以下、「IWJウィークリー」24号の「編集後記」を転載いたします・
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇編集長の編集後記(岩上安身)◆◇
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
以下の一節をお読みいただきたい。
現在外国人がシリアに正規入国するのには、トルコ政府からの許可証が必要となる。正規入国する際にはバーベルハワと呼ばれる国境門を通ることになるのだが、許可証のない外国人はゲートをくぐることができない。そのため多くのジャーナリストは、密入国でシリア入国を試みるほかない。
密入国にはフィクサーが必要だ。我々のフィクサーとなったのは、バーベルハワ国境で会った男性カーレク氏の知り合いで、武器をトルコからシリアへ密輸入しているムスタファ氏だった。ムスタファ氏は英語の話せるアフメドとアトメ国境にいるとのことだったので、我々もタクシーでそちらに向かうことにした。
タクシーを降りてからは、カーレク氏が我々を国境ぎりぎりの地点まで誘導してくれた。オリーブ畑の中、身を低くしながら4人固まってジグザグに走る。荷物を持ちながら足場の安定しない畑の中を走るのはかなり体に応えるが、トルコ兵に見つかれば終わりだ。すぐ近くにトルコ兵の基地もあり、国境沿いに監視カメラもある。移動中はみな無言でシリアを目指した。
オリーブ畑を抜けると、有刺鉄線フェンスが敷かれていた。カーレク氏はおそらくここを目指していたのだろう、フェンスには一部壊された箇所があり、鉄線に触らないようくぐり抜けることができた。カーレク氏とはここで別れ、今度は広大な草原を突っ切れと言われた。草原の反対側にはムスタファと通訳のアフメドが手を振って「走れ、早く来い!」と手で合図していた。ついに、シリア入国だ。
短文を重ねた、このハードボイルドな文章は、小説の一節ではない。
この夏、内戦下のシリアへ、決死の入国を試みた、ある日本人の若者の手になる記録である。
経験を積んだ屈強で俊敏な戦場ジャーナリスト? 違う。23歳の女子、しかもまだ現役の大学生である。
次号(たぶん)では、IWJが世に送り出す「大型新人」(本人はとても小柄な女の子だが)のシリア潜入レポートを掲載する。どうぞ、お楽しみに。
IWJ定額会員の方には「IWJウィークリー」を無料で配信しています。
会員登録はこちらから。