2012年12月24日(月・休)13時から、茨城県東海村の東海文化センターで、「第2回 脱原発サミット in 茨城」が開催された。第2回目となる今回は、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏と静岡県湖西市長の三上元氏が招かれ、それぞれの講演に続いて、東海村村長の村上達也氏との鼎談が行われた。小出氏は「原子力に騙されてきた責任」と題した講演で、福島第一原発事故の被害の広範さを改めて振り返った。また、元経営コンサルタントの三上市長は、軽妙な語りで、時に会場の笑いや拍手を誘いながら、バックエンド(最終処理)費用を含めると、原子力がいかに高価で割の合わないものであるかを解説した。
- あいさつ 村上達也氏(茨城県東海村村長、脱原発をめざす首長会議 世話人)/宮嶋光昭氏(茨城県かすみがうら市市長)
- 講演 小出裕章氏(京都大学原子炉実験所 助教)「原子力に騙されてきた責任」
- 講演 三上元氏(静岡県湖西市市長、脱原発をめざす首長会議 世話人)
- 鼎談 村上氏×三上氏×小出氏
- 質疑応答
- 日時 2012年12月24日13:00~
- 場所 東海文化センター(茨城県東海村)
- 詳細 脱原発をめざす首長会議
- 主催 茨城の環境と人を考える会議
最初に、村上氏は「自民政権の復帰によって、原子力政策の推進が強まることは避けられないが、国民の中に芽生えた脱原発の思想は衰えないだろう」と述べた。安倍首相の「安全第一を前提に再稼働を検討していく」という発言に対しては、「安全第一というのは、福島の原発事故以前から言われてきたことである。ところが、事故は実際に起こったのであり、安全第一を掲げるのであれば、当然、浜岡原発等は廃炉にしなければならない。原発を推進する人たちは、我々の命をどうするのかという観点が抜けている。脱原発の国民運動は世直し運動であり、エネルギー問題だけではなく、国家中心的な動きに対する警戒も含んでいる」と語った。
小出氏は講演の中で、「言葉では言い表すことができない悲惨な事態が、現在進行している。私も、皆さんも、国に騙されてきたことに対しての責任がある。そのことを考えていただきたい」と述べた。続けて、原子力安全委員会が、2000年に発行した原子力安全白書の中の『多くの原子力関係者は原子力は絶対に安全だ、という考えを実際には有していない』という一文を引用し、「今まで、国は原発だけは絶対安全だと言い続け、マスコミはそれを報道し続けた。それを鵜呑みにして、国民は、原発だけは安全だろうと思ってここまで来てしまった。その結果、福島の原発事故によって、広島に投下された原爆168発分以上のセシウム137がばら撒かれてしまった。事故の直接的原因は、東京電力であるが、原発は安全であるとお墨付きを与えた日本の政府にも責任がある。原発を推進してきた人たちは、犯罪者だと思う」と述べた。
また、福島第一原発事故によって、どれだけ日本の国土が汚染されたかについて説明し、「今や広範囲に渡って、人々が普通に生活する場所が、放射線管理区域以上に汚染されてしまった。汚染地域に取り残されてしまえば、健康被害を避けることはできない。金銭勘定できない被害がたくさんある」と指摘した。
三上氏は、「国自身が、脱原発に向けての明確な方向を定められないのなら、地元の人々が声を上げるのは当然である」と述べた。続けて、チェルノブイリの原発事故を例に挙げ、発電するまでのコストは安いが、バックエンドコスト、廃炉コストが非常にかかる点を説明した。三上氏は「チェルノブイリ原発事故の処理などに、これまで19兆円以上かかっている。しかし、目先の商売のこと以外は勉強をせず、原発コストが安いと未だに勘違いしている経営者も多い。彼らを説得しなければいけない」と語った。
第2部の鼎談では、今回の衆院選により、自民党が政権を執ったことについて、村上氏は、脱原発の票が分散してしまったことを問題点に挙げ、「自民党は、体質的に原発を推進していく。そのことに対峙していかなければいけない。今回の事故で、我々は原発問題に対して、相当な知識を持つ国民となった。自民党が目指す方向と我々が目指す方向は違うが、脱原発の意識が崩壊しているとは思わない」と述べた。また、経済至上主義の社会で、ドイツの緑の党のような、脱原発を掲げる党が成長する必要性にも言及した。
三上氏は「自民党の中にも脱原発派の議員はいるし、公明党と農協は脱原発を打ち出している。これらの層を応援し、原発推進の考えに引っ張られないように、呼びかけることが必要である」と語った。
小出氏は「機械というのは必ず壊れるし、それを動かしている人間は、必ず間違いを犯す存在である。地震が来なくても、津波が来なくても、場合によっては壊れてしまうという覚悟をしなければいけないことは、過去の歴史が教えてくれている」と述べ、「世界的に見ると、原子力発電を牽引してきたアメリカもヨーロッパも、1970年代の時点で、原子力に未来はないと判断して撤退している。いつまでも気づかない愚かな国が日本であったが、福島第一原発の事故によって、日本の中でも多くの人が、原子力に夢がないと気づき始めている。脱原発は必ず実現できる」と語った。