放射能汚染された木くずをめぐる裁判「全容解明に至らねば意味なし」市民団体が不法投棄の「各地横行」を危惧 2014.11.6

記事公開日:2014.11.11取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※11月11日、テキストを追加しました!

  「放射能汚染された木くずを処理すれば、東京電力から多額の損害賠償金を得られることを、知人の東電職員らを通じて知ったコンサルタント会社社長の田中良拓被告は、5000トン超の汚染木くずを福島から運び出し、見返りに東電から約4億円を受領。1億円近くの粗利益を得た」

 これは、放射能で汚染された木くずをめぐる裁判で語られた、公判の概要だ。

 琵琶湖近くの河川敷に、福島第一原発事故で放射能汚染されたチップ(木くず)約310立方メートルが不法に捨てられた事件で、2014年11月6日、廃棄物処理法違反などの罪に問われている、元官僚で東京のコンサルタント会社社長・田中良拓被告の初公判が大津地裁で行われた。公判終了後、刑事告発を行った市民団体は、滋賀県庁で記者会見を開いた。

 会見に臨んだ市民らは、この不法投棄が「氷山の一角」である可能性が高いと指摘、放射能汚染物質を処理する「裏ルート」を日本中に作ってしまわないためにも、環境省や県などによる、事件の全容解明が急務だと強調した。市民らは告発時に「本来なら県が告発すべき問題。県がやらないのなら、われわれがやらざるを得ない」との声明を出している。

 公判で田中被告は起訴内容を認め、検察は、不法投棄先は高島市のみならず、関東や九州にも存在することを指摘した。

 会見では、検察による「懲役2年、罰金100万円」の求刑を不満とする意見も出た。田中被告は、今回の事件で約1億円の粗利益を得ていることから、「罰金100万円は軽すぎるのではないか」という主張である。

■ハイライト

  • 場所 滋賀県庁(滋賀県大津市)
  • 主催 滋賀県放射性チップを告発する会

滋賀県は住民の安心・安全を軽視した

 問題が発覚したのは、昨年(2013年)9月のこと。滋賀県高島市の鴨川の河川管理用の無舗装路に、放射能に汚染された木くずが敷き詰められており、その長さたるや実に約570メートル。さらに、河口付近にも汚染木くずの入った土嚢77袋が放置されているのが見つかった。

 滋賀県の検査では、最大で1キロにつき3900ベクレルの放射性セシウムが検出された。この値は、国の指定廃棄物基準の同8000ベクレルを下回っているが、会見に出席した石田紀郎氏が代表を務める市民環境研究所は、最大値が1万2000ベクレルとの計測結果を発表しているという。

 この違いについては、試料となった木くずの含水率の差が影響しているとの見方が有力である。県は台風(大雨)で水分を多く含んだ木くずを、市民環境研究所では乾燥したそれを測ったのだ。県のやり方については、「環境省の測定マニュアル(試料の含水率から乾燥重量を算出せねばならない)を守っていない」との批判の声が上がった。

 地元住民の間には「汚染木くずを、野ざらしで長く放置した滋賀県は無責任。しみ出した放射性物質の琵琶湖への流入が心配だ」との声も聞かれた。

 会見では石田氏が、「滋賀県は、市民らによる幾度もの早期原状回復(汚染木くずの撤去)の要望を汲まず、約10ヵ月もの間、県管理地であるにもかかわらず放射性物質を放置してきた」と指摘した。

 不法投棄場所から100メートルほどの場所に住んでいたという告発人の女性は、「公判では、汚染木くずの撤去費用は田中被告の全額負担で、県費は一切使われなかったことが(県民負担が回避されたことを理由に、ポジティブな調子で)明かされたが、県は、約2000万円の費用を立て替えて木くずの撤去を急ぎ、あとで犯人に全額を請求することも可能だったはず」と話し、早期対応をしなかった滋賀県の姿勢に怒りをにじませた。

田中被告を有罪にするだけでは不十分

 そもそも、なぜ、このような「不法投棄」が行われたのか。

(…会員ページにつづく)

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