2014年7月8日、第八回目の福島第一原発現場取材が行われた。一部が完成して運用を開始する直前の「新事務棟」および「凍土遮水壁の工事現場」が報道陣に初公開された。
特集 福島第一原発入構取材
2014年7月8日、第八回目の福島第一原発現場取材が行われた。一部が完成して運用を開始する直前の「新事務棟」および「凍土遮水壁の工事現場」が報道陣に初公開された。
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2014年7月8日、第八回目の福島第一原発現場取材が行われた。7月から一部運用を開始する新事務棟の内部、および凍土遮水壁の設置工事現場の一部が報道陣に現場公開され、小野明所長のぶらさがり取材が行われた。熱中症対策のため、工事作業は17時から23時に行っており、これまでの入構取材に比べ、遅い時間帯の取材となった。
福島第一原発の事務本館は、東日本大震災により損傷し、使用できなくなっていた。そのため、震災以来、福島第一原発の職員の多くは、約12km離れた福島第二原発で執務し、必要な時には第二から第一へ向かっている。現場から離れているため移動に時間がかかり、迅速な対応が難しいことなど業務への弊害がある。
そこで、福島第一の構外、正門の近くに”新事務棟”および”新事務本館”を設置し、職員を移転させて執務することが計画されている。2014年6月30日に第一期の工事が終わり、7月下旬から1階部分に緊急性が高い水処理関係の部門の職員約400名が移転して執務する予定。次いで9月には第二期工事が完了し、約600名の職員が移転して、合計約1000名が執務する予定だ。
この移転により、現在の第二から第一への移動時間短縮や移動負荷の軽減のほか、現場での情報共有を密にし、迅速な対応ができるようにするとともに、現場機能の一体化・集中化が進むと東電は期待している。
新事務棟は鉄筋2階建て、南北170m×東西40mと細長い。床面積は約1450平米。福島第一構内からの影響で内部の放射線量が上がるのを極力防ぐため、新事務棟の建物に窓はない。出入口も大きな前室が設けられている。人の出入り時や、物資の搬出入時に建屋内部に与える影響を極力避けることの他、バスの待合場所も兼ねるという。
第一期工事では一階部分のおよそ半分の工事が終わり、報道公開された。フロアの中央部分に執務室があり、周囲を廊下や更衣室などが取り囲むようにレイアウトされている。長時間滞在する執務室の線量を極力下げるための工夫の一つだ。
床も一般的な繊維製のカーペットではなく、ビニール製のカーペット状のものが敷かれている。万が一放射性物質が付着しても、簡単に除去できるようにするためだ。壁面も同様にビニール製のコーティングが施されている。
内部には机、椅子等のオフィス家具のみが運び込まれていた。書類ロッカーは低く、少ないが、各席にCAT6のLANケーブルが配線済で、情報流通・共有化が図られるためと思われる。簡易的なシャワー室や仮眠室、食堂等も設けられる予定だ。
今後は新事務棟に加え、2014年度末をめどに”大型休憩所”、2015年度末をめどに”新事務本館”の建設が予定されている。
6月2日から工事が始まった凍土式遮水壁の工事現場が公開された。凍土式遮水壁は福島第一1~4号機の建屋を囲むように計画され、全体を13のブロック(工区)に分けて工事が進められている。今回は4号機の南側、第8ブロックが取材対象として公開された。
凍土式遮水壁全体は、南北約500m、東西200mを超え、★全体でのべ1500mにおよぶ。ここに約1550本の凍結管を差し込み、-30℃の冷却媒体(塩化カルシウム水溶液)を使って周りの土壌を凍結させる。工事手順は、まず地下約30mまで直径30cm程度で削孔(孔を掘る)しながら、ケーシングと呼ばれる外枠となるパイプを差し込む。次に底を封鎖して地下水が流入しないよう止水する。その中に冷却媒体を流す凍結管を差し込む。凍結管の上部は冷却媒体を流す配管に接続する。冷却媒体を流す配管は別途、地上部に設置される。
取材対象の第8ブロックでは、90本程度の凍結管を計画しており、7月7日時点で55本を削孔した。全体の工期を短縮するよう、工事は複数のブロックで並行して行っている。さらに、一つのブロックの中でも複数台の工事機械を使用し、極力工期短縮を図っている。
IWJは、削孔機械の作業の様子を取材、撮影した。先端のピットを回転させて削孔しながら、直径約30cm程度のケーシングも打ち込み、2重のパイプ状のものが打ち込まれていくことになる。削孔しながら2重パイプの中心部分に水を注入し、その圧力で掘った土砂を外側パイプを通じて地上へ押し出している。一般的な通常の削孔工法だ。
第8ブロックでは3台の削孔マシンが同時に使われ、削孔、ケーシングの打ち込み作業が行われていた。
工事現場の放射線量は、東電の測定で36μSv/hだった。3時間で100μSvにも達する値だ。遮水壁工事が予定されている場所全体の中では低い方だが、それでも高い値だ。また、夏季の熱中症対策として、工事作業は17時から開始し、3時間ごとの2交代で行っている。福島第一構内の環境改善、ダスト抑制により、全面マスクでなくても良いようになっている。しかし工事中の粉じんや水の飛散のことを考え、工事作業者は念の為に全面マスクで作業を行っている。
タイベックやマスク等の難点は、暑さに加え、声が通りづらく、音が聞こえにくいというものだ。工事機械の騒音は低減できるだろうが、安全のためにはより注意を要する環境だ。
一方、凍土式遮水壁の第10ブロックでは、本格的な削孔の前段階として、遮水壁の予定ラインに沿って約1.5m程度掘り下げ、地下に埋設されている配管等の”埋設物調査”が行われている。第10ブロックは車両の通る道路部分にあり、通行止めにすると今後の作業に支障が出てくる。そこで、1.5m掘り下げた部分に、凍結管の上端部分や冷却媒体を流す配管等を設置し、その上を鉄板で塞いで車両が通れるようにするという。
凍土式遮水壁は、その効果を疑問視する声も多くあるが、東電はその声に聞く耳を持っていない。福島第一1、2号機の海側に、冷却するための海水を流していた5m×5mの配管トレンチがある。汚染水の流出を防ぐため、冷却し凍結させて止水する工事を行っているが、冷却開始後2ヶ月近く経っても凍結が完了していない。このことから、より規模の大きい凍土式遮水壁でも、うまく凍らないのではないかと心配されている。しかし東電は、「配管トレンチの凍結と凍土式遮水壁は異なり、遮水壁に問題はない」との見解を示している。
福島第一構内の環境改善、ダスト抑制の結果、全面マスクではなく半面マスクでも作業可能なエリアが増えている。今回の取材箇所は半面マスク可能エリアの中であり、報道陣としては初めての半面マスクによる取材となった。半面マスクは、鼻と口の回りだけを覆うフィルターマスクである。それに加え、眼の防護のため、メガネあるいはゴーグルを使用する。
ゴーグルなので、全面マスクのように顔面全体を締め付けることはないが、やはりゴーグル内面が曇ってしまう。取材の途中でも非常に激しく曇り、ほとんど何も見えない状態になってしまった。
また、当初予定されていた取材ルートは、免震重要棟でタイベック等の装備を装着した後、正門側道路方面から4号機へ向かう予定だった。しかし、当日の工事の関係で通行できない箇所があったため、5、6号機側から海側を通り、大回りで4号機南側へ向かうよう変更された。
このルート変更によって、高線量箇所を通ることになり、移動で使用したバス社内で最高598μSv/hを記録した。取材予定箇所での最高値は、凍土遮水壁工事現場の36μSv/h。なお、APD(個人線量計)による被曝線量はγ線40μSv、β線0μSvだった。約1年前の現場公開では、1000μSv/hを超える場所もあったことを考えると、除染や瓦礫撤去などを行い、作業者の被曝線量を下げる改善が進んでいることを実感させた。
意味無さそう、しかしこういう費用を価格に転嫁できるのは独占だから。普通に商売なら退場だよな。