沖縄防衛局は1月10日~11日の未明にかけて、辺野古のキャンプ・シュワブに資材やミキサー車などの重機の搬入を行った。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する住民らは、ゲート前で24時間体制の抗議行動を続けた。
この緊迫した状況の中、1月12日(月)に第三回目となる「沖縄の地鳴りを聞く」が開かれ、沖縄大学名誉教授の桜井国俊氏が「辺野古アセスメントの不当性」をテーマに講演した。
(取材・記事:IWJ・松井信篤、記事構成:IWJ・安斎さや香)
沖縄防衛局は1月10日~11日の未明にかけて、辺野古のキャンプ・シュワブに資材やミキサー車などの重機の搬入を行った。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する住民らは、ゲート前で24時間体制の抗議行動を続けた。
この緊迫した状況の中、1月12日(月)に第三回目となる「沖縄の地鳴りを聞く」が開かれ、沖縄大学名誉教授の桜井国俊氏が「辺野古アセスメントの不当性」をテーマに講演した。
■ハイライト
アセスメント(以下、アセス)とは、事業者に対して自主的環境配慮を促すための性善説に基づく制度。大規模事業を行なう前に事前に環境に与える影響について調査・予測・評価を行ない、開発許可を持った自治体に提出する仕組みだ。桜井氏は、国が実施したアセスは、アセス法が求める民主的手続きを踏んでいないと主張する。
その理由として、1.方法書(設計図)の段階では許されている、市民による懸念意見の表明などの洗礼を受けずに、大掛かりな環境現況調査を実施していること、2.記載されるべき内容(飛行機の種類など)が記載されていないこと、3.環境保全の見地から意見を有する者の意見陳述権を侵害していることをあげている。しかし、実際に辺野古・違法アセス訴訟を行なったが、原告が主張する意見陳述権について、裁判官は意見陳述は権利ではないと判断。最高裁で上告が棄却され、原告側が敗れている。
桜井氏は、事前のジュゴン調査に問題があると指摘し、結果の考察が完全に間違っていると主張。事前調査で辺野古海域の環境を大幅に撹乱してジュゴンを追い出し、「辺野古沖ではジュゴンは観察されない」という現況を作り出すための調査ではないかと分析した。
しかし、事前調査後の2014年7月には、辺野古でジュゴンの食跡が確認されている。実行可能な範囲で最大限の措置を講ずればよしという評価基準こそ問題で、ジュゴンはどうなるのかが問われていると桜井氏は語る。さらに、海洋生物学者の粕谷俊雄氏の言葉、「ジュゴンは限りなく絶滅に近い。したがって頭数を増やすことが先。頭数が増えてきた時に新しいジュゴンが生息可能な場所を極力保全する。これしかない」という発言を桜井氏は紹介した。また、海上自衛隊を投入した事前調査で使われた調査機器によるサンゴの損傷も確認されているという。
アセス制度について、国際影響評価学会(IAIA)の会長を務め、現在、千葉商科大学教授・東京工業大学名誉教授の原科幸彦氏は、アセス制度が科学性と民主性の2本柱でできていると述べている。これについて桜井氏は、辺野古・違法アセス訴訟が上告棄却されたことに関し、民主性を無視するがゆえに科学性が損なわれ、アセス制度の2本柱が破綻していると指摘。
具体的には、方法書がごく限られた場所でしか閲覧できず、コピーができなくなっていた。また、方法書の次段階である調査・予測・評価をまとめた準備書に至っては、当初、わずか3冊で延べ5400ページにもおよぶ書類をバインダーで閲覧するようになっていた。後に、住民がPDFでの閲覧を要求して、それが可能となっている。加えて、アセス終了後に、後出しで弾薬搭載エリアや複数のヘリパッド、係船機能つき護岸など、方法書にはなかった施設が、準備書で追加されていた。
桜井氏は、アセス制度が本来、持続可能な社会を作る上で極めて重要な人類共通の手法であることから、これに反する「辺野古アセスはやり直すべき」と述べた。
翁長雄志沖縄県知事は、1月中旬にも埋立承認に対して法的な瑕疵がないか、検証チームを立ち上げるという。チームによる検証後に瑕疵が立証できれば、辺野古埋め立てを承認したという事実を「取り消し」、なければ「撤回」を視野に検討する。この検証チームには、桜井氏も参加するという。
(…会員ページにつづく)