2020年12月11日厚生労働省から速報のプレスリリースがメールでIWJに届いた。厚生労働省がアストラゼネカ社と、新型コロナウイルスワクチンの供給に関する契約を締結したという官報である。
この報せは、果たして「福音(よき知らせ)」と呼べるものなのだろうか?
担当部局は、健康局結核感染症課・健康局健康課予防接種室である。
「新型コロナウイルスワクチンの供給に係るアストラゼネカ株式会社との契約締結について」と題する厚生労働省の速報を以下に引用する。
「昨日(※IWJ編集部注・2020年12月10日)、厚生労働省は、英国アストラゼネカ社が新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年初頭から1億 2000 万回分(6000 万人分)のワクチンの供給(そのうち約 3000 万回分については第一四半期中に供給)を受けることについて、アストラゼネカ株式会社と契約を締結しましたので、お知らせします。
厚生労働省では、引き続き、国民の皆様に対してワクチンを早期に供給することを目指し、様々な取組を進めてまいります」
▲厚生労働省 プレスリリース(2020年12月11日)
ふり返るべき情報がある。2020年9月8日、英製薬大手アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチン臨床試験中断の報が駆け巡った。
同社は激しいワクチン開発競争の中で世界のトップ企業のひとつと目されており、同社開発中のワクチン「AZD1222」は、世界中の注目を集めている。日本政府も早々に1億2000万回分のワクチン受給で同社と基本合意に達しており、9月8日に他社ワクチンもあわせて今年度予算の予備費6714億円の充当を閣議決定したばかりである。
だが、安全性も効果も確立されていないワクチンに、これほど拙速に飛びついてよいものか、疑問が生じる。アストラゼネカ社の「治験中断」は、治験ボランティアに「深刻な有害反応」が生じたからであり、それも、関係筋の話では、重篤な後遺症を残す可能性のある神経障害だというのである。
▲英アストラゼネカ社HP
その後、アストラゼネカ社は中止からわずか4日後の9月12日、治験を再開した。
本記事は、この「アストラゼネカ治験中断」にまつわる一連の動きや情報を整理しながら、安倍政権から菅政権へと引き継がれたコロナ対策を検証し、その危険性を、改めて浮き彫りにしてみたい。
英国アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチン、「原因不明の病状を呈する一症例」の発生で治験が中断! 最も有望視され注目を集めるコロナワクチン治験中断の報を受け、世界中に衝撃が走る!
9月9日、英製薬大手アストラゼネカ社が、英オックスフォード大学と共同開発している新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」について、現在進行中の臨床試験をすべて中断していたことを公表した。治験中に「原因不明の病状を呈する一症例」が発生したためであるという。
「AZD1222」は、チンパンジー由来の風邪ウイルス「アデノウイルス」を弱毒化させた「アデノウイルスベクター(ChAdOx1)」に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)スパイク蛋白質遺伝子を導入した遺伝子組み換えワクチンである。
ワクチン接種後に産出される、表面スパイク蛋白質によって免疫系が刺激され、後に新型コロナウイルスに身体が感染した場合にこれを攻撃するべき中和抗体や細胞性免疫が作られるというものだ。
アストラゼネカ社のこの「AZD1222」ワクチンは、激化する新型コロナワクチン開発競争の中で、最も有望なもののひとつとして注目を集めてきた。
治験も異例のスピードで進み、8月末には最終段階である「第三相(フェーズ3)」の大規模治験が米国でスタートしたばかり。英国、ブラジル、南アフリカでは、その先行試験として、「第二相(フェーズ2)/第三相(フェーズ3)」の治験が実施されていた。
日本でも9月4日、国内の複数の施設において、18歳以上の被験者約250人を対象とした「フェーズ1/2」臨床試験が開始されている。
▲米国会計検査院が作成した、従来のワクチン開発スケジュールと新型コロナウイルスワクチン開発スケジュールの対比図(Wikipediaより)
それだけに、「英国の第三相試験」における「原因不明の病状を呈する一症例」の発生と、「第三者委員会」による「審査プロセス」の始動および「すべての臨床試験におけるワクチン接種を自主的に中断」の報が、世界中に衝撃を与えたことは想像に難くない。
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