2013年6月22日(土)18時30分から、大阪市北区の大阪市立住まい情報センターで、「脱グローバル論 日本の未来のつくりかた」と題したシンポジウムが行われた。平松邦夫氏が代表を務める公共政策ラボ(PPL)が、今回のシンポジウムと同名の新刊書の出版を記念して開催した。
(IWJテキストスタッフ・久保元)
2013年6月22日(土)18時30分から、大阪市北区の大阪市立住まい情報センターで、「脱グローバル論 日本の未来のつくりかた」と題したシンポジウムが行われた。平松邦夫氏が代表を務める公共政策ラボ(PPL)が、今回のシンポジウムと同名の新刊書の出版を記念して開催した。
■全編動画
・1/2(18:29~ 1時間11分)
・2/2(19:43~ 53分間)
内田氏は、政治と国民を取り巻く現在の状況を、「国民国家という従来的な政治が、溶解している」と評し、「歴史的にみて、危機的な局面に立ち至っている」と述べた。また、「危機感があるのに、危機感が共有されていないことに、危機感を覚える」とし、「どうして、みんな平気でいられるのか。足元が崩れかけているのに、普通の顔をして生活している。そのことに恐怖を感じる」と心情を吐露した。
中島氏は、かつて橋下徹氏(大阪市長)から「バカ学者と呼ばれた」と述べた上で、一昨年に行われた大阪W選挙(大阪府知事選・大阪市長選)の際、知事から市長への鞍替えを狙う橋下氏に対抗し、再選を目指す平松氏を応援したことを振り返った。中島氏は、橋下氏のビジョンについて、「グローバルな人材を育て、社会ではなく個人がリスクを取るという『自己責任社会』を目指す、新自由主義の流れの延長線にある」と評した。
一方、平松氏のビジョンについては、「日本は、ひょっとしたら、経済成長は難しいかもしれない」という前提に立ち、「経済成長しなくても、誰もがいきいきと生活できるような社会モデルを作るには、どうすればいいのか考える」という視点に立っていると評価。さらに、「官と民をうまくつなぎ、稼ぎは多くなくても柔軟に生きられる場所、自分がいないと社会が動かないのではないかと思えるような、『承認社会』の実現を目指していた」と振り返り、「橋下氏と平松氏のビジョンの違いを明確にしたかったが、世論は橋下氏の『キャラクター』に流れた」とした。
その上で、自民党がアベノミクスの成果を強調し、新自由主義への流れを加速させかねない現状について、「参議院選挙も、ビジョンの戦いになっていない。残された時間はわずかだが、『アベノミクス』や『維新』が目指しているものとは違うものを、参議院選挙では問うていかなければならない」と語った。
釈氏は「近代成長期を経て近代成熟期に入った、いまの日本の社会における政治は、下から湧き上がってくるものでなければ、だめだ」と述べた。続いて、「伝統仏教教団が10年ぐらい前に、似たような状況になった」と語り、伝統仏教教団が直面した事例を紹介した。この中で、釈氏は、伝統仏教教団を取り巻く環境が、地域コミュニティのあり方や、葬儀や墓などへの価値観が変わったことで、「大きな曲がり角に入った」とし、これに対処する方策として、「教団は一生懸命『コンテンツ』を考えた。例えば、『キッズ参加』などを考え出したが、コミュニティのありかたが地域によってまったく違うのに、パッケージを考えて(上から)下ろしても機能しなかった」と振り返った。その上で、「むしろ、曲がり角だからこそ、(教団の教義やしきたりにとらわれない)『面白いお寺』『面白いお坊さん』が宗派を超えてつながり出した。そういう意味では、伝統仏教は、今、エキサイティングな時期にきている」と語った。
また、釈氏は、これからの社会について、各自の自由は最大限尊重するが、マイノリティや弱者のために、自由は制限されるという「フェア」と、あるものを分かち合おうという「シェア」が重視されるようになる、と述べた。さらに、「まだ成長できると言う人もいるが、どう考えても、1年に10センチも背が伸びるような社会は難しい。無理に伸ばそうとして『高い靴』(シークレットシューズ)を履こうとしている」と述べ、グローバル化や金融操作によって利益を上げようとする、現代社会の錬金術に異を唱えた。
その後も、登壇者らは、大衆を操作するメディアの問題など、さまざまな観点から活発に意見を交換し、「脱グローバル」の重要性を確認した。