住民帰還に向けた取り組みを政府が進めている中、政府の低線量被曝に対する評価や政策は見直す必要があるとして、5月12日、「市民と科学者の内部被曝問題研究会(内部被曝研)」が日本記者クラブで緊急記者会見を開いた。
内部被曝研は、政府の認識は次の4つの点で誤っていると指摘する。
(IWJ・原佑介)
住民帰還に向けた取り組みを政府が進めている中、政府の低線量被曝に対する評価や政策は見直す必要があるとして、5月12日、「市民と科学者の内部被曝問題研究会(内部被曝研)」が日本記者クラブで緊急記者会見を開いた。
内部被曝研は、政府の認識は次の4つの点で誤っていると指摘する。
記事目次
■ハイライト
(1)放射線被曝で病気になるリスクを一桁近く小さく見積もっている。
(2)被災区域の放射線被曝量をきわめて小さく見積もっている。
(3)小児甲状腺癌を被曝と関係ないと断定している。
(4)癌だけでなく様々な病気が増えるおそれがあることを無視している。
会見者の深川市立病院の松崎道幸氏は、(1)で指摘する影響評価の誤算について、CTスキャンなどによる医療被曝や原発労働者の追跡調査では、放射線被曝による発癌リスクが、日本政府、WHO、UNSCEARが作成した広島、長崎の「原爆データ」の6倍以上も増加していたと説明。チェルノブイリ事故などの核施設事故収束作業にともなう被曝では、「原爆データ」を一桁近くも上回る癌の発生が観察されたという。
また、放影研作成の被爆者データは、被爆から5年後に生存していた被爆者を対象とした調査であったため、身体的な強者に偏った「生き残りバイアス」が生じており、被爆影響が過小評価されていたとも指摘。「原爆データではなく、(医療被曝データなどの)最新データを使って影響を評価し直すべきだ」とした。
(2)の政府の被曝量評価について松崎氏は、政府による調査では住民の内部被曝による影響が評価されていないことや、個人線量計(ガラスバッジ)がガンマ線しか計測できず、実際の被曝量が測れていないと指摘。また、本来、女性に多くみられるはずの甲状腺癌と違い、福島で発見された小児甲状腺癌の男女比が、チェルノブイリでみられたものと類似していることからも、(3)の政府による小児甲状腺癌と被曝の関係性の否定論は疑わしいとした。
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