女性装のIWJテキスト班の小野坂 元(はじめ)記者が東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授にインタビューするという趣旨で準備していたところ、18日の収録直前にブローレンヂ(blurorange)代表の松村智世さんを交えて行うこととなった。松村さんは男性の体系でも可愛く着ることができる、目の錯覚を利用したワンピースなどを開発されてきた方である。その成果は6月3日に東京大学の安田講堂で開催された「ファッションポジウム」で披露されている。
日本社会がいかに狂った方向へ突き進んでいるのか、これまでIWJで再三指摘してきたし、「岩上安身によるインタビュー」では詳細なパワーポイントを用意して危機感をお伝えしてきた。今回は、そうした危機を乗り越えるための手がかりをつかもうと、小野坂記者が、安冨教授と松村さんにインタビューした。
- 日時 2018年12月18日(火)14:00~
- 場所 比企の丘キッズガルテン(埼玉県比企郡滑川町)
馬の蹄を掃除する「裏掘り」を体験した小野坂記者!安冨教授「かなり不思議でしょ。会ったことのないヤツにこれをさせる」
言い間違いや少しずれた発言もしてしまった小野坂記者だが、必死でお伝えしようとしたのは、乗馬と女性装の体験をもとに日本社会から狂気を取り除くことができるかもしれない、そのためのヒントとは何かということだった。
▲東京大学東洋文化研究所・安冨歩教授(2018年12月18日 IWJ撮影)
インタビュー前半は比企の丘キッズガルテン(埼玉県比企郡滑川町)にて、安冨教授より、馬がどのようにコミュニケーションをとっているのか、人間は馬のコミュニケーションの何を学びとるべきか、ということについて解説いただいた。そのことは馬の蹄を掃除する「裏掘り」を体験することで、感じることができる。
「裏掘り」をするためには、馬の脚に身を寄せて、その脚を持ち上げる必要がある。初めて馬に触れた小野坂記者であっても、馬は脚を上げてくれる。安冨教授は、「かなり不思議でしょ。会ったことのないヤツにこれ(足の裏の掃除)をさせる。人間にしてみたら知らないヤツに靴を脱がされて掻いてもらっているようなもの」とたとえている。
なぜ見ず知らずの初心者でも「裏掘り」ができてしまうのだろうか。その理由について安冨教授は、馬は「『誰か』ということを認識しているのでなく、『行為そのもの』に対応するから」だと述べている。
キッズガルテンのスタッフの王さんからは、大人よりも子どものほうが、乗馬の上達が早いことについてうかがった。馬の上下動に怖がってしまうとうまく乗れないが、大人のほうがそうした恐怖心を克服するのに時間がかかるとのこと。現状の日本社会では子どもから大人になるにつれて、「行為そのもの」に反応する感覚を失ってしまうのだろうか。こうしたところにも日本社会が抱えている問題を解決する糸口があると思われる。
後半ではキッズガルテン近くのヒルトップファームというレストランに場所を移し、松村さんを交えて鼎談を行った。導入として安冨教授の著書『ジャパン・イズ・バック』(明石書店、2014年)と『満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦』(角川書店、2015年)を取り上げた。
両書を同時に読んだときに浮かび上がる、「大日本帝国の戦時経済」と「安倍政権の異次元金融緩和」との類似性に驚愕したという小野坂記者は、その思いを、安冨教授に伝えた。そして、安冨教授による解説とともに、松村さんの率直な指摘から鼎談を広げていった。
外部から与えられた「唯一の選択肢」を乗り越える「はくだけでスタイルアップする『魔法のパニート』」が日本社会の「暴走」を止める!!
▲「はくだけでスタイルアップする『魔法のパニート』」の特長を解説するブローレンヂ(blurorange)代表の松村智世さん(2018年12月18日 IWJ撮影)
同じ過ちを繰り返すためにがむしゃらに突っ走っているような安倍政権と、それを止められない日本社会の現状を議論した後は、そうした「暴走」を止める方法について考えていった。そこで、松村さんから、画期的な発明である「はくだけでスタイルアップする『魔法のパニート』」誕生の背景について語っていただいた。
既存の洋服をブローレンヂのように着ることができるこの発明は、「男女の垣根」という思い込みを打破するきっかけになるだけではない。そうした揺さぶりどころか、「魔法のパニート」は、男物と女物とはっきり分かれているという思い込みを前提に作られた既製服の形を、「自然さ」を備えつつ実際に変えているのである。このような、外部から与えられた「唯一の選択肢」なるものを乗り越える点に、「魔法のパニート」発明の重要性があると言ってよい。
なお、会場のヒルトップファームは、定休日のところ、ご店主の石川正明さんのご好意で使用させていただいた。この場をお借りして感謝申し上げる。