「安倍流の富国強兵策で、大企業を優遇する法人税切り下げを行った。その税収不足分を回収するため、NPOの税制優遇措置を改変しようとしている」──。
2014年7月1日、新潟市のガレッソホールで「『新しい公共』タウンミーティング どうする認定NPO制度緊急勉強会 IN 新潟」が開催され、民主党の辻元清美衆議院議員、NPO法人シーズ代表理事の松原明氏らが講演を行った。辻本議員は、安倍政権発足後、NPO法が後退している現状を危惧し、「超党派の議員連盟で、この流れを変えていきたい」と語った。
民主党政権の2011年の法改正では、認定NPO法人の認定要件の緩和や税制優遇措置が実現し、「新しい公共」の推進力となった。しかし、現在、政府税制調査会は来年度の税制改編に向けて優遇措置を見直す方向で、与党も税額控除制度の再検討を打ち出している。改正NPO法の見直し期限は2015年3月に迫っており、危機感を抱くNPO関係者らが現状報告を行い、「NPO制度を後退させてはいけない」と訴えた。
- 現場から認定NPO制度への期待 富澤佳恵氏(仮認定NPO法人新潟NPO協会常務理事)
- 市民活動を支える認定NPO制度の「いま」とこれから 松原明氏(NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会代表理事)
- 認定NPO法人へのみなし寄付金制度に関する緊急アンケート調査結果 新保絵梨氏(認定NPO法人くびき野NPOサポートセンター)
- 国会・NPO議連の動きと「新しい公共」 辻元清美議員(民主党「新しい公共」推進会議議長代行)
法人税引き下げ。代替財源として認定NPO法人制度の改悪も
はじめに、仮認定NPO法人新潟NPO協会常務理事を務める富澤佳恵氏が、新潟県内、全国のNPO法人数の伸び率、2014年度の認定、仮認定NPO法人の数などを紹介した。そして、現在問題になっている、認定NPO法人制度の改悪の動きに対して、市民がこれを積極的に知り、行動する必要性を語った。
NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会代表理事の松原明氏は、認定NPO法人制度のメリットを、「個人の寄付金が税金から控除され、寄付した人にとって社会貢献ができることで注目されている。法人が寄付した場合、所得の3~4パーセントが経費として計上できる。特定非営利活動に使った場合、所得の一部が税金から控除される法人税軽減措置がある」と述べた。
その上で、 法人税引き下げに伴う代替財源として、特定企業を対象にした税の優遇措置の見直しが検討され、その中に、認定NPO法人制度も含まれているとして、事実関係を説明した。認定NPO法人くびき野NPOサポートセンターからは、新保絵梨氏が寄付金制度に関する緊急アンケートの結果を報告した。
安倍流富国強兵策の帳尻合わせ
民主党「新しい公共」推進会議議長代行を務める辻本清美議員は、第2次安倍内閣が発足してからNPO法が後退している現状を解説した。
「安倍内閣は『世界で一番、企業が活動しやすい日本』を掲げている。安倍流の富国強兵策で『大企業、外資系企業が活動しやすくなれば日本は良くなる』として、法人税切り下げを行った。その税収不足分を回収するため、NPOの税制優遇措置の改変を狙っている」。
このように説明して、「市民が自分の応援したいところにお金を回すという発想、税金が横に流れる動きを財務省は嫌う。税金はいったん国が吸い上げて分配したいのだろう」と語った。
「新しい公共」は社会の質を高めるために
辻元議員は「市民を国家に奉仕させるというのが、安倍さんの発想であるが、私は、市民一人ひとりが活き活きと活動する中で、より良い社会を創っていくべきであると思う」と述べ、「安倍さんが総理になって、NPO法を狙い撃ちにして、市民の社会参加などを覆そうとしているのではないかと警戒している」と危惧した。
その上で、「市民一人ひとりが、自身の税の使い道を選択できる社会を」と語り、税金の配分や意志決定プロセスの段階から、NPOや現場の人間がコミットして対等に議論し、政策決定を行う必要性を説いた。
「安倍政権による、NPO施策の後退に歯止めをかけるため、超党派によるNPO議員連盟によって現状の流れを変え、社会の質を高めるための共生社会を築いていきたい」と辻元議員は語った。