「防衛省は被害者に寄り添うことはない」 〜米兵に妻を殺害された遺族が語る、米軍犯罪の危険と不条理 2014.6.23

記事公開日:2014.6.23取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「もし、米兵との交通事故が起きたら警察を呼ぶこと。米兵の所属、名前、基地名を調べるように。弁護士の人選にも注意しなければならない。米軍絡みの事件事故で裁判を起こすと、国は徹底的に圧力をかけてくる」──。

 2014年6月23日、京都府京丹後市の丹後文化会館で、「住民置き去り 米軍基地建設を許さない市民大集会『隣り合う米軍犯罪の危険』」が開かれた。京丹後市の経ヶ岬(宇川)では、米軍のXバンドレーダー基地建設が住民への十分な説明もないまま進められ、レーダーが搬入される今年10月以降は、最大160人の米軍人・軍属が小さな町に滞在することになる。今回、講師に招かれた山崎正則氏は、2006年、横須賀市で酒に酔った米兵に妻を殺害された。米軍基地があることによって犯罪被害に遭ったとして、米軍や国の責任を裁判で追求したが、最高裁に上告を棄却されている。

 山崎氏の妻の好重さんは、朝の通勤途中に金目的の米兵に襲われ、残虐な方法で殺害されたという。山崎氏は理不尽な犯罪で妻を失った無念さとともに、身をもって体験した米軍基地があるリスク、日米地位協定の不平等さを語った。国は「米軍関係者と住民の間に事故や事件が発生した場合は、防衛省が間に入ってサポートする」と説明しているが、不安を募らせる住民も多い。この日は平日の夜にもかかわらず450人の聴衆が集まり、山崎氏の話に耳を傾けた。

■全編動画

  • 講師 山崎正則氏(横須賀強盗殺人米兵事件の原告)
  • 日時 2014年6月23日(月) 19:30~
  • 場所 京都府丹後文化会館(京都府京丹後市)

10月レーダー搬入、12月稼働、来年3月契約更新

 米軍基地建設反対丹後連絡会連絡会の石井内海副代表が、開会の挨拶で「京都を第2の沖縄にはしない」と述べ、近江裕之事務局長が「防衛省からの説明が不十分のまま、昨年9月、京都府議会は米軍レーダー基地の受け入れ表明をした。しかし、『住民の安心・安全が担保できなければ、協力の撤回はありえる』と言わせたのは、反対運動の成果だ」とスピーチした。

 「防衛省は最初、1平方メートルあたり190円の土地賃借料を明示したが、うまくいかず、300円まで吊り上げた。小野寺防衛大臣は、昨年11月9日、住民を避けるように京丹後市長と面談。防衛省の住民説明会は、4月になってやっと開催した。だが、実のある回答を得られないまま、5月27日早朝、突然、工事が始まった」。

 そして、「今後は、10月にレーダーの搬入。12月に運用開始。来年3月には契約更新と続くが、基地の危険性について声を上げ、運動を大きくしていきたい」と訴えた。

集団的自衛権の行使で、標的になるレーダー基地

 市民大集会に移り、宇川憂う有志の会の三野みつる副代表が、基地建設工事の進捗状況を報告した。「5月26日13時に、米軍から工事開始の発表があり、翌27日、強引に着工。狭い山間道に大型工事車両が行き交い、京都府警の車両も24時間巡回するようになった」。

 三野氏は「住民の過半数を集めた反対署名を提出したが、京丹後市長は『国防のため、やむを得ない』と言う。しかし、米軍は『経ヶ岬に設置されるのは米国本土を守るためのレーダー』と明言している。また、近畿中部防衛局には30項目の質問状を提出したが、口頭での返答だけで、文書は渡されない。京丹後市も肝心なところは、はぐらかす。今後、集団的自衛権の行使で、レーダー基地が標的になるのは明らかだ」と基地の撤去を訴えた。

「基地ができたら終わりです」

 横須賀強盗殺人米兵事件の原告、山崎正則氏の講演に移った。山崎氏は「京都はいいところですね。町中に英語の文字が少ないことに、驚いた。基地ができたら、終わりです」と述べて、妻の好重さんの事件を語り始めた。

 「2006年1月の早朝、米空母キティホークの乗組員が、前日から酒を飲み、金を使い果たして強盗目的で妻を暴行した。妻は、あばら骨6本が折れ、内臓に突き刺さっていた。その米兵は無期懲役刑になり、服役している。防衛省が説明する安全や保障は、ウソっぱちだ。はっきり言うが、防衛省は被害者に寄り添うことはない。私も、いまだに補償されていない」。

 「私は、日本の国の責任を追求するために告訴した。しかし、公務外の事件事故は、米兵個人の問題で、米軍も日本政府も責任はなく、補償もしない。そういうことが、日米地位協定に書かれているのだ。交通事故が起きても、ほとんどの米兵は保険に入っていないので、被害者は泣き寝入りだ」。

傷害致死でも執行猶予になる米軍関係者

 山崎氏は「沖縄で事件を起こした米兵は、服役するために全員、久里浜の刑務所(横須賀刑務支所)に投獄される。今、2名の米兵が服役中。1人はタクシーの運転手を殺した脱走米兵だ。しかし、ここで服役する米兵には1日6000カロリーの食事が与えられ、和食か洋食かを選べる。独房というより、冷暖房、シャワー付きの個室と変わらない」と話す。

 「2006年1月の妻の殺害以後も、2年間で3名の日本人が殺されている。犯人の1人は米軍基地のナンバー2(在日米海軍司令部統合人事部のロバート・バーンズ・ノーラン元副部長)で、自ら基地の前で飲み屋を経営、自分の店で酒を飲んでいて、客を突き飛ばして殺した。しかし、傷害致死で執行猶予になった」。

 「私の場合、地裁では、米軍の管理監督責任が認められた。しかし、高裁では『米軍が米兵を管理監督するのは、日本人の生命・身体を守るためではない。軍の運用は、安保条約を遵守することだけ』と棄却され、最高裁も、これを支持した。つまり、米軍は日本人を守るためにいるわけではない、ということだ」。

 山崎氏は「多くの人は『国のやることだ』とあきらめてしまうが、ひとりで闘っていても、一緒に闘ってくれる人はいる。最後まで、基地建設反対を訴えていこう」と京丹後市民らにエールを送り、講演を終えた。

アメリカの要求は無条件で通用する日本

 次に、京丹後市議会議員の平林智江美氏が、防衛省に反対署名を持参して交渉したことを報告した。

 「6月6日、3名の共産党国会議員とともに、防衛省、外務省との交渉を行なった。京都府、京丹後市とも説明が不十分なこと。突然、工事を始めたことで、安全対策も信用できない。防衛省の住民説明会は、一方的で質疑応答も不十分で納得できない。これらの疑問への回答を求めた」。

 「防衛省は『十分、説明した』の一点張り。私たちは、基地建設の撤回を求める、住民の過半数を越える反対表明があることを訴えた。今回、アメリカの要求は、無条件でなんでも通用するという実態を知った」と語った。

 最後に近江事務局長が、「今日は450名の市民が集まった。さらに、情報の拡散をお願いしたい」と述べて閉会した。

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「「防衛省は被害者に寄り添うことはない」 〜米兵に妻を殺害された遺族が語る、米軍犯罪の危険と不条理」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    公務外の事件事故は、米兵個人の問題で、米軍も日本政府も責任はなく、補償もしない。そういうことが、日米地位協定に書かれている。被害者は泣き寝入りだ。

  2. @kp35gさん(ツイッターのご意見より) より:

    「米軍絡みの事件事故で裁判を起こすと、国は徹底的に圧力をかけてくる」

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