10月中旬から九州で第2弾をスタートした、山本太郎代表の「れいわが始まる」全国ツアー。10月27日には、福岡県久留米市で「山本太郎とおしゃべり会」が開催された。無料で誰でも参加できるイベントで、11月からは既に沖縄で第3弾が始まっている。山本代表は、各地で繰り返し消費税廃止や「5%への減税」を旗印にした野党結集と次期総選挙での政権交代を訴える。
30日には、山本太郎代表と無所属の馬淵澄夫・元国土交通相が立ち上げた、「消費税減税研究会」の初会合が開かれた。次期衆院選の政策として、まずは消費税を引き下げるという方向で野党が結集できるように、野党議員に呼びかけた。
以下は久留米市で行われたおしゃべり会直後の囲み取材に参加した、フリージャーナリスト・横田一氏からの質疑応答の書き起こしである。山本代表は、消費税廃止という経済政策を公約に掲げる重要性について回答した。
▲れいわ新選組・山本太郎代表(横田一氏提供)
「消費税5%」を旗印に野党結集なるか!? 政権交代を目指すには?
横田一「(今日の会合で)一番、消費税5%減税を訴えた時が盛り上がったような気がしたのですが、手ごたえはどうですか?」
山本代表「厳しい状況に多くの人が置かれていますよね。自分自身がそうではなかったとしても周りを見たらそれぐらいしないと、どうにもならないということを感じていらっしゃる方々が多いと思いますので」
横田「それ(消費税5%減税)を旗印に野党が結集して戦うのが政権交代の一番の近道だとおっしゃいましたが、その見通しはどうですか?」
山本代表「どうなのですかね、こっちにボールはないので。ボールはとっくに投げているので。逆に言えば、どういう状況なのか。もう少し選挙が近づくという雰囲気にならないと、動きにはならないのかなと思いますけれども。
それまでの間に、いろいろな党の若手とか中堅議員から『話がしたい』と聞いて何度も話をしているのですけれども、やっぱり、みんな、『政局的にもそうだし、自分たちの生活もということからも(消費税減税)5%でないと駄目だよね』という話をしています」
減税研究会にかかった「行くな圧力」!? 野党各党に生じた反応の差!
横田「10月30日には馬淵澄夫衆院議員(元国交大臣)と減税勉強会を立ち上げると。そこでだいぶ(同調する)人数が増えるのではないかと」
山本代表「いや、立憲民主党からは『行くな圧力』がかかっていると聞いています。何人かの議員が連絡をくれて、『なかなか参加しづらいのですよ』という話を聞いています」
横田「(『行くな圧力』をかける)そういう文書というか?」
山本代表「あれが怪文書でなければ————。普通は、『「参加するな」』というのは怪文書ではありえないと思うのですが。勉強するための会ですから。どういうふうに(消費税を)現実的に下げていくのかを話し合う会を私たちは立ち上げをするのですが、何か企んでいると思われているのでしょうね」
日刊ゲンダイによると、10月25日に勉強会に「行くな」とも取れる文書が、逢坂誠二・政務調査会長と蓮舫・参院幹事長の連名で、若手・中堅議員らに配布された。配布された「研究会・勉強会等の参加に関するご要請」の内容は、以下の通りである。
〈他党の政治家や会派を共にしない方々との勉強会や研究会等につきましては、政策の一貫性を維持するためにも党所属議員へのご案内等がございましたら、まずは政務調査会長、または参院幹事長まで確認をお願いしたいと存じます〉
勉強会に行く際は報告をしてほしいという旨を文書にまでしたのだから、「行くな圧力」と解釈されてもおかしくはないだろう。
過去の選挙での野党の敗因は? 消費税減税を公約に掲げずして政権交代はできない!
別の記者「『次の総選挙までに消費税を下げることを公約に掲げる』ということはあるのですか? 馬淵勉強会でもそういった目標が示されることはあるのでしょうか?」
山本代表「それをやらずして勝てると思っている人がいたら、これまでの負けの総括はできていますか? ということだと思います。あれだけ与野党の対決があって、野党側の先生方は物凄くいい仕事をされて、でも、その時の一つ一つの世論調査では『自民党はやりすぎ』ということになっていますよね。選挙になると、自民党が勝ってしまうみたいな。
いったい何が、この6年間に数々、そういう法案があって、間に4回選挙があって野党側が全部負けているわけですよね? 政権を取れていないわけです。そのことの総括が何かというと、『経済に対して期待をもたせられないというプレゼン(が原因)だ』と思います。(経済政策に関するプレゼン)内容だと思います。
そう考えた時に『消費税減税します』というぐらい分かりやすい、『物価が下がる』というような方向を提案できなければ、私は『政権交代なんて、次の次の次でいいのか』と思ってしまう」
れいわ新選組が安倍政権に立ち向かうためにできること
別の記者「菅原大臣が辞任をして、これから野党が攻勢を強めていくのですが、れいわとしてはどのように(安倍政権を)追い込むような攻勢を強めていくのでしょうか?」
山本代表「私たち、れいわ新選組の国会議員は2人しかいませんから、2人が国会でできることはそれぞれの専門性を深めるということだと思います。それがやはり全部につながる部分ではないかとも思います。私が単独でできることは何かというと、みんなの生活を底上げすることだと思います。
でも一番厳しい環境にある就労環境だったり、就学環境のところを担保するということも連動していると思いますので、消費税を下げるということも、新しい就労や就学を認めるということも、ですから、これ一本というものではないのですが、れいわ全体としては『消費税を下げて生活を楽にしてみせる』ということを旗印にやっていくということです」
別の記者「先週、閣僚の資産公開がありましたが、小泉進次郎さんの資産公開で滝川クリステルさんの資産が2億円以上でしたが、あの発表をどのように受け止められましたか?」
山本代表「いや、いいね、って(笑い)。いいよね、って。その一部は国債だったというから、ああいうブルジョワジーの方々が資産として国債を持たれているということは、(国が財政)破綻しようがないと思いますよね。(笑い)」
山本代表「防災省は必要」! 見直すべきボランティア頼みの復旧復興!
別の記者「最後ですが、台風(19号被害)に対するれいわの取り組みですが、いま九州を回っている間に関東や長野で被害が出ていますが、東京に戻られて何かアクションを起こすことは考えられているのでしょうか?」
山本代表「今のところ、我々ができるとすれば、要望するということしかできません。それを考えた時に障害者というテーマに特化した、被災した場合にどうしていくのか、ということはこれまでもやってきていることなのです。
船後議員、木村議員ともに。新たにできるとすれば、この間、佐賀に入ったのですね。佐賀は災害があってから時間が少し経っている。ということは何かというと、佐賀で見てきたことは、いま東北であったり、福島県であったり、千葉県であったり、長野県であったり、宮城県であったりというところの状況の人たちが、この後に直面する問題なのです。もう人が引いてしまった、今ボランティアの人が減ってしまったり、という状況からどう立て直していくのかということです。
だからボランティア頼みの復旧復興というのはいい加減やめないといけないということです。そういうような知見を持っていらっしゃるスーパーボランティアはいらっしゃるのです。自分で重機を動かせるような人ですが、そういう人たちを国として雇っていく。毎年災害はあることだから。
だから、『防災省は必要』と私は思っていて、そこにスーパーボランティア的な役割をしている人たちの知見というものを集中させて、それだけではなくて、自衛隊の活動に(災害)復旧復興という部分を、少なくとも今の力の半分ぐらいは注げる状態にしないといけないと思っています」
「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策の落とし穴! 求められる災害対策の見直し
横田「(石破茂氏提唱の防災省創設に賛成した)嘉田由紀子・前滋賀県知事が『「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策が堤防決壊を招いた』という指摘をしているのですが、それについてはどうでしょうか?」
山本代表「例えば、まだちゃんと動いていないダムで(水をあまり貯めていなくて)容量が大きかったので貯め込められて助かったという(八ツ場ダムの)例はありましたが、実際に稼動していたらそこまで雨を貯め込めなかったということがあったりする。ダム一本ではなかなかやりづらいと思います。遊水池だったり、いろいろなものを考えないといけないだろうなと思います。
結局、必要のないダムを作るというのは今でもあるわけですよね。例えば、長崎の石木ダムとか。(ダム建設の理由は)飲料水のための需要が満たされていないと言いながら、実際は全然違う結果が出たということがありますから、ある意味、巨大建築物に対する男の夢みたいなものを意地で作るみたいなものが、私はあるのだろうと思うのです」
横田「それ(ダム予算)を堤防強化に回していれば、(台風19号の)被害は少なかったかも知れないと?」
山本代表「そうですね。本当に、どういった災害対策が考えられるのかを見直さないといけない時期に入っている。それはハード面もそうだし、ソフト面もそうだし」
ここで囲み取材はタイムアウトとなったが、「消費税5%減税」に加えて、もう一つの緊急政策作成も急がれることが浮き彫りになった。それは、「防災減災対策(災害対策)の緊急見直しとスペシャリスト集団としての『防災省』創設」だ。去年の西日本豪雨災害や今年の台風19号など記録的豪雨が当たり前の気候変動時代に突入した今、歴代自民党政権が続けてきた「ダム最優先・堤防強化二の次」の治水政策では国民の生命や財産を守れないことは、堤防決壊が各地で相次いだ台風19号被害を直視すれば、一目瞭然なのだ。
しかし安倍政権は堤防決壊で大きな被害を出した西日本豪雨災害の教訓を活かさず、危険性の高い堤防強化を早急に進めず、台風19号で100ヶ所以上の堤防が決壊して大きな被害が出てしまった。「人災が再び繰り返された」ともいえるが、厚顔無恥の安倍政権(首相)は自らの職務怠慢を反省しないどころか、「八ツ場ダムは役に立った」というフェイク情報を発信、中止を宣言した後に撤回した旧民主党政権叩きに走った。
これに対して山本氏は、地権者が強硬に反対する「石木ダム」(長崎県諫早市)の実例をあげながら「ダム最優先」の治水政策を批判すると同時に、ソフト面でもスーパーボランティアらスペシャリスト集団の知見を活かす防災省創設を提案したのだ(注)。
ダム建設の事業主体で利権にまみれやすい国交省に治水政策を委ねるのではなく、「国民の生命や財産を守る」ことに特化した防災省が出来れば、ハード面とソフト面の見直しによって費用対効果の高い災害対策を進められるというわけだ。
ちなみに「八ッ場ダム見直し」などを訴えて政権交代を果たした民主党政権にとって、「ダム見直し(ダムだけに頼らない治水政策作り)」は目玉政策の一つだった。途中で八ッ場ダム建設再開など方針変更をしてしまい、歴代自民党政策の「ダム最優先・堤防強化二の次」の治水政策を変更させることに失敗した。しかし気候変動時代に入って記録的豪雨が相次ぐようになった今なお古き治水政策を続ける安倍政権に対して、山本氏や石破氏や嘉田氏らが提唱する「防災省創設」をもう一つの旗印にして、「住民目線で災害対策を見直すには政権交代が不可欠」と訴えるというわけだ。
経済政策でも災害対策でも安倍政治の問題点をすぐに指摘、野党結集の旗印になりうる代替案(目玉政策)も提案する山本氏は、落選議員とは思えないほどの発信力や影響力を示しながら、野党結集による安倍政権打倒(政権交代)の気運を確実に高める役割をしている。安倍一強多弱で無風状態に近い状態が長年続いて来た永田町に、再び嵐が吹き荒れる予感を抱かせる”台風の目”のような存在となった山本氏から目が離せない。
●注 嘉田由紀子・前滋賀県知事(参院議員)も去年の西日本豪雨でダム緊急放流による被害が出たことを受けて、石破茂・元地方創生大臣が総裁選出馬で提案した「防災省創設」を評価、賛同していた。「首相直系の防災省があれば、記録的豪雨の予報が出たのを受けて、ダム管理者に事前放流を指示できただろう」という具体的なメリットを語っていた。