「核燃料サイクルは命を否定する」鎌田慧氏 アーサー・ビナード氏 〜さようなら原発・核燃「3.11」青森集会 2014.3.9

記事公開日:2014.3.9取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

特集 3.11

 「僕らは、美しい青森で生きていきたいから、命を『肯定』しているだけ。命を否定しているのは、馬鹿げたエネルギー政策を進める勢力だ」──。

 全国で、脱原発を訴える催しが行われた、2014年3月9日(日)、多数の原発・核燃料サイクル関連施設を抱える青森県では、鎌田慧氏、アーサー・ビナード氏を招いて、青森市のリンクステーションホール青森で「さようなら原発・核燃『3.11』青森集会」が行われた。参加者は集会後、青森県庁までデモ行進し、原発と核燃サイクルからの脱却を訴え、県庁を包囲した。

■全編動画
・1/2(12:17~ 2時間12分)

・2/2(14:38~ 1時間10分)

  • 12:30~ 開会あいさつ
  • 12:35~ 講演 宮永崇史氏(弘前大学教授、主催運営委員)青森県の問題点・現状を報告/鎌田慧氏(ジャーナリスト、作家)/アーサー・ビナード氏(詩人)「はらぺこあおもり」
  • 14:15~ 閉会あいさつ
  • 14:30~ デモ 青森文化会館 → ホテルクラウンパレス(旧厚生年金会館)→ 新町通り→ 協働社 → 青森県庁/県庁包囲行動

アメリカでは原子力は経済的に破綻しているエネルギー

 運営委員の宮永崇史氏(弘前大学教授)は、六ヶ所村の再処理工場について、「全国の施設から集まった使用済み核燃料は、3000トンになっている。燃料プールでは、ただ水に浸しているだけだが、それでも(冷却できなくなれば)、福島で水素爆発を起こすことが実証された。また、電源喪失が起こると、臨界事故並みの放射線が拡散する恐れがある」と、その危険性を指摘した。

 続いて、断層問題に触れて、「下北半島の太平洋側の沖に大きな断層があり、それが出土西方(でとせいほう)断層に伸びてきている。出土西方断層の先には、六ヶ所核燃料サイクル施設があることから、もし、これらがつながっていると、相当大きな地震の危険が懸念される」と述べ、研究者の見解を紹介した。

 再処理工場のコストについては、「当初の建設費用7000億円が、今、2兆2000億円に膨らみ、今後、どれくらいかかるかわからない状況である。また、立命館大学の大島先生の資料では、バックエンド費用が、今後18兆円かかるという試算がある。こういうものを入れていくと、電気料金のコストは莫大なものになる。アメリカでは、原発はコスト的に見合わないことから、経済的に破綻している、という報告がある」と指摘した。

経済のためだけで人命無視の原発再稼働は許さない

 鎌田慧氏は、原発反対運動の広がりについて、「今は、50基の原発がすべて止まっている。これは、私たちが今まで作ってきた原発反対運動が圧力になり、簡単な再稼働を許さない形になっているからである。そして、この反対運動が広がっていることは、元首相である小泉純一郎さん、細川護煕さん、菅直人さん、鳩山由紀夫さんが、『原発はダメ』と言っていることからもわかる。4人の国家の元責任者が『間違っていた』と認めたことで、これから保守層、財界にも運動は広がっていく。そして、原発を止めて自然エネルギーに向かい、それが事業化していく」と語った。

 その上で、鎌田氏は「この流れに対して、安倍政権は再稼働を進めている」とし、「再稼働は、原発産業を維持するためだ。つまり、儲けるためにしか、再稼働の論理はない。すでに、原発は安全、安いと言ってきたことが、すべて嘘であったことがわかっている。経済のためだけでしかないから、人命はどうでもいい。そういう論理が、再稼働の論理である。だから、絶対に認められない。原発再稼働を、とにかく許さない」と断じた。

『脱おたんこなす』で騙されることに終止符を!

 アーサー・ビナード氏は「日本の核は、出口がないものをやっている。それを、安倍総理も認める以外にない」とした上で、アメリカの核の出口戦略に触れ、「アメリカの戦略は、日本の一般人には見えていないが、完全に次のステップに進んでいる。オバマ大統領の今年の一般教書演説は、エネルギー政策が中心だった。アメリカの『エネルギーの独立』である。これからは再生可能エネルギーとシェールガスを効率よく使い、他国のエネルギーに頼らない、エネルギー政策を訴えていた。この中で、原子力のことは一切出てこなかった」と話した。

 安倍政権の対応が、米政府と矛盾することについて、「なぜ、逆方向に進んでいるかというと、これも米政府、あるいは、米国を中心とする経済界からの日本への課題である。つまり、アメリカもフランスもドイツも日本も、原発を止めると、今の原発の利権構造が一気に崩壊する。だから、損をしないように利権のカラクリを維持しなければいけない。『米政府が抜けるから日本も一緒に行く』と言われると困る。そこで、儲からないもの、バカをみる商売、『あんぽんたん』じゃなければやらないことを、日本にやらせている」と指摘した。

 ビナード氏は、今後の課題として、「脱原発、脱TPPなど、脱しなければいけないことが、たくさんある。しかし、一番やらなければならないのは『脱おたんこなす』。騙されることに、終止符を打たなければならない。政府から出てきたものに対して、専門家、文化人、ジャーナリストだけでなく、国民が瞬時に見抜いて戦う。この『脱おたんこなす』の手本になる人は、たくさんいる。みんながつながれば、知恵を出し合って戦える。私も一緒に戦っていきたい」と述べた。

私たちの運動は『反対運動』ではなく『青森を守る運動』

 講演後のデモ行進では、雪の残る市内を「青森守ろう」「核燃いらない」の声を上げながら、参加者たちが青森県庁を目指した。県庁到着後、IWJのインタビューに応えたビナード氏は、「われわれは、反対行動をしているわけではない。新聞に載ると『反対』という言葉が使われる。しかし、僕らは『反対』しているわけではなく、青森を守って、美しい青森で生きていきたいから、命を『肯定』しているだけ。命を否定しているのは、行き詰まって、袋小路に入っている、核分裂を使う馬鹿げたエネルギー政策を進める勢力である」と述べた。

 続いて、鎌田氏が「青森県は『再処理工場を動かさないなら、今まで運んできた使用済み燃料を持って帰れ』という形で、再処理工場を動かそうとしている。しかし、日本全体から見ると『再処理工場は動かすな』という意見が強くなってきている。核燃料サイクルは破綻し、もんじゅ、再処理工場も破綻しているのに、青森の県政は、日本の全体的な方向に対して、経済的利益のために再処理工場を動かすという、逆転した要求をしている」と話した。

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