今年5月29日に政府が日本人拉致(らち)被害者再調査について北朝鮮と合意したことで、停滞していた北朝鮮による日本人拉致問題は、第二次安倍政権下で大きく舵を切ることになった。7月4日には北朝鮮による特別調査委員会が立ち上がったことで、北朝鮮に対する措置の一部が解除された。
9月13日(土)、千代田区日比谷公会堂において「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連」などの5団体主催で、「もう我慢できない!今年こそ結果を!国民大集会」と題した集会が開催された。主催者発表によると1800人が集会に参加した。
安倍晋三内閣総理大臣が登場するということもあり、会場には主要メディアを含め、多くの報道機関が集まった。また、出席した山谷えり子・拉致問題担当大臣を始め、超党派の議員や被害者家族らのスピーチでは、拉致問題解決に向けて、北朝鮮への強い圧力による交渉と、「オールジャパン」で取り組むという姿勢が繰り返し強調された。
- 訴え・挨拶 家族会/救う会役員/拉致議連役員/北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会代表/拉致問題地方議会全国協議会代表/安倍晋三・内閣総理大臣/各党代表/特定失踪者問題調査会役員と同家族
安倍総理、「安倍政権の最重要課題として取り組む」
トップバッターでスピーチを行った安倍総理は、北朝鮮に対し、国際社会と協調して制裁を実施していることにふれ、交渉のため有効に制裁を駆使しながら解決を目指すと言明。
また総理就任以来、各国との首脳会談において、拉致問題について説明することで、支持と協力を得ていると成果をアピール。拉致問題の解決は「安倍政権の最重要課題」と述べ、党派を超えた連携により全力で取り組むことを約束した。
9月3日の第二次安倍改造内閣で新しく拉致問題担当大臣に就任した山谷えり子参議院議員は、11日にスイス・ジュネーブで拉致問題の解決を訴えてきたとアピール。安倍政権のリーダーシップにより国連北朝鮮人権調査委員会が立ち上がり、北朝鮮による拉致を「人道に対する罪」と認定されたことを紹介した。
山谷大臣は、「第一に圧力に重点をおいた」対話と圧力による交渉を、「外務大臣との緊密な連携で」行うことを強調。北朝鮮は今年夏の終わりから秋の初めに、第一回の調査結果の報告を行うとしているが、「対応に厳しい状況が予想される」との見方を示した。
加えて、すべての拉致被害者の早い帰国と安全確保が「大原則」と言明し、拉致被害者が帰国した際の支援策についても、平成27年度の概算要求を行っていると説明。また、今秋の臨時国会を視野に入れ、拉致被害者等支援法の議員立法での改正を目指していることを明らかにした。
中山参議院議員、「北朝鮮への圧力外交が必要」
第一次安倍内閣において、内閣総理大臣補佐官として拉致問題の任務に当たった中山恭子参議院議員は、継続的に拉致問題に取り組んできた。
その立場から、すでに実施された制裁の一部解除について、「被害者が帰国できる行動を(北朝鮮)が取ったということがない限り、やるべきではなかった」との認識を示すとともに、「次の制裁解除は、帰国への何らかの証がない限りしてはならない」と強調。「被害者の全員救出がなければ、国交正常化、支援もできないと、繰り返し北朝鮮へ伝えることが必要」と圧力外交の必要性を説いた。
曽我ひとみさん、「24年間勇気をもらっていた」母からの贈り物
2002年10月に北朝鮮から帰国した拉致被害当事者である、曽我ひとみさんは、「交渉の最中ということで、毎日落ち着かない日々を送っている」と心境を明かし、「最愛のお母さんからの贈り物で、北朝鮮にいた24年間、勇気をもらっていた」という時計を披露した。また「(拉致されたのが)自分の家族だったらと考えてほしい」と訴えた。
拉致被害者の一人である増元るみ子さんの弟、増元照明さんは、「北朝鮮に対し、強い圧力をかけないと解決はない」と断じた。また、「オールジャパン」が強調されることに対し、外務省担当者が会場に来ていないことを批判。続けて「交渉する気がない国の大使館=朝鮮総連は要らないと言っていいんじゃないか」と強い口調で語った。