東京都内を始めとする公立図書館で、300冊以上の「アンネの日記」が破られた事件をうけて、駐日イスラエル大使館と日本ユダヤ教団が、被害のあったすべての図書館に関連書籍を寄贈することを決めた。
2月27日、駐日イスラエル公使らが杉並区役所を訪れ、報道陣で溢れかえった区長の部屋で、本の贈呈式と記者会見が行われた。
(IWJ・ぎぎまき)
特集 戦争の代償と歴史認識
東京都内を始めとする公立図書館で、300冊以上の「アンネの日記」が破られた事件をうけて、駐日イスラエル大使館と日本ユダヤ教団が、被害のあったすべての図書館に関連書籍を寄贈することを決めた。
2月27日、駐日イスラエル公使らが杉並区役所を訪れ、報道陣で溢れかえった区長の部屋で、本の贈呈式と記者会見が行われた。
■ハイライト
ペレグ・レヴィ駐日イスラエル公使は記者会見の中で、イスラエル国内での反応について聞かれると、「日本は平和で温かい国という印象があるので、最初は誰もが驚いた。だが、一部の人間の行為であることを我々は理解している」と述べたが、そう思うには理由があった。
破損事件について報道され、広く知られるようになってから間も無く、日本の市民から「申し訳ない」といった類いのメッセージが大使館に多く寄せられたと、レヴィ公使は明かした。
イスラエル大使館と日本ユダヤ教団が本の寄贈を決めたのは24日。その経緯を聞かれるとレヴィ公使は、「事件の第一報を聞いてから、日本ユダヤ教団と話し合って、自然な流れでそう決まった。今回の贈呈は、杉並区長から頼まれたものではないが、我々が、連帯と友好関係を示すために贈らせてもらった」と話した。
IWJが、東京や大阪、京都で行われている排外デモについて触れ、そのような動きがユダヤ人に向けられることを懸念するかと質問すると、「それは日本国内の問題であり、結びつけて考えてはいない。今回の事件は、反ユダヤ主義がベースにはあるだろうが、日本社会がこの行為を早いうちから非難したことを見れば、運動というよりは、一部の人間の行為だととらえている」とレヴィ公使は回答。
別の記者から「犯人に言いたいことはあるか」と聞かれると、「臆病者だ。ただそれだけだ」と言い放ち、嫌悪感をあらわにする場面もあった。
被害にあった地域を代表して、贈呈式にのぞんだ田中良杉並区長は、「迅速に対応してくれたイスラエル大使館には感謝している。現在、杉並署に捜査本部が設けられ、捜査が進んでいる。一刻も早く事件が解明され、犯人が逮捕されるよう願っている」と述べた。
この日、贈呈された本は3冊だが、今後、杉並区役所が代表で、被害にあった全図書館から聞き取りを行った上で、必要な書籍のタイトルと数を、改めてイスラエル大使館に伝え、寄贈を要請するという。
「今後、再発防止のために対策を取るのか」。杉並区役所の担当者に尋ねると、「本を職員の目の届く場所に置くなどという措置も考えられるだろうが、特別何もする予定はない。こういうことにひるまない、という杉並区長の考えでもある」と答えた。