「差別撤廃 東京大行進」の第一報レポート 2013.9.22

記事公開日:2013.9.22 テキスト
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(取材・撮影・文 原佑介、ぎぎまき、芹沢あんず、岩上安身)

 9月22日(日)、ヘイトスピーチを始め、人種や国籍などあらゆる差別に反対する「差別撤廃 東京大行進」が行われた。IWJではマルチチャンネルを使い、集会から大行進をインタビューを交えながら中継。

 大行進が始まる前、新宿中央公園で開かれた集会では、実行委員を代表してノイエホイエ氏が登壇し、「今日、50年前のワシントン大行進の際にキング牧師らが点した灯火を受け継ぐことができる。ゴールを迎えた後もこの歩みは止まらない」とスピーチした。

 「多数派が決める『普通』と違うことで、存在がないことにされる辛さ。個の有り様を隠すことなく、堂々と歩くことができることが何より嬉しい」。そうスピーチした豊島区の石川大我区議会議員は、2011年、日本で初めてゲイであることをオープンにして当選。

 フリーライターの李信恵さんは「7ヶ月前、新大久保の排外デモの酷さに声も出せずに泣いた」と過去を振り返り、「酷い言葉で埋め尽くされた町を笑顔で上書きしましょう。今日は日本に生まれてよかったと思える素敵な一日にしたい」と声を詰まらせて語った。

 スピーチの後、日本政府に対し、人種差別撤廃条約を誠実に履行することを要請する決議文が読み上げられ、参加者による拍手によって採択された。採択を記念して、あらゆる人種の肌の色を示す黒、赤、黄色、白のバルーンをリリース。新宿の空高く舞い上がった。

 これまで新大久保で続いている排外デモのコース変更を求める署名活動を展開してきた金展克氏は、「今日は、新大久保で続いてきたカウンター抗議の一つの到達点。2月頃は絶望しかなかったが善意があってここまでこれた。感無量です」と喜びを口にした。

 排外主義のデモ現場で、弁護士として参加していた山下敏雅氏は、人種差別撤廃条約の具体化を求めるという積極的なメッセージに対し、「素朴な感情から始まったカウンター抗議がステップアップしてきたということ。とても感慨深い」と語った。

 13時、大行進は新宿中央公園からスタート。デモコースは、普段、排外デモが行われている職安通り、靖国通りを抜け、ゴール地点の柏木公園を目指すもの。約2時間を要する大行進は3つの梯団に分かれ出発した。

 第一梯団は、東京大行進のモチーフとなった「ワシントン大行進」に敬意を込め「スーツ」を着用した参加者やマーチングバンド隊などで構成された。ワシントン大行進とは、キング牧師らが63年ワシントンDCで行った「人種差別撤廃」を求める行進。20万人が参加。

 参加者らは「差別をやめよう! 一緒に生きよう!」とコールを上げた。沿道からは、手を振る人、共感の声を上げる人が目立ち、デモ隊の主張やコールに多くの支持が集まった。第一梯団の先頭は、有田議員、共産党・小池晃参議院議員なども参列。

 有田議員は行進を終え、「レイシストたちへの反対運動が、これまでと違った形で、さらに高い段階で第一歩が始まった」と語り、「法的規制はこれからが大事なところだと思う」と、今後、さらに人種差別問題に向き合う姿勢を明確にした。

 茨城県から参加した男性「妻が韓国人で、子どもがハーフだから、どうしてもこの問題に関心を持たざるをえない。韓国の人と日本の人が心から仲良く出来るかどうかはわからないが、できるだけ仲良くした方がいいんじゃないか。(行進は)とても良かったと思う」

 第二梯団では、巨大なスピーカーが積まれたサウンドカーにMC2人が乗り、「差別をやめよう」「一緒に生きよう」とヒップホップのリズムやメッセージで参加者を先導。新宿を行き交う一般市民の中でも特に、若者の多くから終始注目を浴びた。

 MCの一人として参加したラッパー・悪霊氏は、8月に行われた差別デモにも、カウンターとして参加していた。その際、何度も機動隊の制止を振り切り、デモ隊に怒りの声をぶつけていた。今日の行進を終えた悪霊氏に話をうかがった。

 「(8月の差別デモで)歩道で東南アジア系の子どもが信号待ちをしていた。在特会らがその子に『ゴキブリ』だのなんだの言っていた。それ見てさすがに『フザケんな』って…久々に頭が真っ白になるまでブチギレた。ああいうことを言わせちゃダメでしょう、大人は」

 第三梯団のテーマは「我々はもう既に一緒に生きている~WE’RE ALREADY LIVING TOGETHER」。セクシャル・マイノリティや在日外国人をはじめとする、マイノリティの人々などが参加。先頭には、DJとピンクの衣装を着たドラッグクイーンが乗ったトラックを配置。音楽とダンスで人々を盛り上げ、道行く人々に「ぼくらはもうすでに一緒に生きている」と書かれたプラカードなどを向け、笑顔で手を振ると、沿道からも笑顔で手を振り返す人々が多々いた。

 デモに参加した人々は「なくそう! 婚外子差別」「どの子もうちの子」 などのプラカードを掲げていた。自身もセクシャル・マイノリティである男性は「マイノリティーの人々に対する日本の対応は、徐々に変わってきてはいるけど遅れていると思う。他国では同性婚が認められてきているが、日本ではその気配がない」と話した。また「マジョリティーの人々も、マイノリティーの人々もすでに共生しています。マイノリティーの人々はすぐそばにいるよということを伝えたい」と話した。

 大学生の参加者は「若い人は興味はあると思うけど、実際にこういう場に来ないと思う。行動を起こしてもあんまり変わらないんじゃないかという気持ちがあるのでは。自分はYOUTUBEで見て感心を持った。ひどすぎるし、ショックだった。日本でこんなことがあるのは嫌だと思った。みんな忙しくてこういう活動に来るのは面倒くさいと思うけど、思ってるだけでは何も変わらないと思うので、一緒に参加をしていきましょう」と答えた。

 50代の男性は「差別は紛争や戦争に繋がると思う。だから、差別というのは絶対にやってはいけない。外国では差別に対して法制化しているが、日本もすべき。声を出さない限り差別はなくならない。おかしいと思ったら声を上げ、デモに参加するなどの意思表示が必要だと思う」と話した。

 ヘイトスピーチのデモコースとなっている職安通りでは、20代後半と思われる男性が、「仲良くしようぜ」というプラカードを沿道にいる子どもたちに向けると、子どもたちとその母親と思われる女性は笑顔になっていた。


 差別は、格差拡大を生み出し、同時に格差拡大を正当化する言い訳ともなる。RT @1691S: 【夢の終焉:貧困層が増える米国】米国人の15%が貧困層。所得差、最大限に拡大。最も裕福な1%の層の所得、全所得の19%超占める。 情報・通信ラジオ スプートニク

 さらに差別は、戦争への地ならしでもある。日本人は一等民族であるという優越意識を植え付け、同時に周辺民族を見下す差別意識の徹底こそ、皇民化教育の核心だった。「相手を人間とも思わないほど見下す意識が植え付けられないと、戦争で人殺しなどできない」。ある戦争体験者の言葉である。

 人間は差別の誘惑に弱い生き物でもある。だからこそ、差別の表現や行動は慎もうというタガを緩めてはならないのだと思う。

 タガが外れた時、上記のレポートにあるように、信号待ちしている外国人の子供を大人がよってたかって「ゴキブリ」とののしるような常軌を逸した行動が正当化され、エスカレートしてゆく。今起きつつあることは、そんな怖ろしい事態なのである。

 差別感情や差別意識の政治利用にも、私たちは警戒のまなざしを注ぐ必要がある。街頭の小さなさやあては、大文字の「政治」と密通している可能性があることを常に忘れないでおきたい。

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「「差別撤廃 東京大行進」の第一報レポート」への1件のフィードバック

  1. ウエマツ より:

    私にはどちらも同じにしか見えませんね
    日本人差別については構わないんですか?
    「差別」に対してではなく、自分たちに対する「差別」ってことですか?
    どこか違いがあるんですか?
    どちらも気持ち悪い、どちらも出て行ってください

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