「僕らが奴隷にならないための闘いだ」 ~アーサー・ビナード氏、憲法を語り集団的自衛権を斬る 2014.11.10

記事公開日:2014.11.15取材地: テキスト動画
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(IWJ・薊一郎)

 「ニッポンの武器を買いましょう!」と題された詩人アーサー・ビナード氏による講演会が11月10日、日本消費者連盟の主催で開かれた。

 憲法をテーマにした今回の講演で、ビナード氏は、日本語の言葉の使い方の観点から、安倍晋三政権による集団的自衛権行使容認の閣議決定を分析。憲法の本質を語った。さらに、日本国憲法およびアメリカ合衆国憲法が、それぞれの政府により、どのように骨抜きにされようとしてきたかを、時にユーモアをまじえて語った。

 なお、日本消費者連盟は同日、ビナード氏を含む呼びかけ人らによる「消費者・生活者9条の会」を立ち上げると発表した。

■ハイライト

「豊かな笑いで怒りを吹き飛ばしたい」

 講演会開会の挨拶に立った日本消費者連盟顧問の富山洋子氏は、「日本を戦争する国」にしようとする政府の姿勢を批判し、「我々は怒りに燃えている。豊かな笑いで怒りを吹き飛ばしたい」と、ビナード氏の講演へ期待をよせた。

「中東では兵器産業が熊手で利益をかき集めている」

 ビナード氏は冒頭、タクシー内のダイエット広告を材料に、「(今の経済は)消費者が悪循環にはまって抜けられないからくりができている。消費者は経済動物として扱われているが、これは世界の兵器産業についても同じ構造だ」と指摘する。

 「ダイエットをすればリバウンドし、またダイエット用食品を売ることができる。同様に、世界中に武器を売れば、暴力の連鎖により、もっと武器が売れる。

 米国はISへの空爆を開始した。米国を中心とした兵器産業は、『熊手』で利益をかき集めている状況だ。

 日本も武器を売っていこうとしているが、すでに今ままでも部品を米国企業に提供している」

 ちょうどこの日、11月10日に開催された酉の市で売られる熊手を使ったユーモラスな表現で、ビナード氏は安倍政権が進める海外への日本製武器輸出を批判した。

集団的自衛権行使容認により「安倍政権は徹底的に線引きを消そうとしている」

 「歯止め」という言葉について、ビナード氏は、「線引き・歯止めを大切にすることが日本語・日本文化の特徴」だと主張する。その例として、12年でひとめぐりする干支、土足で家に上がることを嫌うこと、年末年始・正月について、日本と米国とを比較しながら説明した。

 ビナード氏は、こうした線引き・歯止めを持つことを大切にする日本語・日本文化の特徴を、安倍政権は消そうとしていると主張する。

 「安倍政権の現在の最大の使命は、(日米間等の)線引き・歯止めを徹底的に消し、2度と線を引けないようにすることだ」

 ビナード氏はこう語り、集団的自衛権行使容認の閣議決定を以下のように分析した。

 この閣議決定の正式名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」だ。

 ビナード氏は、この名称の中に「切れ目のない」という文言が入っていることを指摘した上で、本文を読み上げた。

 「日米安全保障体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、我が国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠である。その上で、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くとともに、国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためには、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備しなければならない」

 ビナード氏は、この文言で政府が日米間の「切れ目」、つまり境界線を消そうとしていると分析し、「もっと徹底的に境界線を消そうとしている」と続ける。

 「警察機関と自衛隊を含む関係機関が基本的な役割分担を前提として、より緊密に協力し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための態勢を整備する」

 ビナード氏は、本文のこの部分をもって、政府は「警察と軍隊の境界線を消そう」としていると指摘。また、「アメリカでも市民に対して警察の代わりに州兵が出動するなどして、70年間ずっとやってきたこと」であると説明し、日本が米国に追随しようとしている一例として示した。

 さらに、有事と平時の区別、地理的・空間的境界線も撤廃しようとしているとビナード氏は続け、「武力攻撃に当らない侵害に対しても、遠い外国でも切れ目のない」自衛隊による米国の戦争への協力を可能にしようとしていると分析。「こうなると、(日米政府は)やりたい放題、何でもできる」ようになると強く警告した。

「憲法とは、権力に歯止めをかけ、権力の暴走を止める力だ」

 ビナード氏は、「憲法はたくさん切れ目を作ることで、市民が力を発揮できるようにしている」と憲法の役割を説明する。

 「日本国憲法は、約200年前にできた合衆国憲法よりも多くの切れ目を持っている。一番鮮やかではっきり引かれた線は、戦争を放棄し、交戦権を否認した第9条だ。

 憲法とは文章ではない。権力に歯止めをかけ、権力の暴走を止める力、概念だ」

 ビナード氏は、集団的自衛権行使容認の閣議決定により、日本国憲法の歯止めがなくなり、「切れ目のない日米同盟」となることに強い懸念を示した。

「トルーマン政権のやったことと全部そっくり」

 「アメリカで最後に憲法が機能したのは1941年だ」とビナード氏は語る。その年、日本軍による真珠湾攻撃の後、米国世論が戦争容認に大きく傾き、議会は宣戦布告を決議した。

 その後、トルーマン政権による1947年の国家安全保障法により、「憲法はゴミ箱行きとなった」とビナード氏は説明する。

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「「僕らが奴隷にならないための闘いだ」 ~アーサー・ビナード氏、憲法を語り集団的自衛権を斬る」への2件のフィードバック

  1. yamachan より:

    ビナード講演はいつも新鮮な驚きを感じる。さすが詩人!日本語のセンスが日本人以上に鋭い。終わりごろの質問会の中で、議会傍聴し政治を監視し情報を流すことが、これからの日本の光になると。団塊の世代は会社世界から抜け、自由な時間があるのだから、このボランティア活動は最高!何しろ自分のためでなく社会や平和を守るという目標ができる。それに、とてもぼけている暇はない。学生たちがSASPLというかっこいい運動を始めた。彼らが、「民主主義を今から始めればいいじゃん」という。団塊の世代は彼らを後押しできる。なにしろ大学改革を唱え、大学紛争を起し、仕事についていた時は、日本の繁栄をいもたらした世代。団塊の世代は別名「革命の世代」という。経験豊かな団塊の世代が議会傍聴と請願そして、情報発信をすれば、日本は絶対変わるだろう。団塊の世代は立ち上がれ!

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「僕らが奴隷にならないための闘いだ」 ~アーサー・ビナード氏、憲法を語り集団的自衛権を斬る http://iwj.co.jp/wj/open/archives/204815 … @iwakamiyasumi
    スッと胸に染み入るアーサーさんの言葉の数々、ふと立ち止まって考え直すキッカケになるかもしれません。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/533580328481214465

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