2012年11月14日(水)午後6時30分より、京都府京都市上京区の同志社大学今出川キャンパスで「グアテマラ・マヤ先住民族の声 アリシア・ラミレスさん講演 沈黙を破って」が、同志社大学グローバルスタディーズ研究科の主催により行われた。
(IWJテキストスタッフ・佐々/澤邉)
2012年11月14日(水)午後6時30分より、京都府京都市上京区の同志社大学今出川キャンパスで「グアテマラ・マヤ先住民族の声 アリシア・ラミレスさん講演 沈黙を破って」が、同志社大学グローバルスタディーズ研究科の主催により行われた。
■全編動画
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まず、アリシア・ラミレス氏の講演に先立ち、主催者側から背景説明と講師紹介があった。
「グアテマラでは36年間続いた内戦の間、多くのマヤ先住民の女性たちが性暴力被害を受けた。和平後も加害者が権力を持つ社会で、被害者女性は自分の身に起こったことを誰にもいえず、苦しんでいた。そんな中、被害女性の一人が、2000年に東京で開催された女性国際戦犯法廷の国際公聴会で証言したことをきっかけに、尊厳回復の活動が始まった。被害者の心を癒す活動とともに、2010年の民衆法廷を経て、現在は刑事訴訟も進行中だ。自身もマヤ先住民であるアリシア・ラミレス氏は、民族特有の文化や言語を理解できるため、最も被害女性に近い立場で、支援プロジェクトに関わっている」。
アリシア氏はまず、内戦中の性暴力被害とマヤ先住民族との問題を取り上げ、「内戦中に起こった性暴力の被害者女性は、みなマヤ先住民族だ」と話し始めた。そして、「マヤ先住民族女性は、女性であり、先住民であり、貧困であるという三重の差別を受けている」と説明した。その上「『女性は裸になってはならず、乙女のように、頭からつま先まで衣をまとっていなければいけない。触れられただけでも、穢れてしまう』という価値観が、さらに彼女たちを苦しめている」と、被害者女性の置かれた立場を説明した。
彼女たちの尊厳回復のプロジェクトは、この問題を可視化するキャンペーンを担当するグアテマラ全国女性連合(UNAMG)と、心の傷を癒し、人間として尊厳回復を支援するメンタルヘルスの専門団体・社会心理行動と共同体研究グループ(ECAP)の共同で、2003年にスタートした。しかし、自分の身に起こったことを話そうとするたびに、気絶したりショック状態になったりする被害女性たちの尊厳回復には、「マヤ先住民族の言葉や文化を共有する者が、専門的なサポーターとの間で潤滑油のように働くことがとても大事ということもわかってきた」とアリシア氏は語った。
被害女性の話を聞き合う活動を5年ほど続けたあと、2010年に、性暴力を可視化し、それに対する社会の意識化を求めるため、150人の被害者女性の参加で民衆法廷が開かれた。このころから、女性弁護士組織の世界を変える女性たち(MTM)も、法律の専門的サポーターとしてプロジェクトに関わっている。
プロジェクトでは、被害者女性たちが自分の身に起こったことを表現できるように、壁画制作や粘土細工などのアートセラピーを取り入れている。こうしたセラピーによって、それまでまったく参加できなかった共同体の互助活動に参加したり、法廷で証言できたりするところまで、被害者女性は回復し、「わが身に起こったことは自分のせいではない、と話せるようになって嬉しい。これで安心して死ねる」とアリシア氏に笑顔で語る被害女性もいるという。
「地域の人々に、性暴力に対する理解を求める教育も、プロジェクトの重要な活動だ」とアリシア氏は言う。さらにアリシア氏は、「子どもや若者、村の指導者に村で起こったことを知らせ、女性への性暴力を二度と起こさないように、いわば平和文化の教育活動を行っている」と報告した。
「しかし、組織的な性暴力は、現在でも進行中だ」とアリシア氏はいう。「近年は、グアテマラの農村部で、カナダや米国企業が大規模鉱山や大規模プランテーションの開発を行っているが、このような開発が国に承認されると、住人は暴力で追い出される。軍や警察が排除に来るが、そこに女性がいると当然のように性暴力をふるう。私たちのプロジェクトでは、このような被害を受けた20歳から28歳の女性19人のサポートも行っている」と、彼女は語った。
アリシア氏は「グアテマラは小さな国なのに、暴力の度数はとても高い」という。ある被害者女性は「必ず国家に責任を取らせる」と固い決意を抱いている。アリシア氏は、この女性がマヤ先住民族にとって大切な食べ物であり、聖なる植物であるとうもろこしをたとえに、アリシア氏に語った言葉で講演を締めくくった。
「私は、とうもろこしの種をまいている。自分では収穫することができないかもしれないが、娘や孫、次に続く女性たちが収穫できるように」。