「性暴力の実態を知らない法律家が、事件の裁判にあたっている」──。2013年9月29日、京都市中京区の立命館大学朱雀キャンパスで、シンポジウム「性暴力と刑事司法-性暴力加害者の責任を問う!」が行われ、性暴力事件の捜査、裁判、被害者救済の3点について、牧野雅子氏、吉田容子氏、周藤由美子氏が講演を行った。
性暴力事件を扱う刑事司法において、性暴力に対する思い込みによる取り調べや調書作成、裁判が行われている現状があるとして、被害者の保護や権利回復のための提言を行った。
(IWJテキストスタッフ・山之内/奥松)
「性暴力の実態を知らない法律家が、事件の裁判にあたっている」──。2013年9月29日、京都市中京区の立命館大学朱雀キャンパスで、シンポジウム「性暴力と刑事司法-性暴力加害者の責任を問う!」が行われ、性暴力事件の捜査、裁判、被害者救済の3点について、牧野雅子氏、吉田容子氏、周藤由美子氏が講演を行った。
性暴力事件を扱う刑事司法において、性暴力に対する思い込みによる取り調べや調書作成、裁判が行われている現状があるとして、被害者の保護や権利回復のための提言を行った。
記事目次
■ハイライト
最初に登壇した牧野雅子氏は、「性暴力加害者捜査の問題点 強姦事件鍵者に対する調査から」と題し、性暴力加害者への捜査研究の意図について話をした。「従来、司法における性暴力捜査の研究の多くは、被害者の扱われ方を取り上げてきたが、加害者研究の必要性がある」と述べ、「性暴力の抑止のためには、加害者が適切に調べられ、裁かれているかどうかが重要だ」として、加害者への司法の眼差しを問題にした。
牧野氏は「日本の裁判では、検察官が作成した供述調書がそのまま証拠として採用されるため、調書は重要だ」とし、実際の捜査の事例を紹介しながら、加害者捜査における問題点として、1. 強姦加害者の動機立証過程、2. 悪質性をどこまで追求しているか、を挙げた。
牧野氏は「強姦行為に至る過程は、すべて性欲や本能に支配されているのだろうか」と疑問を投げかけ、取り調べで、加害者が「犯罪の衝動は性的要求ではない」と語ったり、計画的犯行であることが明らかなのに、取調官が「性暴力犯罪は強い性的本能によってなされる」という先入観を持ち、類推した動機により証拠品押収が行われるケースがあることを紹介。「本能にかられて犯罪が行われた、という調書が作られがちである」と説明した。
その上で、「そもそも、性欲や強い本能に一貫して支配されているから犯行が行われている、という考え方は、犯行の説明や原因解明になっていない。(本能だから制御できなかった、という)ある種の『強姦神話』に、誰もが毒されているのではないか」と指摘した。
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