「ふくしま希望会議」実行委員会の主催による「第3回福島県民の明日の希望を創るシンポジウム」が10月18日(土)、福島市のホテル福島グリーンパレスで開催された。
これに先立ち、ふくしま希望会議は10月9日、福島県知事選の立候補者6人に対して公開質問状を送付。16日までにすべての候補者から回答が寄せられた。シンポジウムでは、この回答内容が発表され、IWJはその模様を配信した。
公開質問は、ふくしま希望会議による10の質問について、それぞれ賛成か反対かを問う形式。実際の回答では、どちらでもないとする回答も目立った。記入回答欄も設けられ、賛否の理由のほか、候補者自身の代替案を示すことが可能となっている。
第一の質問は「福島県内すべての原発について即時廃炉を宣言し、実行行動をとります」というもの。これには立候補者全員が賛成した。
- プログラム
12:30 開会
12:35 政策提言について
13:10 立候補者への公開質問結果について ご回答
13:30 講演:除本理史氏(大阪市立大学教授)「原子力損害賠償について(仮題)」
13:50 総合討論
・登壇者(予定) / 藤本典嗣(福島大学准教授)/ 除本理史(大阪市立大学教授)/ 西尾正道(北海道がんセンター名誉院長)/ 飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)/ 植田和弘(京都大学教授)
15:00 閉会
- 日時 2014年10月18日(土)13:10~
- 場所 ホテル福島グリーンパレス 瑞光西の間(福島県福島市)
- 告知 ふくしま希望会議
「廃炉」には全員が賛成
優位が伝えられる前副知事の内堀雅雄氏(50)は「県内にある原発10基の全基廃炉は明確。県民の総意であることから、当然に廃炉にすべき」と質問1に回答。前福島県双葉町長の井戸川克隆氏(68)は、「県民参加で、原発事故調査倫理委員会(仮称)を作ります」と答えた。
前岩手県宮古市長の熊坂義裕氏(62)は、国による意思決定を求める声が県から出されているが、明確な回答がない状況だとし、知事が全基廃炉を宣言することで、県の方針を確固たるものとしていくと答えた。
牧師の五十嵐義隆氏(36)は、廃炉へ向けて「世界的専門家の英知を取り入れる」と回答。コンビニ店経営の伊関明子氏(59)は、国と東電の責任の試算と賠償についてあらためてスタートさせるとし、建設会社社長の金子芳尚氏(58)は「これだけひどい目にあった県民の立場として、廃炉は当然」と回答した。
内堀氏は、質問1のほかはすべて、賛成か反対かに明確な立場を示さなかった。一方、井戸川氏、熊坂氏、井関氏は全ての質問に賛成と答えた。五十嵐氏は、質問1、5、6、8、9、10に賛成、そのほかには「どちらでもない」と回答した。金子氏も、質問1のほかは、賛成とも反対ともしなかった。
公開質問状の内容は、候補者の回答とともにふくしま希望会議のウェブ・サイトに掲載されている。
東電施設の分離に関して、井戸川氏と熊坂氏は「イエス」、内堀氏は「難しい」
質問6では、次のような東電分離案に関する意見を求めた。
「福島県民の財産である猪苗代湖の水利権、県内の水力発電所・火力発電所、送電線の所有権を東京電力から分離させ、たとえ電力を首都圏へ供給してもそれに見合った税収が県民に還元されるよう県内に本社を置く会社設立をさせるべく県として具体的に行動します」
質問6に対して、井戸川氏と熊坂氏は賛成。井戸川氏は、「県として自然再生エネルギー電力会社をつくります」と回答。熊坂氏は、「東電から分離した関連会社の本社を福島県に置くという発想は素晴らしい」と答えた。
一方、内堀氏は、賛成とも反対ともせず、「財産権に関わるものであり難しい問題」との見方を示した。
井関氏、五十嵐氏は賛成。金子氏は「検討させてください」と答えた。
二重住民票に井戸川氏、熊坂氏は賛成。内堀氏は言及せず
質問2では、避難者対策を念頭に置いた二重住民票を制度として実現するつもりがあるかの回答を求めた。
「避難者の市民的権利を守るため二重住民票など具体的な法制度を立案し、国へ提言するとともに、国が実現しない場合は、県で同様の効果が認められる制度を具体化します」
質問2に井戸川氏と熊坂氏は賛成。熊坂氏は「双方の自治体との間で二重の権利義務関係が発生しないような調整のための仕組みを盛り込むことができれば法制化も可能」だとし、国に働きかける意向を表明している。また、それが不可能な場合でも、代替サービスを自治体間で実施していくと答えた。
内堀氏は質問2に対して、賛成とも反対ともせず、多様化する避難者の意向を「尊重する」とし、支援は「個々人の事情に配慮」すると回答。ただし、二重住民票の立案に関しては触れなかった。
井関氏は賛成。五十嵐氏は「どちらでもない」と回答。金子氏は「十分有効」としながら「調査と自分の認識の時間が必要」とした。
県民に「健康手帳」を発行するか。熊坂氏、井戸川氏は積極的。内堀氏は触れず
質問7は次のように、福島県民に対して健康手帳を発行するかどうかを問うものだった。
「全県民の生涯にわたる健康管理と医療支援と実現するために『ふくしま健康手帳』を発行し、県内市町村と協力して運用します」
質問7に熊坂氏と井戸川氏は賛成。熊坂氏は「もっと早い段階から発行すべきだった」と回答。また、井戸川氏は、「県立医大が管理するデータ、カルテ、X線写真は永久保存とします」と、県民の健康管理に積極的な姿勢を打ち出す。
内堀氏も、県民健康調査により県民の健康状態を把握するとともに、医療従事者を確保し、高齢者施設、介護施設を充実させると答えた。ただ、健康手帳の発行については言及しなかった。
井関氏は賛成。五十嵐氏は「どちらでもない」と回答したが、「福島独自のアイディアが生み出されてくるのであれば応援したい。県内市町村との協力はおおいに賛成である」とした。
金子氏は「一部保留」という立場。県民に対する「差別的な見方」が出るかもしれないという懸念があるとの意見を出している。