PC遠隔操作事件の第20回公判が11月27日、東京地裁で開かれ、公判後、佐藤博史弁護士らによる記者会見が司法記者クラブで行われた。今回の公判で、弁護側による弁論、片山祐輔被告の意見陳述は終了し、来年2015年2月4日に判決が言い渡されることとなった。
佐藤弁護士は、公判の内容を説明するとともに、検察の見解や警察の捜査に疑問を呈し、刑事司法が抱える問題点を明らかにした。
(IWJ・前園由美子)
特集 PC遠隔操作事件
PC遠隔操作事件の第20回公判が11月27日、東京地裁で開かれ、公判後、佐藤博史弁護士らによる記者会見が司法記者クラブで行われた。今回の公判で、弁護側による弁論、片山祐輔被告の意見陳述は終了し、来年2015年2月4日に判決が言い渡されることとなった。
佐藤弁護士は、公判の内容を説明するとともに、検察の見解や警察の捜査に疑問を呈し、刑事司法が抱える問題点を明らかにした。
記事目次
■ハイライト
※以下、発言要旨を掲載します
佐藤博史弁護士(以下、佐藤・敬称略)「本件の中で一件だけ、JAL事件は、ハイジャック防止法が適用されています。ハイジャック防止法は、法定刑が4条ですけれども、1年以上10年以下の懲役ということになっておりまして、処断刑という法定刑を基に刑の加重等を行って計算する。
この範囲内で判決を言い渡すというのが処断刑ですけれども、それが懲役30年ということになってしまったんですね。本件では。その中で検察官は懲役10年を求刑したことになるんですけれども、業務妨害罪というのは、懲役3年以下の刑です。
JAL事件というのは、平成24年(2012年)8月1日に行われたものなんですけれども、被告人が全刑を終えて出所したのが、その5年前の平成19年(2007年)8月6日だったんです。8月6日でしたので、8月1日ではなく一週間後にJAL事件を行ったとすると、再犯ということにならなくて、再犯加重はなされないんです。その場合はですね、仮にハイジャック防止法が適用されたとしても、懲役20年以下になって、いずれにしても二つの点で問題があったということなんです」
佐藤「ハイジャック防止法が適用されて、検察官はその法律が予定する中でも最も重い類型に属する犯罪だと決めつけた。
みなさんも本件がハイジャックという航空機をコントロールするというのを目的とした、あるいはテロの目的で行われた事件でないということは、お分かりだと思うんですけれども、ちょっとそれは言い過ぎじゃないかと。
実際にハイジャック防止法4条の事件は、今までないんですけれども、1条が適用されて、実際に航空機がハイジャックされた事件との比較でも、本件は非常に重いんじゃないかという主張をしました」
佐藤「本件の特徴は、踏み台にされた人が6人いるわけなんですけれども、その人たちのパソコンIPアドレスという自分自身の住所にあたるものを使って、脅迫メールが送られたというのが特徴です。警察は、このIPアドレスでパソコンを突き止めて、その使用者6人のうち4人を(誤認)逮捕した。そのうち2人に虚偽の自白をさせたという事件です。
今では遠隔操作による脅迫メール事件が、本件で実際に存在するということが分かっていますので、自分のIPアドレスで脅迫メールを送る人なんているはずがないないわけですので、そんな事件は起こりようがないわけです。
ところが本件の当時は、そういうことがあるというふうに、サイバー犯罪を専門にしている警察官が知らなかったために、IPアドレスを決め手にして捕まえてしまったわけです。
実は横浜のCSRF事件というのも、その事件ですけれども、彼はGさんが横浜事件で逮捕されたということが報じられて、すぐ横浜市のホームページに告白文を送ったということを犯行声明文に書いてます。
実際、それは見つかっていないわけですけれども、彼は法廷でも実際にしたということを言いました。Gさんが逮捕された時点で、告白文を警察が見つける、もしかしたら見つけてたのかもしれませんけれども、見つけたとすると、遠隔操作されてIPアドレスによってメールが送られるという犯罪があるということを、警察が知ったことになりますので、それ以後のiesys事件でもそういうことにならなかった、というふうに考えるべきです。
しかも、次に行われたのが大阪事件ですけれども、これは皆さんもご存知のように、Aさんの名前で脅迫メールが送られているわけです。
Aさん自身『そんな馬鹿なことをするわけがないじゃないか』と言ったって、警察は『あなたのIPアドレスで送られているから』って捕まえちゃったわけです。しかも起訴しているわけですよ。
Aさんの名前をメールに書き込んだのも、もちろん片山被告です。そういうことに警察が気づかなかった。
検察官は、犯行声明メールというのは、警察が3人を釈放した後のことなので、3人の濡れ衣を晴らすことには何の役にも立っていないと説明して、結局、被告の情状には関係ないと言ったんですけれども、実はそうではなくて、IPアドレスを使って遠隔操作されて脅迫メールが送られるという、警察が知らなかったこの事件ということについては、被告人が教えたために、全部についての冤罪が分かった。そのことを正しく検察は理解していない」
(…会員ページにつづく)