われ、審尋後に郡山市役所内記者クラブで申し立て者や代理人らが記者会見を行った。

 鮫川村の焼却施設が稼働して間もない、2013年8月29日に起きた爆発事故については、安倍総理の名義で、爆発を認めた政府の文書があるにもかかわらず、この審尋で、環境省は爆発を認めようとしない。

 坂本弁護士は、「爆発した、しないという、言葉の問題だけではなく、これは消防法にも関わってくる問題だ。そもそも、消防への通報が約1日ほど遅れている。その間に証拠隠滅を図った可能性もある」と指摘した。

 環境ジャーナリストの青木泰氏は、「国は、爆発は今回の裁判に関係ないと主張しているが、これは大いに関係する。また、爆発事故を認めず、その検証も事故対策もしないまま、今も危険な施設を稼働させている」と批判した。

記事目次

■全編動画

  • 日時 2015年2月13日(金)13:00〜
  • 場所 郡山市役所記者クラブ(福島県郡山市)
  • 主催 鮫川・汚染問題を考える会

すでに焼却されている高濃度指定廃棄物

 郡山市議会議員の蛇石郁子氏が司会役となり、記者会見が始まった。まず、郡山市議会議員で、鮫川・汚染問題を考える会の共同代表である駒崎ゆき子氏があいさつに立った。

 鮫川村の仮設焼却施設建設地の地権者の1人、堀川宗則氏は、自分が承諾していないにもかかわらず、同意書を偽造され、焼却炉が稼働していることについて、早期撤回を求める仮処分申請をしている。駒崎氏は「環境省相手に1人で闘っている堀川氏の苦労は計り知れない。私たちは、しっかり支援していく」と述べた。

 さらに、「鮫川村の焼却炉は実証実験施設で、まだ、結果がきちんと出ていない。にもかかわらず、福島県内には、同様の焼却施設がすでに18ヵ所もできていて、これから川俣町にも建設される。郡山市日和田の県中浄化センターでは、すでに高濃度指定廃棄物を焼却してしまった。放射能を拡散する焼却場は、やめてもらいたい」と続けた。

 次に堀川氏が、「第4回ということで、今日は、裁判官から裁判をする意志が、少しだけ見てとれた」と語った。続いて、坂本弁護士が、「本日(2月13日)11時、福島地裁の郡山支部において、鮫川村焼却施設操業差し止め仮処分の、第4回目の審尋が行われた。前回から2ヵ月ぶりだ」と述べた。

爆発は認めず、黒塗りの「証拠」で強弁する環境省

 坂本弁護士は、「前回、こちらから出した書面について、国が回答してきた。ひとつは、2013年8月29日、鮫川村の焼却施設で爆発事故が起きたこと。これについては、山本太郎参議院議員が提出した質問主意書に対し、安倍総理の名前で爆発を認める内容の答弁書がある。

 しかし、この仮処分手続きの中で、国側が出してきた書面では、爆発事故という表現を一切していない。爆発事故を誠実に認めないようであれば、国には指定廃棄物の焼却炉を適切に運営する能力がない、と私たちは主張した」とし、さらに、次のように言い継いだ。

 「爆発した、しないという、言葉の問題だけではなく、これは消防法にも関わってくる問題だ。そもそも、消防への通報が約1日ほど遅れている。その間、彼らは相談し合って証拠隠滅を図った可能性もある。重要なことなので、これについては重ねて書面を提出した」

 もうひとつの問題として坂本弁護士は、「焼却炉の建設地は、農地であり、共有地だ。その農地を一時転用して焼却炉を建てることは、民法252条でいう処分行為にあたり、所有者全員の同意が必要。しかし、前回、国は『これは管理行為なので、過半数の同意でできる』と主張してきた」と話す。

 「国は、前回審尋で、賃貸借契約書を証拠として提出したが、賃貸者12名(全員で18名。うち2名反対、4名死亡)の名前すべてを黒塗りにしてあった。それでは、同意の証拠にはならず、国の証明責任が成り立たない。それについて国は、『そもそも、堀川氏は12名の同意は認めていたのだから、今あえて国が証明する必要はない』という」と坂本弁護士は説明し、このように続けた。

 「しかし、堀川氏は認めていたわけではなく、知らなかったのだ。私が今日、それを指摘しようとした矢先、裁判官のほうから、『これだけでは、国が立証を十分尽くしているとはいえない』という発言があった。黒塗りを外せ、とまでは言わなかったが。国側は、持ち帰って検討する、とした」

 次回は、4月15日11時より、第5回審尋陳述が再開される予定である。

方針がくるくる変わる鮫川村と環境省

 焼却施設から2キロ離れたところに住む人は、今回、国が提出した書面に、「本件、埋設場所は、鮫川村が汚染土壌を埋設するために利用している土地であり、債務者(国)は、本件施設で排出された焼却灰等の保管に利用しているわけではない」と書かれていることを知って、非常に驚いたという。

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