2020年5月19日、千代田区の農林水産省で、江藤拓・農林水産大臣による定例会見が行われた。
冒頭、間もなく審議入りする「種苗法」改正案についての質問が出る中、江藤拓・農林水産大臣は「審議入りが決まったわけではない」と述べ、その上で 種苗法について農家が自己増殖(種を取り翌年それを利用する)することができなくなるのではないかとの指摘に対し「市場に流通している品種はほぼ一般品種、登録品種はない」として「米は84%、ミカンは98%、リンゴは96%が一般品種」「一般品種に関しては何の制限もない」「種苗法が改正されても何も変わるものではない」と語った。
また、イチゴなどの特定の輸出品目が、かつて自家増殖によって、海外に流出されたことを問題視して、「登録品種でも今の法制度では海外流出を止められない」として、法改正の必要性を強調した。
江藤大臣は和牛の遺伝子保護に触れ、「不正競争防止法」「家畜伝染予防法」「家畜改良増殖法」の3法について「家畜は均一性、安定性が担保されるのが難しい」ことから「立法事実の積み上げに非常に苦労した」「特許権」の確立も難しかった点を上げ、「和牛の遺伝子は日本の強み、何としても守らなければならない」と「全会一致で通過したことは画期的だ」と自画自賛した。
農家の大部分は国内向けの生産を主流としており、また、食料自給率から考えても、農業政策の主眼は国内の供給体制の拡充こそ望まれている。
新型コロナウイルスの蔓延で、マスクの不足など国内生産の脆弱性が、他分野でも指摘されており、日本の農業市場が外資による蚕食や、輸入による海外依存を脱却するうえからも、輸出品種に特化した、性急な法改正は批判を免れない。