学生らによる台湾立法院(国会)の占拠に呼応して、3月30日、立法院周辺の道路一帯で大規模な抗議集会が開かれた。主催者発表で約50万人(警察発表では11万人超)が参加した。
「台中サービス貿易協定」の審議が「ブラックボックス」の中で進められたことへの抗議の意思表示として、参加者らは黒い服を着て集まった。集会では、今回の学生運動のシンボルである「ひまわり」が大量に配られ、台北市中心部が黒と黄色で埋め尽くされた。台湾ほぼすべてのテレビ局がこの模様を中継した。
(現地取材・文:原佑介・現地取材協力:林、邱崇偉、廣瀬光沙・取材:岩上安身、須原拓磨・記事構成:佐々木隼也)
学生らによる台湾立法院(国会)の占拠に呼応して、3月30日、立法院周辺の道路一帯で大規模な抗議集会が開かれた。主催者発表で約50万人(警察発表では11万人超)が参加した。
「台中サービス貿易協定」の審議が「ブラックボックス」の中で進められたことへの抗議の意思表示として、参加者らは黒い服を着て集まった。集会では、今回の学生運動のシンボルである「ひまわり」が大量に配られ、台北市中心部が黒と黄色で埋め尽くされた。台湾ほぼすべてのテレビ局がこの模様を中継した。
■抗議集会の模様 1/2
■抗議集会の模様 2/2
総統府前に設営されたメインステージには、学生や学者、有名アーティストなどが登壇。バスで3時間ほど離れた「台中」から、3日間かけてマラソンで会場に駆け付けたという学生らもスピーチした。
立法院の占拠からこれまで12日間、大学の授業をボイコットしているという学生は、「論文を完成させるために学校に帰ろうかとも思ったが、台湾の未来やここで頑張っているクラスメイトや学生のことを思うと、そんなことはできないと思った」と挨拶。個人的に授業をボイコットしている学生は3000人にも上るという。
さらに、「協定はブラックボックスの中で進められた。何も討論されていないし、何も知らされていない。しかし、サービス貿易協定は、すべて自分たちの未来に関わります。私たちには、この協定に反対する権利があるし、授業には出ていないが、ここで公民を学ぶことができる」と訴えた。
台湾大学法律学部副教授の張文貞氏は、「行政院占拠はとても残念でした。立法院の学生運動は、協定に反対して起こしたものですから、政府が暴力で強制排除してはいけない。台湾と中国の間の協定を結ぶ法律過程は整備されていなかった。協定を結ぶ前に、審議過程の透明性を監督できる法律を作るべきです」と訴えた。
現在、行政院の暴力的な鎮圧への抗議とともに、不透明な審議を防止するための法整備の必要性を訴える署名を集めており、すでに台湾大学法律学部33名の教授が名を連ねているという。
会場では、今回の学生運動のシンボルであるひまわりが大量に配られた。太陽に向かって咲くひまわりのように、正しい方向を向く、という意味も込められているという。
メイン会場の総統府前だけでなく、周辺の封鎖された主要な道路は、すべて参加者で溢れかえった。移動するのも困難で、普段なら徒歩で5分の道も、20〜30分かけなければ歩けないほど混雑していた。
総統府からやや離れた「自由の広場」にも、多くの参加者が座り込んでいた。「馬総統は無能だ」と書かれたプラカードを掲げていた社会人の女性は、「今回の学生たちは多くの資料を集めて勉強し、協定にも詳しい。なのに、政府はマスコミを通じて、学生たちが無知であるかのような印象操作をしていることが許せない」と話した。
立法院の敷地内で座り込みをしていた女子大生は、授業の空いた時間に参加しに来ているという。両親はこの運動をとても支持しているという。「台湾の人々の未来のために参加しにきました。協定を通したら、学生だけでなく、台湾人全体の仕事が減っていくことに聞き感をもっている」と話し、今日の集会の成功についても、「今日、何十万人も集会に参加したのは、学生だけでなく、みんなに関係があることわかっているからだと思う」と感想を口にした。
この日の集会が夜10時までに解散しなければ、行政院のときのように警察が強制排除に乗り出す。
こういった話が事前にあったため、玄奘大学の学生は、とても心配しながら座り込んでいた。今回の運動について、「もし馬総統がどうしても協定を強引に進めるのであれば、誰も止められない。彼が総統だからです。しかし、今日のデモにこれだけの参加者が集まったのは、政府に大きなプレッシャーをかけることになると思う。これからどうなるか注目していきたい」と話した。
メインステージの終盤でライブをした「滅火器」は、メッセージ性の強い曲を歌い、若者を中心に人気を博している有名バンドだ。この日は、今回のひまわり学生運動をテーマにした、「島嶼天光」を歌った。平和的に戦うことの大切さが込められた曲だ。参加者らは歓声を上げ、曲に合わせてペンライトを振った。
最後は学生リーダーの一人、林飛帆氏がステージに登壇。「台湾の立法は、行政によって破壊されたから、我々は立法院を占拠して、みんなの権利を取り戻した」と挨拶。「馬総統の言葉は一見して優しそうで、笑顔を浮かべているが、話している内容は、我々の要求に答えられるものではない。だから我々の運動は止まらない」。
サービス貿易協定の撤回や市民との対話について、「馬総統は、答えを出して下さい」と呼びかけた。さらに、「今日集まった皆さん、隣の人とつながって下さい。台湾には未来があります。今日のデモは終わるけど、国会の占拠はまだ続きます」と参加者を鼓舞した。
林氏が話し終えたところで集会は幕を閉じ、立法院周辺で座り込みを続ける参加者以外は、すみやかに帰路についた。50万人が集まったとされる道路にはゴミも落ちておらず、危惧された強制排除もなく、無事終了した。圧倒的な民意が可視化されたことで、馬政権がどのような行動に出るか、注目だ。(取材・文:原佑介)
本日4月1日午後1時半頃、協定を賛成して学生の占拠行為を反対する団体が、2000人程の人員を従えて、立法院に突入して占拠する、と3月31日に記者会見を開き、宣言した。突入する集団の中には台湾のヤクザも含まれているとみられ、立法院周辺には一気に緊張が高まっている。ドキュメント次回へ【ドキュメント台湾国会占拠(11)】暴力団に雇われた労働組合員らが「協定賛成」と「立法院奪還」を掲げデモ 学生側「ヤクザは帰れ!」 2014.4.2続く。
※強硬な姿勢を打ち出した馬総統の記者会見の模様はこちら
※立法院占拠の学生らの代表者が、占拠の動機について語った原記者によるインタビューと、立法院内の占拠の模様はこちら
IWJでは、IWJ台湾Chから、今も台湾全土で行われている抗議行動の模様を、現地市民の協力を得て報道し続けています。「持久戦」の様相を呈してきたこの事件。3月23日からは、原記者が現地に入り、生々しい抗議の模様や現地市民の声を体当たりで取材し、配信しています。この問題は、中国を米国に置き換え、ECFAをTPPに置き換えたら、非常によく似た構図となっています。IWJは苦しい財政状況ですが、可能な限り伝え続けたいと考えています。取材が持続できるよう、どうか緊急のご寄付、カンパのほど、そして会員登録をよろしくお願い致します。